成績概要書(2007年1月作成)

研究課題:牛2分離受精卵からのクローン胚生産技術
      (2分離胚からの安定的クローン牛生産技術の確立)
       (ES様細胞を用いたクローン胚の安定的多量作出技術の開発)

担当部署:道立畜試 基盤研究部 受精卵移植科・遺伝子工学科
          家畜研究部 肉牛育種科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2002-2005年度(平成14〜17年度)

 

1.目的
 受精卵クローン牛を種雄牛造成の際の産肉能力検定に利用するため、2分離受精卵の一方から種雄牛候補を生産し、もう一方から3頭以上のクローン牛(検定牛)を生産する技術の確立を目指し、ドナー細胞を増加させる技術として核移植を繰り返して実施する技術(リクローン技術)、受精卵を培養して細胞数を増加させる技術(ES様細胞を用いる方法)について検討した。

2.方法
 1)2分離受精卵からの種雄牛候補生産技術の確立
 2)リクローン技術を用いたクローン胚生産技術の確立
 3)ES様細胞を用いたクローン胚生産技術の確立

3.結果の概要
 1)-(1)受精卵の2分離方法として再集合法、吸引法、分離法について検討した。吸引法および分離法が桑実胚および小型化桑実胚の2分離方法として適当と考えられた(表1)。
 1)-(2)性判別2分離受精卵の移植を実施した。受胎率は33.8%であった(表2)。また、候補牛を生産するためには少なくともドナー受精卵3個を準備する必要があると考えられた。
 2)-(1)受精卵1個からのリクローン胚の発生率を調査した。クローン胚29個からリクローン胚80個が得られた(表3)。この値と平成13年度成績書(受精卵59個からクローン胚623個)か
    ら、2分離受精卵からリクローン胚約15個が得られると推定された。
    (623÷59)÷2×(80÷29)=14.6
 2)-(2)性判別2分離受精卵の一方からリクローン胚の作出を試みた。ドナー受精卵E、F、Hについて、それぞれ2、1、3個のクローン胚から30、6、29個のリクローン胚が得られた(表4)。
    これらのドナー受精卵では、リクローン胚生産時に3個のクローン胚を使用すれば、それぞれ15個以上のリクローン胚が得られると考えられた。
 3)-(1)新鮮および凍結受精卵からES様細胞の作出を試みた。いずれの受精卵からも高率にES様細胞が作出できた(表5)。また、ES様細胞の凍結保存が可能であった。
 3)-(2)ES様細胞を用いた核移植におけるレシピエント卵子の活性化法について検討したところ、体細胞クローン型の方が胚の発生率が高かった。また、異なる2つの受精卵(A、B)から
    ES様細胞の作出を試みた。いずれの受精卵からもクローン胚が得られ、これらのクローン胚を移植した結果、受精卵B由来のクローン胚から受胎例が得られた(表6)。

 リクローン技術により、2分離受精卵の一方から15個(必要最低限)のリクローン胚作出が可能と考えられた。また、受精卵からの高率なES様細胞の作出、ES様細胞からの核移植胚の作出が可能であることを示した。

あああああ

 

 

 

 

 

4.成果の活用面と留意点
 1)黒毛和種種雄牛候補の産肉能力検定確立のための資料とする。
 2)クローン胚からのES様細胞の作出は検討していない。

5.残された問題とその対応
 1)リクローン胚の受胎率を明らかにする必要がある。
 2)リクローン胚の凍結保存技術を確立することが必要である。