成績概要書(2006年1月作成)

課題分類
研究課題:道産・輸入野菜の品質比較(国産・輸入野菜品質分析調査)

担当部署:花野技セ 園芸環境科 道南農試 園芸環境科 北見農試 畑作園芸科 中央農試 農産品質科
予算区分:道費(事業)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)

 

1.目 的
   道産品(ブロッコリー、ねぎ、たまねぎ)と輸入品・府県産の品質・鮮度などについて調査を行い、道産品の優位性および問題点について検討した。

2.方 法
  供試材料:東京都中央卸売市場 大田市 場で入手した試料を、エアー便・クール便(ブロッコリー)、クール便(ねぎ、たまねぎ)にて担当農試へ送付、1産地につき3箱
  対象産地:道内、輸入(米国、中国、豪州、ニュージーランド)、府県
  調査時期:2002〜2005年にかけて、各品目の主要な出荷期を中心に年に3〜6回
  調査項目:乾物率、糖、無機成分、アミノ酸、DPPH抗酸化活性、外観品質 ・・・・・・・・共通
         クロロフィル(ブロッコリー)、ポリフェノール(ねぎ)、Brix(たまねぎ)、アスコルビン酸(ブロッコリー、ねぎ)、ピルビン酸生成量(ねぎ、たまねぎ)
         物性測定(ブロッコリー)と食味官能評価(ブロッコリー、たまねぎ)

3.成果の概要
 (1) 輸入品ブロッコリーは葉柄や切り口の黒変色などの外観品質が劣り、道産品は各時期とも外 観・鮮度的にも良好であり、価格は輸入品より約2倍高く、府県産より高めであった。
 (2) 輸入品の花蕾のNa含量は道産に比べて平均で約5倍ほど高く、花蕾のNa含量の測定は産  地判別法の有効な手法と思われた(表1)。
 (3) 五訂食品成分表のブロッコリーのアスコルビン酸は120mg/100gであるが、国産・輸入を含 めて6〜10月の平均値は80mg/100gを下回っており(図1)、7〜9月における小売りでの道
  産品の目標基準値は80mg/100g以上と考えられた。アスコルビン酸は乾物率とに正の相関関係があった。
 (4) 生および茹でのブロッコリー花茎の道産品の最大荷重は輸入品に比べて低く、柔らかい傾向 にあった(表2)。そのため、道産品は短時間の調理で済むことを意味し、加熱による栄
  養成分の損失が少ないと考えられた。
 (5) ねぎの調製方法は産地ごとに異なった。道産品は葉数が3枚程度であるのに対し、道外産は4枚以上のものもあった。中国産は道産とほぼ同じ調製であった。
 (6) 輸送中の劣化と思われるねぎ葉身部の黄変は、9・10月に多く発生した(図2)。要因には乾物率や糖の低下等が考えられるが、内部成分との関連は判然としなかった。
  内部成分では産地間差よりも季節変動が大きく、分析値により品質の優劣を判断するのは困難であった。
 (7) 8月に出荷される道産たまねぎは、この時期から入れ替わる府県産と比較すると外皮色は薄  いが、辛みは府県産並に少なく、抗酸化活性値などの機能性を含めた内部品質では
  輸入・府県産より優れていた(表3)。
 (8) 道産たまねぎの主力である中・晩生品種の出荷盛期にあたる10月〜12月では、輸入・府県 産と比べ障害球の混入が少なく、市場性は高かった。辛みの指標であるピルビン酸生成
  量は、同じ時期のサンプルであれば道産品が他産地に比べて高い傾向はなかった(表3)。
 (9) 3月出荷は長期貯蔵品となるが、市場では道産品がほとんどを占有するため価格は高かった。  3月出荷品も含め、10月以降に出荷される道産たまねぎの中・晩生品種は肉質が硬く
  辛味は強いが、乾物率・Brix値が高く、ピルビン酸生成量及び抗酸化活性も高く、機能性に優れていることがわかった(表3)。
 (10) 以上のように、道産品について外観品質が優れていることもあり、価格は輸入品より高か った。しかし、今回の調査では、内部成分の道産産地間差も見られたことから、輸入品に
  対する優位性を明らかにすることはできなかった。今後、道産野菜の高位品質安定化に向けた取り組みの必要性が示唆された。

   

    


 図1 ブロッコリーのアスコルビン酸含量と乾物率の関係

    


 図2 ねぎの劣化個体割合

  

表3.各産地におけるたまねぎ月別入荷品の特性
 

 

4.成果の活用面と留意点
 
・本調査は東京都中央卸売市場 大田市 場で入手した野菜を用いて実施した。
 ・道産野菜の高品質安定化に向けた取り組みに活用する。

5.残された問題点とその対応
 
・流通過程での品質変化の調査