成績概要書 (2007年1月作成)

研究課題: 飼料用とうもろこしにおけるデオキシニバレノールの汚染実態と乳牛に及ぼす影響
        (デオキシニバレノールの発生要因と乳牛に及ぼす影響の解明)

担当部署: 畜産試験場 環境草地部畜産環境科・草地飼料科、基盤研究部病態生理科
協力分担: なし
予算区分: 道単
研究期間: 2004〜2006年度(平成16〜18年度)

1.背景・目的
 酪農現場で乳牛の生産性阻害が懸念されているデオキシニバレノール(DON)について、飼料用とうもろこしにおける汚染実態を明らかにする。また、DON汚染飼料の摂取が乳量に及ぼす影響および吸着剤による牛消化管内容液中DONの吸着効果を明らかにする。

2.方法
 1)      道内におけるとうもろこしサイレージ中DON汚染の実態
 2)      DON汚染飼料の乳牛への影響と検出法
  2)-1 DON汚染飼料の摂取が乳量に及ぼす影響、 2)-2 DON摂取状況の検出法
  2)-3 吸着剤による牛消化管内容液中DONの吸着効果

3.成果の概要
  1)-1.      エライザキット(NEOGEN社Veratox DON5/5)により、とうもろこしサイレージ中DON濃度の測定が可能(n=38,r2=0.97)であった。
  1)-2.      道内のとうもろこしサイレージ中DON濃度は平均1.18ppm(n=245)であり、4%のものが飼料安全法による許容基準値(<4ppm)を超えた(表1)。DON濃度とサイレージ発酵品
       質との間には相関関係は認められなかった(表2)。また、実験サイロにおいても調製条件の違いとDON濃度の変化に関連は認められなかった(図1)。
  1)-3.      飼料用とうもろこしの収穫時サンプルからはF.graminearum(以下F.g.)が103〜5CFU/g検出され、DON濃度と関連が見られた(図2)。F.g.はDON産生菌として道内に広く分布す
       ることが知られており本菌が飼料用とうもろこしにおけるDON汚染の原因と考えられた。これらのことから、DON汚染は圃場立毛中に生じていることが示唆された。
  1)-4.      F.g.、DON共にとうもろこし地上部各部位から分離・検出された(表3)。F.g.分離率、DON濃度共に子実で低い傾向があった。F.g.分離率は気温の高い7月下旬からから9月上旬
       にかけて高まり、DON濃度は、気温がやや低下する9月上旬〜9月下旬にかけて高まった(図3)。
  1)-5.     倒伏がDON汚染を助長することが示唆された。(表3)。
  2)-1.     DON汚染とうもろこしサイレージ(0.4〜4.6ppm)を給与している経産牛26頭のデータ(n=242)を解析したところ、飼料中DON濃度は乾物摂取量との関係がなく、DON摂取量も乳量
       との関係がみられなかった。
  2)-2.     第一胃液DON濃度はDON摂取量の多い牛ほど上昇し、DON摂取量と正の相関を認めた(p<0.01、図4)。第一胃液DON濃度によるDON摂取状況の推測が可能であった。
  2)-3.     吸着剤としてケイ酸アルミニウム300g、ベントナイト300g、タンニン酸アルブミン150gをそれぞれ単独で乳牛3頭に給与(1期8日間、2反復)したところ、投与前と各期最終日の第
       一胃液DON濃度は、日内変動に顕著な違いを認めなかった(図5)。

以上、DONは道内のとうもろこしサイレージから広く検出され、その濃度はおおむね飼料安全法の許容値内であったが、4%のもので許容値を超えた。汚染は主に圃場立毛中にF.graminearumにより植物体全体で起こり、倒伏によりDON濃度が高まる危険性がある。許容値内の低いDON汚染飼料では乳量への影響はみられなかった。また、今回の3つの吸着剤ではDON吸着効果が確認できなかった。

 

 

 

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   図2 とうもろこしサイレージ原料中
      F.graminearum数とDON濃度

 

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4.成果の活用面と留意点
  エライザキットを活用する場合にはサイレージでの精度が確認されているものを利用すること。

5.残された問題とその対応
 1)  その他のマイコトキシンの汚染実態調査とマイコトキシン簡易分析方法開発
 2)  粗飼料汚染マイコトキシンの家畜への影響評価および低減化技術の開発