成績概要書(2006年1月作成)
課題分類: 担当部署:中央農試 生産システム部 水田農業科、経営科 農業環境部 環境基盤科 |
1.目的
米作り農業体験学習の効果と実践上の問題点を明らかにする。特に体験内容や実施方法を検討し、より高い満足感を得られる内容・方法を検討する。結果をもとに、小学5年生を対象とした農家向けの米作り農業体験学習受入マニュアルを作成する。
2.方法
①アンケート調査(小学5年生・中学2年生・保護者)による農業体験学習の効果の把握、②農家調査による受入方法と問題点の把握、③小学校(教員)への配票調査による実施目的、実施状況及び評価の把握
3.成果の概要
1)小学校を対象とした調査では、農家における農業体験学習は、農業の他の学習方法に比べて、「社会的項目」をはじめより高い評価を受けている(図1)。あわせて農業体験学習は
小学生自身や保護者の評価も高い。また、体験回数が多いほど農業への関心は増加する(表1)。このため、農業体験学習を繰り返しおこなうことは、農業への関心を高める効果が
ある。
2)農業体験学習を進める際に農家が指摘する問題は、①効果が感じにくい、②受入意思が小学校まで届かない、③実施方法がよくわからない等である。小学校側の指摘する問題は、
①日程調整が難しい、②受入農家を見つけにくい等である。このため、農業体験学習の受入拡大に向けて、農家側は、組織的な受入れ体制をとることにより受け手不足の問題解消を
進めるとともに、行政等の支援を得て小学校に受入に関する情報発信をすることが必要となる。また、保護者の費用負担意思は多くが1人千円までにとどまる。このため、農家は、農
業体験学習受入を、現時点では経済行為としてではなく、将来に向けた農業・農村の理解者拡大の機会として意識する必要がある。
3)受入に際しては、①小学生10人に対し指導者1人以上の確保、②時期遅れの6月の田植えにも対応できる体制作り(運動会との競合のため)、③予備日設定や安全対策に関する協
議・確認、④相互の役割分担の明確化が重要である。
4)小学生が体験学習を楽しいと感じるのは、1位が稲刈り、2位が田植えである。さらに農家側の米の提供と小学校での試食会の開催により、小学生の農や食への関心の高まりと農業
体験学習の効果向上が可能となる。また、小学生の水生生物に対する関心は高く、水田で生物と接する体験をすることにより、水田が生産以外の価値を持つことを意識づけることが
できる。
5)田植え体験で小学生は1人150株(6㎡)を境に痛みや満足感に変化が生じるため、田植え体験に必要な面積を決める指標となる(表2)。田植えは1人2列を受け持つとスムーズな作業
が行える。農業体験学習の時間は2時間が限度となる。田植えでは1人当たり田植え株数で、稲刈り体験は稲束を作るかどうか等で作業時間が異なるため、体験内容や時間配分を
事前に十分検討する必要がある(表3)。
6)以上をふまえ、農家向けの米作り農業体験学習受入マニュアルを作成した(図2)。
図1 札幌市の小学校による農業体験学習への評価
表2 田植え量に対する児童の腰痛割合
図2 米作り農業体験学習受入マニュアルのフロー図
4.成果の活用面と留意点
1)小学校高学年の農業体験学習の受け入れに際して活用する。
2)親子体験学習など消費者交流活動を実施する際の参考とする。
5.残された問題とその対応
1)その他作物については、各作物の特性に合わせた対応が別途必要である。