成績概要書(2006年1月作成)
研究課題:カキ殻粉砕物の石灰質資材としての特性(カキ殻の野菜畑に対する施用効果) 担当部署:道南農試 研究部 園芸環境科 |
1.目的
カキ殻粉砕物の粒径の違いによるpH矯正の効果をほ場レベルで検討し、市販の炭カル資材と同等の効果を発現する粉砕粒径を明らかにする。
2.方法
1)粒径の異なるカキ殻粉砕物の施用試験(ほ場)
(1)供試土壌 道南農試(露地)…褐色低地土、A町現地農家(ハウス)…泥炭土
(2)供試作物 道南農試 だいこん(喜太一) 現地農家 ほうれんそう(SC0-408、SC7-405等)
(3)処理 現地農家、道南農試ともに、無施用区、対照区(防散炭カル使用、アルカリ分50%)、
<0.5区(カキ殻粉砕物の粒径0.5mm未満)、0.5-1区(同0.5mm以上1mm未満)
1-2区(同1mm以上2mm未満)、2-5区(同2mm以上5mm未満)
道南農試では目標pHを6.5とし、防散炭カルおよびカキ殻(アルカリ分55%)を380kg/10a施用
現地農家では目標pHを7.0とし、防散炭カルおよびカキ殻(アルカリ分52%)を820kg/10a施用
それぞれ深さ20cmまで混和
(4)施肥 道南農試 N-P2O5-K2O でそれぞれ6-8-8kg/10a
現地農家 N-P2O5-K2O で8-8-8(1作),5-5-5(2作),3-4-3kg/10a(3作)および無肥料(4作)
(5)調査項目 土壌pHの推移、収量等
2)粒径の異なるカキ殻粉砕物の施用試験(枠)
(1)供試土壌 道南農試(露地)…褐色低地土
(2)処理 直径38.3cm、面積0.115m2の無底枠を設置し以下の処理区をそれぞれ3反復設けた。
無施用区、対照区(防散炭カル使用、CaO 50%)、0.5-1区、1-2区
目標pHを6.5とし、防散炭カルおよびカキ殻(アルカリ分52%)を400kg/10a施用し深さ20cmまで混和
(3)施肥および供試作物 枠内の雑草繁茂を抑制するために、無施肥でライ麦、ヘアリーベッチの順に播種した。
(4)調査項目 土壌pHの推移
3.成果の概要
1)カキ殻の含有成分を表1に示した。
2)道南農試および現地農家のほ場レベルでカキ殻粉砕物を施用した結果、0.5-1区が対照区と同様のpH矯正効果を示した(図1、2)。
1-2区および2-5区の土壌pHは対照区に比べて低く推移した。だいこんおよびほうれんそうの収量は対照区と処理間差が認められなかった(表2)。
3)枠試験でも0.5-1区では対照区と同様のpHの推移を示すことが確認できた。1-2区では対照区より土壌pHが低く推移した(図3)。
4)カキ殻はホウ素を比較的多く含む(25mg/kg)が、その施用による土壌への負荷量は、市販のホウ素入り化成肥料(例えばN-P2O5-K2O-Bで12-16-12-0.2%を100kg/10a使用した時)
によるホウ素施肥量より少ないと考えられた。カキ殻のカドミウム含有量(0.15〜0.29mg/kg)は防散炭カル(0.28mg/kg)と同等であった。
以上より、カキ殻粉砕物は、1mm目のふるいを通すことにより、市販の炭カル資材と同様の施用量と方法で使用できると判断された。
表1 カキ殻の含有成分
図1 道南農試における土壌pHの推移(平成16年度)
図2 現地農家における土壌pHの推移(平成17年度)
表2 だいこんおよびほうれんそうの総収量(t/10a)
図3 枠試験による土壌pHの推移
4.成果の活用面と留意点
1)半年程度野積みしたカキ殻を使用し、粉砕前には乾燥処理を行う。
5.残された問題点と今後の対応