新品種候補 (作成 平成19年1月)
注:1)*1試験箇所数は、農業試験場はのべ12ヶ所、現地試験はのべ16ヶ所。
2)*2中以上いも重および中以上いも重率の成績
3)*3各試験地の結果による。
4)*4北海道農業研究センターの結果による。
5)*5北見農試と北海道農業研究センターの結果による。
6)*6加工適性研究会の結果による。
7)*7特性検定試験等の成績による。
8)括弧内は種苗特性分類調査の階級による。
2.ばれいしょ「HP01」の特記すべき特徴
ばれいしょ「HP01」は、早生の生食用系統である。枯凋期はほぼ「男爵薯」並で、規格内いも重は「男爵薯」より多い。でん粉価は「男爵薯」より低い。塊茎の形は球形で、「男爵薯」より目
が浅い。肉色は白である。剥皮褐変は「男爵薯」より少ない。水煮後の肉質は「男爵薯」よりやや粘質である。「男爵薯」より煮崩れ、調理後黒変は少ない。良食味である。
中心空洞は「男爵薯」より少ない。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。
3.優良品種に採用しようとする理由
近年、ばれいしょの作付け面積は減少傾向にある。ばれいしょは、北海道の畑輪作体系の基幹となる重要な作物であるが、このまま作付け面積の減少が続くと、畑輪作体系の崩壊を
招きかねない。
ばれいしょの用途別では、生食用の減少がもっとも大きく、減少率はここ5年間で約20%である。生食用の品種のなかでは、「男爵薯」の減少面積が大部分を占める。特に、主産地以外
の栽培地域での、減少率が高い。この理由として、これらの地域では、生産力やブランド力が比較的低いので、近年の生食用の価格低迷の影響を反映しやすいためと考えられる。
また、ここ数年のジャガイモシストセンチュウ発生地帯の急速な拡大が、「男爵薯」など感受性品種の作付け面積の減少を、一層加速化させることも懸念される。そのため、生食用ばれ
いしょの作付け面積を回復させるには、「男爵薯」の減少に歯止めをかけることに加えて、品質・経済性・汎用性の優れた、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種が必要である。
現在、良食味の「キタアカリ」や、早出しに向く「とうや」等の特徴のあるジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種が育成され、一定の作付け面積を占めている。しかし、これらは貯蔵性に難
があり、肉色も黄色であることから業務用途における使用も限られ、作付け面積は限定されている。そのため、生食用面積の減少に歯止めをかけるには至っていない。
「HP01」は、「男爵薯」並の早生で、収量は「男爵薯」より20%程度多い。塊茎も「男爵薯」と同様球形で白肉であり、貯蔵性も「男爵薯」並に優れる。さらに、食感が優れ良食味であり調理
品質が「男爵薯」より優れる。加工用途のひとつであるサラダ加工適性は「さやか」並と優れる。加えて、「HP01」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性があり、線虫密度を低下させるという
重要な役割をも果たすことができる。
以上のような優れた特徴を持つ「HP01」は、生食用ばれいしょ作付け面積回復につながる十分な実力を持つと考える。このことから、「HP01」を北海道の優良品種とすることで、生食用
ばれいしょ栽培の振興につながり、北海道の畑作農業の発展に寄与することができる。
4.普及見込み地帯
北海道の生食用ばれいしょ栽培地帯
普及見込み地帯における「HP01」の「男爵薯」に対する収量比(%)
(農試およびホクレン農総研は規格内いも重、その他は中以上いも重による対比)
5.栽培上の注意
1)疫病や軟腐病等により塊茎の腐敗が発生することがあるので、防除を十分行うとともに、湿潤な土壌での栽培は避け、収穫時に塊茎に損傷を与えないように注意し、収穫後は涼しい
場所でよく風乾する。
2)褐色心腐の発生することがあるので、多肥や疎植を避け、十分な培土を行う。
3)まれに塊茎の維管束褐変が発生するので、乾燥しやすい圃場で栽培する場合は注意する。
4)「男爵薯」より倒伏しやすいので、多肥を避ける。