かぼちゃ新品種「TC2A」(普及奨励事項)

  
        北海道農業研究センター・寒地地域特産研究チーム(野菜育種グループ)
                         執筆担当者 北海道農研 杉山慶太

 
 「TC2A」は短節間性を有し、摘心・整枝・誘引が不要で、果実が株もとに着果する収穫の容易な省力・軽作業化向きの良食味かぼちゃ品種である。
 
 
1 来 歴 等         
 「TC2A」は、花粉親系統「北海1号」と種子親系統「BHA」を交配して得られたF1品種である。花粉親「北海1号」は、平成7年に株式会社大学農園から導入した「まさかり」と平成6年にコーネル大学から導入した「Bush Buttercup」を平成8年に交配して、短節間形質と高乾物率等によって個体選抜を行い、自殖して得られた固定系統である。種子親「BHA」は渡辺採種場が保有する系統で、「近成芳香」と「錦芳香」との交配から得られた固定系統である。
 
2 特性概要
 (1) 形態的特性
 主枝(親蔓)は、13節前後までは節間が詰まり短節間性の草姿を示し(表1、図1)、着果期以降から徐々に伸長して普通草姿となる。側枝の発生は、「えびす」に比べて少ない。
 
 (2) 生態的特性 
 雌花と雄花の開花時期は「えびす」,「つるなしやっこ」とほぼ同じである。着果は「えびす」よりも下位節であり、節間が詰まるため株もと近くに結実する(表1)。
 
 (3) 収量性 
 果実重量は「えびす」並の1.8〜2.0kg程度で、総収量は密植栽培が可能なため、「えびす」よりも多収である。また、規格内収量も「えびす」より多い(表1)。
 
 (4) 果実特性 
 果形は果実の先端が凸となる心臓形である。果皮は濃緑で、緑色のすじ模様をもつ(図2)。また、花痕は小さく、果皮の硬さは「えびす」と同程度である。果肉は橙黄色で、肉厚である。Brixは「えびす」、「つるなしやっこ」よりも高い。乾物率は「えびす」、「つるなしやっこ」よりも高く、高粉質で、食味が優れる(表2)。
 
 (5) 省力性 
 側枝の発生が少なく、摘心、整枝・誘引作業が不要である。また、果実が株もと近くに着生するために「えびす」よりも収穫作業が容易である(表2)。
 
 (6) うどんこ病の発生程度は「えびす」と同程度ある(表2)。
 
3 試験成績
 

表1 「TC2A」の形態・生態的特性及び収量特性

表2 「TC2A」の果実特性及び作業時間

図1 「TC2A」の草姿(開花期) 図2 「TC2A」の果実

 

4 採用理由及び普及見込み地帯等
 これまでにも短節間性を備えたかぼちゃ品種が育成されてきたが、果実品質、とくに肉質が劣る(低乾物率)ために市場性に乏しく、広く普及するに至っていない。「TC2A」は生育初期の主枝(親蔓)は短節間性を示し、側枝(子蔓)の発生が少ない特性をもつ。この特性を利用し、密植により親蔓を摘心せずにそのまま伸長させた放任栽培において、収量性が「えびす」と同等以上であることから、従来の摘心・整枝・誘引の作業は不要である。さらに、果実は節間が詰まる下位節の株もと近くに着生することから、果実が見つけやすく収穫作業は容易である。
 果皮は緑色が濃く、果肉も橙黄色で濃いため見栄えが良い。また、果肉は厚く、近年市場から求められている高粉質であり、Brixが高く甘い品質を有している。このため、青果用への利用が考えられる他、規格外となる蔓傷、日焼け、変形果などは主に加工・業務用としての利用が考えられる。生産者にとっては栽培の省力・軽作業化を図ることができ、市場性の高い高品質な品種としての普及が期待される。
 普及対象地域:全道. 普及見込み面積:100ha(道東北60ha、道央20ha、道南20ha)
 
5 普及指導上の注意事項
 (1) 株もと近くの茎葉が枯れ上がった場合には果実に日焼けが生じやすいので、密植し  て無摘心・無整枝で栽培を行う。
 (2) 栽培法は平成18年指導参考事項「短節間かぼちゃの栽培法」に準じて行う。