成績概要書 (2006年1月作成)
研究課題:自動牛体ブラシの有用性 担当部署:根釧農試 研究部 乳牛飼養科、酪農施設科 |
1.目的
牛との接触による傾斜を検出して自動で回転する自動牛体ブラシのフリーストール牛群内での利用割合、利用時間等を調査し、牛体ブラシが乳牛行動、生産性に及ぼす影響について検討を行った。
2.方法
1)供試機の概要
本試験で用いた自動牛体ブラシは、回転軸付きモータと円筒型ブラシから成り、幅900mm、高さ950mm、重量45kgである。ブラシはナイロン製(長さ200mm)で、牛がブラシに接触して4
度以上傾くと8秒間回転する。
2)供試機械の設
2005年5月18日に根釧農試の施設行動実験舎(19〜26頭)の飼槽側通路上部から付属のチェーンにより3点で吊り下げてブラシの中心から床面までの距離を150cmにして設置した
(写真1)。
3)試験方法
牛のブラシの利用性の評価は設置後3日目および1,2,3,4,5週目の24時間の乳牛の利用状況をビデオカメラで撮影し、解析した。
牛体の汚れの評価のために、設置前と設置後7,15,26,36,197日目に背部をデジタルカメラで撮影するとともに、牛の腰角の上部に約15cmに切断した布テープ(幅100mm、積水化学工
業(株)No.600)を張り付け、その付着物(毛やほこり・糞など)の重量を測定した。また、設置前後の乳量と乳成分、乾物摂取量を測定した。
3.成果の概要
1)特別な馴致をしなくとも、ブラシ設置後から数頭の牛が利用し始め、ブラシ設置後1週間程度でほぼ全ての牛が利用した(図1)。
2)1日1頭あたりのブラシの利用時間は20〜30分であることから、搾乳時間などを除く利用可能な時間を1日20時間とするとブラシ1台あたりの利用頭数は40〜60頭程度であると推測で
きる(表2)。
3)1回あたりの利用時間は3分以下が最も多く、60%〜80%の牛は5分以内の利用であるが、10分以上の出現も10%前後見られた(表3)。
4)ブラシを最も多くの牛が利用する時間帯は18〜20時であり、採食のピークの後であった。これはブラシを飼槽側の通路に設置したためであると考えられた。
夜間から朝の給飼前の21〜10時は少なかったが、少なくとも1日を通じて利用されない時間帯はなかった(図2)。
5)牛の利用部位は尻(38%)が最も高く、続いて頭(30%)の利用が多かった(図3)。
6)ブラシを利用している牛では背中の体毛やほこりなどが落ちる様子が観察され、布テープを付着させたときの付着物重量も設置前に比べて設置後約1ヶ月で3分の1に低下し、その後
も持続した(図4)。
7)設置前後の乾物摂取量および脂肪補正乳量は変化しなかった(図5)。
以上のことから、フリーストール牛舎用の自動牛体ブラシにより、牛体の汚れの除去ができ、有用であると判断された。
表1.供試機の概要
写真1.自動牛体ブラシ
図1.設置後の利用頭数および利用割合
表2.1日1頭あたりの利用時間と利用回数
表3.1回の利用時間別の頭数分布
図2.1日の時間別利用時間の推移
図3.牛の利用部位別割合(設置後1〜5週)
図4.布テープ付着物重量の推移
図5.乾物摂取量と脂肪補正乳量の推移
4.成果の活用面と留意点
1)牛舎内の天井や梁などを使って3点で吊して設置するため、牛の頭部だけでなく、背や尻のブラッシングも可能である。
2)発情発見のためにテイルペイントを利用している場合には、ブラシによる剥離が発生する。
5.残された問題とその対応
なし