成績概要書(2007年1月作成)

課題分類
研究課題:たまねぎ極早生品種の品質評価と栽培技術指針
      (たまねぎ極早生F1系統「北見交38号」と「同39号」の採種技術確立と栽培特性評価)

担当部署:北見農試 作物研究部 畑作園芸科 
予算区分:共同研究
研究期間:2004〜2006年度(平成16〜18年度)

 

1.目 的
 これまでに北見農試が開発した少雪土壌凍結地帯における8月上旬の早期出荷栽培技術を応用し、新たに開発された有望極早生品種・系統を供試して、それらの品質及び栽培特性を評価するとともに、育苗及び圃場での栽培管理に関する総合的な栽培技術指針を作成する。

2.方 法
 1)極早生品種の内部品質調査
   (1)内部成分の品種及び地域間差   (2)生育及び貯蔵期間中のピルビン酸生成量・ブリックスの変動   (3)道産極早生品種と府県産品種の食味試験

 2)極早生品種の栽培技術指針の作成
   (1)育苗法の改善
    ①トレイサイズの違いが生育・収量に及ぼす影響   ②育苗培土の違いが生育・収量に及ぼす影響   ③育苗期間の違いが生育・収量に及ぼす影響
   (2)栽培管理法の改善
    ①べたがけ被覆の効果確認試験  ②窒素施肥量が生育・収量に及ぼす影響  ③減農薬栽培の実証 ④根切り時期の違いが収量に及ぼす影響
    ⑤極早生品種の生育に及ぼす地域および圃場間差の影響

3.成果の概要
 1)極早生品種のピルビン酸生成量(辛みの強さを表す指標値)は、同じ北海道産の中・晩生品種と比較すると約半分であり、極早生品種は辛みが少なく良食味であるといえる。
  ピルビン酸生成量は圃場での球肥大期から収穫後の貯蔵期間中にわたり増加しており、辛みは徐々に強くなることが分かった(図1)。

 2)極早生品種の乾物率・ブリックス値は中・晩生品種に比べやや低いが、肉質が柔らかく辛みが少ないことから、府県産たまねぎとの食味試験の結果でも同等以上の評価となった。

 3)448穴の標準トレイに対して324穴の大口径トレイでは、より大苗での移植が可能となった。その結果、初期生育が旺盛となり、北見農試の低地土圃場では7%、火山性土圃場では
  17%増収した。

 4)ピートモスを主体とした軽量培土は、低温時での出芽性に優れ、従来の鉱質土主体の培土に比べて苗の生育量が優り、その影響が定植後の生育・収量にも反映された。
  年次や圃場による差は認められるものの、軽量培土の使用により約10%の増収効果が得られた(図2)。

 5)早期播種作型における極早生品種の育苗期間を検討した結果、播種は2月10日〜20日の間に行い、移植は4月20日〜30日までとするのが適当であった。無理に早植えをすること
  が必ずしも増収にはつながらないため、天候の不順等の理由で定植が遅れる場合は、その間ハウスでの大苗育成に努める。移植苗は葉数4.0枚・葉鞘径4.0㎜以上が望ましいが、
  葉数3.5枚・葉鞘径3.5㎜以上を目標とする(表1)。

 6)べたがけ被覆により倒伏期は2日早まり、低地土圃場では10%、高台に位置し気温が低く経過する火山性土圃場では15%増収した(ともに北見農試圃場)。被覆期間は移植後30日
  までを目安とし、6月以降には除去する(図3)。

 7)北見農試低地土圃場での土壌診断に基づく窒素施肥量は12㎏/10aである。極早生品種に対する窒素用量試験の結果では、前年に堆肥を施用していない条件下でも、全量基肥栽
  培での窒素施肥量は10〜12㎏/10aで充分であり、極早生品種においても標準施肥量を遵守すればよいことがわかった。

 8)極早生品種を早期播種作型により前進栽培することは効果的な耕種的防除法であり、農薬散布回数(成分回数)が10回、さらには5回以下での高品質安定生産が可能であった。
  これにより、道産極早生たまねぎが良食味であることに加え、安心・安全な道産野菜としてアピールすることが可能であり、極早生品種の付加価値をより高めることにつながる(表2)。

 9)極早生品種においては、7月下旬〜8月上旬の倒伏揃い後も一日当たり2gの球重増加が認められ、根切り時期を見極めることも増収技術の一つといえる。根切り処理は倒伏揃期か
  ら5日目を標準的な処理日とするが、根切り処理を遅らせる場合は生育状況に応じて処理日を判断する。

 10)北見農試の低地土圃場および火山性土圃場、網走管内A町の低地土圃場の3ヶ所における栽培試験の結果では、低地土圃場に比べて気温が低く経過し、干ばつの影響も受けやす
  い火山性土では極早生品種の収量が劣った。さらに、紅色根腐病の発生圃場における極早生品種の減収は著しく、極早生品種の収量性は栽培圃場に大きく影響された(表3)。

 

あああああ

 

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4.成果の活用面と留意点
 1)本成績中の試験は現地圃場も含めすべて北見地域の平野部で行っている。したがって山麓地帯や沿岸地帯、さらには道央 地帯においては、べたがけ被覆による増収効果、病害虫
  防除の効果等には地域間差が考えられる。
 2)本成績中の育苗に関する成果は、すべてみのる式のセル成型育苗法による。
 3)試験を実施した3ヶ所の圃場では、栽培期間中のかん水は実施していない。

5.残された問題点とその対応
 1)本成果に基づく極早生品種安定生産技術の総合実証