成績概要書 (2007年1月作成)
研究課題:乳牛ふん尿・麦稈混合物の堆肥化過程における温室効果ガスの揮散量 担当部署:道立畜試 畜産環境科 |
1.目的
北海道の代表的な乳牛ふん尿処理方法である、ふん尿に麦稈を混合して堆積・切返しによって堆肥化する過程における温室効果ガスの揮散量を調査する。
2.方法
麦稈混合量の違いまたは固液分離の有無により容積重を0.30〜0.86 kg/Lの範囲に調整した麦稈混合乳牛ふん尿約1.3m3を堆積・切返しにより堆肥化する試験を10回実施し(表1)、温室効果ガス(亜酸化窒素・メタン)およびアンモニア揮散量を調査した。
3. 成果の概要
(1) 堆肥化原料ふん尿の容積重の差によって発酵の速度は異なったものの、どの区も最終的な乾物分解率は37.7%以上と高く、ふん尿の外観からも堆肥として十分な腐熟程度に達してい
た。
(2) ふん尿に対する麦稈混合による容積重調整の差異が堆肥化過程の温室効果ガス揮散量に及ぼす影響を検討したところ(表2)、麦稈混合量が少または中程度で容積重が約0.5〜
0.8kg/Lであるふん尿の堆肥化からは温室効果ガスが多く揮散し、亜酸化窒素揮散量は原料窒素1kgあたり14.3〜29.3gN、メタン揮散量は原料有機物1kgあたり34.5〜52.7gCH4であっ
た。これに対し、麦稈混合量が多く容積重が0.4 kg/L以下に調整されたふん尿からの温室効果ガス揮散量は顕著に少なかった。アンモニア揮散量は容積重を低く調整した場合に多く
なった。
(3) 麦稈混合量が少ないふん尿を固液分離により容積重調整して堆肥化したところ、分離前ふん尿の堆肥化に比べ温室効果ガス揮散量は顕著に低下し、アンモニア揮散量は同程度で
あった(表3)。
(4) 容積重0.54kg/Lのふん尿を強制通気と切返しにより堆肥化したところ、無通気での堆肥化に比べ、メタンの揮散量は低減される傾向が認められる一方、アンモニア揮散量は顕著に増
加した。
以上のように北海道でよく見られる容積重調整が不十分な高水分ふん尿の堆肥化からは多量に温室効果ガスが揮散することが明らかとなった。揮散の低減のためには、ふん尿に麦稈を十分量混合するか固液分離をして容積重を0.4kg/L以下に調整することの効果が大きい。固液分離はアンモニアの揮散を増加させずに温室効果ガスを低減できる技術である。
4. 成果の活用面と留意点
1) 家畜ふん尿処理場面における温室効果ガス揮散量査定および低減策検討の際の基礎資料となる。
5. 残された問題とその対応
1) 麦稈以外の敷料資材を用いて堆肥化をおこなった場合の温室効果ガス揮散量。
2) 液状ふん尿(スラリー・尿)貯留過程およびふん尿施用後の圃場における温室効果ガス揮散量。