成績概要書(2007年1月作成)

研究課題:催芽時食酢処理による水稲の褐条病防除対策
       (循環式催芽機使用催芽時の食酢処理による病害防除)

担当部署:中央農試 生産環境部 予察科
      上川農試 研究部 病虫科、栽培環境科
協力分担:
予算区分:受託
研究期間:2006年度(平成18年度)

 

1.目的
 北海道で問題となる水稲の種子伝染性病害4病害のうち、褐条病に対しては、近年増加傾向である温湯消毒の効果は不安定である。また化学農薬による種子消毒も完全ではなく、種子予措および育苗管理時の対策の徹底が必要であるが、完全には実施できていないのが現状である。一方、循環式催芽器を使用した催芽時食酢処理が、本病に高い防除効果を示すことが富山県において示された。本試験では、催芽時食酢処理を、現行の種子消毒処理と組合せた場合の褐条病防除効果と発芽・苗立ちへの影響についての検討を行い、北海道において実用化させることを目的とした。

 

2.方法
1)処理方法
(1)食酢処理:穀物酢(酸度4.2%)、25〜100倍、催芽時処理(32℃循環)
(2)種子消毒:温湯消毒(60℃10分間)、イプコナゾール・銅水和剤F(200倍24時間浸漬・20倍10分間浸漬)および銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤DF(200倍24時間浸漬・7.5倍3%塗沫)
2)調査項目
(1)褐条病に対する防除効果:発病苗率(重症苗、軽症苗)
(2)発芽および苗形質への影響:発芽率、出芽率、苗形質(草丈、第一鞘高、葉数、分げつ、地上部乾物重、窒素含有率)
 

3.成果の概要
1)催芽時の食酢25〜100倍液処理と、60℃10分間の温湯種子消毒、イプコナゾール・銅水和剤Fおよび銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤DFの浸漬あるいは塗末処理との組合せ処理は、いずれも褐条病に対して高い防除効果が認められた(表1)。
2)食酢100倍液処理は、褐条病に対し、現在指導されている化学農薬による種子消毒と蒸気催芽の組合せとほぼ同等の効果であったが、食酢50倍液処理は、それに優る効果が認められた。25倍液処理は50倍液とほぼ同等の効果であった(表1)。
3)食酢濃度が高まるにつれ、種子の発芽は遅延した。最も顕著であった食酢25倍液処理は、発芽率60%に達するまでに食酢処理なしと比べ10時間以上遅延した上(図1)、催芽が不揃いとなり、移植時の苗形質も劣る傾向であった(表2、3)。発芽遅延による催芽の均一性低下を勘案すると、食酢濃度は出来る限り低い方が望ましいが、33倍よりも低い濃度では実用上問題がないと考えられた。
4)以上、褐条病に対する防除効果と、発芽や苗形質への影響に関する結果を総合すると、循環式催芽器による催芽時の食酢処理濃度は50倍とするのが妥当と考えられた。

 

 表1 催芽時食酢処理による褐条病に対する防除効果

 


図1.催芽時食酢処理が発芽に与える影響
   注)種子消毒は温湯消毒(60℃10分間)
  表2.催芽時食酢処理が出芽に与える影響
 

 

表3.移植時苗の生育調査結果

 

4.成果の活用面と留意点
1)本成果は、水稲の褐条病に対する防除対策に活用する。
2)種子予措・育苗管理における耕種的対策は、催芽時(食酢処理時)に循環式催芽器を使用する以外は、「水稲の育苗期における細菌病の防除対策(平成8年)」に準拠する。
3)一度使用した食酢液は再利用しない。
4)本試験に用いた食酢は酸度4.2%の穀物酢である。なお、食酢は特定防除資材に指定されている。
5)本技術を用いる場合、種子消毒は化学農薬または温湯消毒により、従来通り行う。
6)催芽処理によって生じる廃液は、法令に従って適正に処理する。

 

5.残された問題とその対応 
1)生物農薬と催芽時食酢処理との組合せによる防除効果の検討