「大豆用茎葉処理除草剤ベンタゾンの薬害に及ぼす播種時殺虫剤、気象および栽培条件の影響」(指導参考)
                      北海道農研・北海道畑輪作研究チーム
執筆担当者:中野 寛        
 
1 試験目的
  ベンタゾンは、広葉雑草を対象にする生育期茎葉処理除草剤として大豆において は唯一の剤である。しかし、大豆に薬害を与え減収させることもあるので、薬害を 抑制するために、気象、栽培条件や播種時に施用される殺虫剤がベンタゾン薬害に 及ぼす影響を明らかにする。
 
2 試験方法
 (1) 品種・試験地:ユキホマレ、北農研芽室畑地圃場および美唄水田転換畑圃場
 (2) 薬剤施用量:ベンタゾンは通常0.15ml/m2、チアメトキサムとECP・チウラムは  種子重の0.6%および0.4%、ダイアジノン(成分5%含有)とエチルチオメトンは  4g/m2、ポット試験ではエチルチオメトンは0.5g/ポット(ただし表2のみ0.25g/  ポット)
 (3) 薬害の評価:薬斑発生面積を目視により達観調査
 (4) ベンタゾン散布条件:薬害発生を促すため高温・強日射条件日を選んで実施
 (5) ポット試験:淡色黒ボク土壌を用い加温ガラス温室で実施
 (6) 個別の処理:
  1 過湿土壌;ベンタゾン散布5日前から土壌表面まで湛水
  2 低温;同散布14日前から気温を15℃(日中最高)〜10℃(夜間最低)
  3 低土壌水分;同散布8日前から灌水を制限し含水率を20%前後まで低下
  4 断根;初生葉展開時に主根を切断し約4cm長にした
  5 肥料障害および無肥;3倍量の基肥を播種条に施用および肥料無施用
 
3 試験成績
 
 
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
4 試験結果および考察
 (1) ベンタゾン散布による薬害の程度は試験条件によって異なっていたが、いずれ  の場合もアブラムシ殺虫剤として有機リン系殺虫剤のエチルチオメトンを使用し  た場合はベンタゾン薬害を助長する傾向が見られ、非有機リン剤のチアメトキサ  ムを使用した場合は殺虫剤無処理区と同等に薬害程度が小さかった(表1)。ま  た、有機リン系殺虫剤であっても、タネバエ対策のために播種時に使用されるダ  イアジノンやECPはベンタゾン薬害を助長することは無かった。
 (2) エチルチオメトンによるベンタゾン薬害助長傾向は、供試した北海道で栽培さ  れているいずれの大豆品種でも認められた。(図1)。
 (3) エチルチオメトン処理区はベンタゾンの散布薬量の増加に従い葉身薬害が高ま  ったが、チアメトキサム処理区はいずれの薬量とも無処理区と同等に葉身に生じ  る薬害は小さかった(表2)。
 (4) 散布時の高温・強日射条件よってベンタゾンの薬害が激しくなった(図2)。  そこで、薬害発生が作物の水分生理条件によって影響されるのでないかと考え、  作物の吸水機能を抑制する低土壌水分(表3)、断根(表4)や根系の発育を阻害  する肥料濃度障害処理(表4)を行ったところ、これらによっても薬害が高まっ  た。
 (5) さらに、従来の経験事例から想像されていたように、低温(表3)、過湿土壌  (表3)、無肥料による生育不良(表4)等の条件によっても薬害は大きくなる  ことが確認された。しかし、これらの条件が薬害に影響する機作については現時  点では不明である。
 
5 普及指導上の注意事項
 (1) 得られた情報は、ベンタゾンの利用の可否の判断や、使用する際に薬害を抑制  しつつ大豆栽培を行うための参考となる。
 (2) ベンタゾンによる除草と機械除草を組み合わせた総合的除草技術の確立が今後  必要である。