成績概要書(2006年1月作成)
課題分類
研究課題:道産野菜の硝酸塩含量の実態と変動要因
       (道産野菜における硝酸塩の実態と低減指針の策定)

担当部署:花野技セ 園芸環境科 中央農試 土壌生態科 
協力分担:各地区農業改良普及センター
予算区分:道費(クリーン農業)
研究期間:2004〜2005年度(平成16〜17年度) 

 

1.目 的
 道産野菜の品質向上に資するため、ほうれんそう、こまつな、みずな、だいこんの硝酸塩含量の実態と変動要因について検討する。

2.方 法
 供試材料:「北のクリーン農産物表示制度」に基づき栽培された野菜
        ほうれんそう、こまつな、みずな(以上、施設栽培)、だいこん(露地栽培)
 対象産地:ほうれんそう4産地(A、D、E)、こまつな2産地、(B、C)、
        みずな1産地(B)、だいこん3産地(F、G、H)
 栽培履歴:農協出荷時の生産履歴または普及センターによる聞き取り
 分析項目:作物体の硝酸塩含量・アスコルビン酸含量・乾物率・葉色
        作付け前および跡地土壌の硝酸態窒素含量・熱水抽出性窒素含量

3.成果の概要
 1) ほうれんそうの硝酸塩含量の全平均は290mg/100gであり、生育期が高温である8月>9月>7月>6月収穫の順に高く、また産地間差も認められた(表1)。
   硝酸塩含量の低いほうれんそうほど、乾物率およびアスコルビン酸が高くなる傾向が見られた。
 2) こまつなの硝酸塩含量の全平均は586mg/100gで収穫時期による変動幅は小さく、みずなは719mg/100gで9月収穫以降に高い傾向を示した(表1)。
   こまつな・みずなの乾物率は収穫時の株重に関係なく約4〜6%に集中し、硝酸塩含量との関係は明らかではなかった。
 3) だいこんの硝酸塩含量の全平均は126mg/100gで産地・作型間差は明らかでなかった(表1)。
 4) こまつな・みずなの収穫跡地の土壌硝酸態窒素含量(土壌NO3-N)が5mg/100g以下の場合、一部に硝酸塩含量の低い試料も見られたが、必ずしも全てが低くはなかった(図1)。
   また、同含量が5mg/100g以上では、大部分のこまつな・みずなの硝酸塩含量が500mg/100g以上であった。ほうれんそうの硝酸塩含量と跡地の土壌NO3-Nとの関係は判然としなか
   った。
 5) 周年被覆ハウス栽培のみずなは、冬季被覆資材を除去したハウスに比べて、調査対象とした2〜3作期目以降の収穫においても、硝酸塩含量および跡地の土壌NO3-Nが高い傾向を
   示した(表2)。
 6) ほうれんそう産地Dにおいて、硝酸塩含量に及ぼす土壌窒素肥沃度の影響をみると、1作目の6月収穫では硝酸塩含量が極端に低いサンプルを除けば熱水抽出性窒素含量(熱抽
   N)の、また2作目以降の7月および9月収穫では作付前の土壌NO3-Nと熱抽Nの影響が認められた(図2)。さらに、個別のハウスにおいても、作付け前の土壌NO3-Nおよび熱抽Nが
   高くなると、硝酸塩含量が高まる傾向がみられた(図3)。
 7) 以上のことから、道産野菜の硝酸塩含量低減化には、施肥対応等を含めた、土壌窒素肥沃度に留意した管理が重要であることが明らかになった。

  

   


図1 跡地土壌NO3-Nと硝酸塩含量の関係

   

   

       
図2 作付前土壌NO3-Nおよび熱抽Nとほうれんそう硝酸塩含量の関係(産地D)

  


図3 熱抽Nレベルの異なるハウスにおける作付前窒素供給量とほうれんそう硝酸塩含量の関係(産地D)

   

4.成果の活用面と留意点
 ・土壌窒素肥沃度、施肥管理、前作を考慮した野菜の硝酸塩含量低減化への活用

5.残された問題点とその対応
 ・こまつな・みずなの土壌窒素肥沃度に基づく施肥対応の設定
 ・土壌窒素肥沃度の高いハウスにおける硝酸塩低減化技術の開発