新品種候補                                                           (作成 平成19年1月)

注1)形態的特性は十勝農試の直播栽培による成績。その他は移植栽培による成績であり、北見、十勝、中央、上川、北農研、てん菜協会(3カ所)の計8カ所平均で、試験年次は3カ年
    (平成16〜18年) 。但し、平成18年中央・上川農試、平成17年日甜は除く。( )内は「モノホマレ」に対する百分比。
  2)特性検定は担当農試の成績で、褐斑病抵抗性、根腐病抵抗性における「モノホマレ」の( )内は品種登録時の評価。
  3)*:「えとぴりか」の黒根病抵抗性は平成17年度の単年度成績に基づく判定。
  4)「KWS 4S65」はそう根病抵抗性を持たないので、特性検定試験に供試していない。

 

2.「KWS 4S65」の特記すべき特徴
 根重が多く、「えとぴりか」より根中糖分は低いものの、糖量で優る。また、黒根病抵抗性が、現在栽培されている品種中で最も強い“やや強”であり、「えとぴりか」より優れる。

3.優良品種に採用しようとする理由
 砂糖需要の低迷等を背景として平成17年に出された「砂糖及び甘味資源作物政策の基本方向」では、最低生産者価格の撤廃が明記されるなど、てんさい生産を取り巻く状況は厳しさを
 増している。このような中で生産者の収益を安定的に確保するために、てんさい品種には糖量の増加に加え、耐病性の向上が求められている。
 平成14年に優良品種に認定された「えとぴりか」は根中糖分、品質の優れた品種として、平成18年には15,000ha以上作付け(平成18年度作付けシェア22%)されているが、一部地域にお
 いては根重が伸び悩んでいる。
 また、てんさいの重要病害である黒根病は、排水不良畑を中心として夏期が高温多雨の年に発生しやすく、発病程度のひどい株は圃場廃棄の対象となるため、減収被害は大きい。
 防除対策としては、抵抗性品種の導入が最も効果的とされているが、「えとぴりか」を含め現在作付けされている品種の大半は抵抗性が“中”であり、生産者からは更に抵抗性の向上が
 求められている。
 「KWS 4S65」は、「えとぴりか」と比較して根重が多く、根中糖分は低いものの、糖量で優る。また、黒根病抵抗性が“やや強”で「えとぴりか」の“中”より優る。さらに、耐湿性も“中”で「え
 とぴりか」の“やや弱”より優る。
 以上のことから、「KWS 4S65」を「えとぴりか」で根重が不足する地域や黒根病の発生が懸念される地域で栽培し、北海道一円に普及することにより、てんさいの安定生産に寄与できる。

 

4.栽培適地
  
北海道一円
 

  図1.「KWS 4S65」の糖量
  (対「えとぴりか」百分比表示)
  ▲:輸入品種検定試験、品種連絡試験3カ年平均成績(平成16〜18年)

 

5.栽培上の注意
 
1)褐斑病抵抗性が“弱”なので、適切な防除に努める。
 2)そう根病抵抗性を持たないので、発病圃場での栽培は避ける。