成績概要書(2007年1月作成)

研究課題:酪農地域のふん尿利用を適正化する農家支援体制の構築と運営マニュアル
        (環境保全型家畜ふん尿循環利用システム実証事業)

担当部署:根釧農試・草地環境科、経営科
予算区分:国費補助
研究期間:2004〜2006年度(平成16〜18年度)

 

1.目的
 酪農地帯における地域主体の環境改善を目的として、農家支援体制を組織し、圃場管理技術を伝達して人材を育成するとともに、これを運営して地域における養分管理の適正化を図るためのマニュアルを策定する。

2.方法
1) 対象地域 モデル地域A 14戸(2004〜2006年)、モデル地域B 13戸(2005〜2006年)
2) 活動期間 2004年 改善前調査、2005〜2006年 改善対策の普及と改善効果調査
3) 活動内容 ①農家支援体制の構築、②施肥管理指導者の育成、③地域の養分管理適正化活動の展開、④改善効果調査

3.成果の概要
1)酪農地帯において地域主体で環境改善を実践することを目的として、農家支援体制の構築とその運営に関し、以下のようにマニュアルを策定した。
 (1)農家支援体制を構築する
  ①動機付けになる社会情勢や外圧がかかっている地域を選ぶ。
  ②縦横の連携が密で、主体的に活動できる組織を核とする。
  ③協力的な農家が多い地域をモデル地域とする。
 (2)施肥管理技術者を育成する
  農業試験場や農業改良普及センター等、施肥管理技術を有する者を講師として、下記のカリキュラムによって施肥管理技術者を少なくとも3人育成する(表1)。
  ①草地区分実習は、年3日3年間(半日を1単位として18単位程度)を目処とする。
  ②土壌およびふん尿採取実習はそれぞれ初年目1日間で十分である。
  ③施肥設計・ふん尿利用計画実習は年2〜3日間で3年間を要す。
 (3)地域のふん尿利用計画を策定する(表2)
  個別農家のふん尿利用計画を集計し、地域の計画として策定・実行する。
  ①飼養頭数、面積、土地利用区分、土壌理化学性、ふん尿の化学性、管理来歴(ふん尿施用履歴等)などの調査を行い、各農家の施肥設計とふん尿利用計画を立案する。
  ②各作業に要する労力の目安を設定した(表3)。
  ③定期的に参画農家に対する報告会を開催し、活動内容と結果について説明を行う。
  ④施肥設計・ふん尿利用計画の策定では、個別農家対応のふん尿利用計画支援ソフトAMAFE2006を活用するため、個別のふん尿利用計画圃場図を地域に統合するワークブック
   Fit_Map.xlsを開発した(図1)。
2)これらの活動により、参加農家の約9割が慣行の施肥設計に変更を加えた(図2)。
3)施肥改善の結果、購入肥料量とリン酸施肥量が節減された(図3)。ふん尿も含め、地域の草地890haに施用された養分量は、改善前に比較し、窒素とカリではそれぞれ11t増大したが、
 リン酸では54t節減できた。圃場ごとに見ると、適正量に近い窒素施肥量の圃場が改善前よりも増加し、リン酸蓄積の著しい圃場に対する減肥が図られ、カリ不足の圃場が改善されるな
 ど、ふん尿利用に伴う施肥の適正化が推進された。

以上の結果、地域の指導機関が当マニュアルに基づいて組織を構築、活動を展開することによって、地域の養分管理が適正化の方向に誘導できることが実証された。

 

   

     

 

     

 

4.成果の活用面と留意点
 酪農地帯の指導機関が環境改善活動を組織的に遂行するために活用する。

5.残された問題点とその対応
 圃場診断技術伝達講師の確保