成績概要書(2007年1月作成)

研究課題:水稲品種「ななつぼし」における胴切粒(くびれ米)発生要因の解析
       (予算課題名:多様な米ニーズに対応する品種改良並びに栽培技術の早期確立
       1.食味ランキング特A米生産のための技術開発と多様な米産地の形成支援)
担当部署:中央農試 生産研究部 水田・転作科
協力分担:なし
予算区分:受託
研究期間:2004〜2006年度(平成16年?18年度)

 

1.目的
 近年奨励品種となった水稲品種「ななつぼし」において、胴切粒(くびれ米)が多発した(特に2001年産米)。著しい胴切粒は精米時に砕米を生じることから、その多発は北海道産米のイメージ低下を招く重要な問題と考えられる。したがって、本試験では主に「ななつぼし」を対象とした胴切粒の発生要因を解析し、その対策に資することを目的とする。

 

2.方法
<人工気象室試験>
1) 2004年 供試品種:「ななつぼし」、苗:成苗ポット苗、試験規模:1/5000aワグネルポット、4反復、窒素施肥量:0.7g/ポット、温度処理:高温(昼26/夜20℃),中温(昼24/夜18℃),低温
 (昼22/夜16℃),極低温(昼20/夜14℃)、出穂揃い後2週間を人工気象室内で処理した。さらに、別途用意した株について、出穂揃い時に籾先端の切除処理を行った。
2) 2005年 窒素施肥量:0.7および1.1g/ポット、温度処理:(2004年と同様の処理温度)×(無遮光,遮光)×(出穂揃い0〜10日,10〜20日)を人工気象室内で処理した。他は同上。
3) 2006年 供試品種:「ななつぼし」「きらら397」「ほしのゆめ」、窒素施肥量:0.7および1.4g/ポット、温度処理:極低温(20/14℃)×(出穂揃い1〜2週,2週〜3週,3週〜4週)を人工気象室
 内で処理した。他は同上。(出穂揃い2週〜3週)のみ出穂前の遮光処理も加えた。

<圃場試験>
1)2005年 供試圃場:中央農試(グライ低地土)、処理:(窒素基肥量:全層6,全層6-側条3kg/10a)×(慣行移植,遅植,遅植・若苗(24日苗))×(無遮光,遮光70%:出穂揃い後20日間)
2)2006年 処理:(窒素基肥量:全層8,全層8-側条3kg/10a)、遮光期間は止葉抽出始め?出穂揃いもしくは出穂揃い後20日間、他は同上。

 

3.成果の概要
 本試験では主に「ななつぼし」を対象とし、胴切粒(くびれ米)の発生要因を解析した。
1)過去の胴切粒発生年の気象経過から、発生年の特徴として出穂後の登熟初期(8月上中旬)の低温傾向が認められた。また、出穂前(7月中下旬)の寡照傾向も見られた。
2)胴切粒は登熟初期における低温により顕著に誘発された。具体的には、平均気温19℃以下である極低温区(20℃/14℃)と低温区(22℃/16℃)で多発した(表1)。
3)胴切粒(くびれ米)は2次分げつ>1次分げつ>主稈、2次枝梗>1次枝梗の順に多く、籾殻と子実伸張のアンバランス、具体的には、低温により誘発された子実縦伸長増加に対する籾
 殻長の制限が原因と推察される(表1、図1)。
4)低温遭遇は、 出穂揃いから10日間(特に出穂3?4日後頃)の低温が重要と考えられる(図2)。
5)出穂前の日照不足は、籾殻の生育を抑制し、胴切粒発生を助長した(表2)。
6)窒素施肥量および出穂以降の日照不足に関しては、その影響が判然としなかった。
7)胴切粒の発生は、「ななつぼし」>「きらら397」>「ほしのゆめ」の順に多かった。
8)調製について、圃場試験及びポット試験とも篩目が大きくなると胴切米の比率が低下し、篩目2.0mm以上の場合には胴切粒(甚)を概ね取り除けた(図3)。また、現行の外観品質判定
 機類で選別することは困難であった。
9)胴切粒(甚)では、精白時の砕米発生率が高く、ほとんどの粒で胴切溝の糠が残った。また、胴切粒は炊飯により著しい縦伸張が観察され、甚だしい場合には炊飯米が「くの字」に曲が
 った。
10)以上の結果から、「ななつぼし」を作付けする場合には、当年の出穂時期と気象経過からその発生を予見し、集荷・調製において注意するように努めるべきと判断する(表3)。


表1.着生位置別の胴切粒発生率(2004年