成績概要書 (2007年1月作成)

研究課題名:てんさいの農家貯蔵における根中糖分、根重の損失実態と要因
       (てんさいの貯蔵に伴う糖分・根重への影響)
担当部署:十勝農試 作物研究部 畑作園芸科
予算区分:受託
研究期間:2004〜2005年度(平成16〜17年度)

 

1.目的 てんさいの農家貯蔵における根中糖分、根重の損失実態と要因について明らかにする。

 

2.方法 1) 圃場堆積の中央部における貯蔵による根中糖分、根重の変化
 (1)試験年次および場所

 (2)貯蔵方法

 (3)試験手順 a)試料:無病害の中庸な約20株。b)試料の保存:二重ポリエチレン袋に密封し5℃冷蔵。
  c)処理:試料を網袋に入れ、1位置3〜4点と温湿度センサーを圃場堆積中央部に埋設。d)測定調査
  :貯蔵前後の根重、根中糖分、温度、湿度および外観調査。以下同様。
 2) 圃場堆積の天井面における貯蔵による根中糖分、根重の変化
   a)試験年次および場所、貯蔵方法および試験手順:1)試験と同様。b)処理:圃場堆積の天井面に埋設。
 3) 圃場堆積の側面、底面における貯蔵による根中糖分、根重の変化
   a)試験年次および場所:H16、17年十勝農試(B,E)。b)処理:圃場堆積の東西南北の各面、底面に埋設。
 4) 打撲傷、タッピング位置および品種による根中糖分、根重の変化
   a)試験年次および場所:打撲傷(A,E)。タッピング位置および品種(B,E)。b)処理 打撲傷:金槌による4カ所の裂傷。タッピング位置:標準(最下茎葉痕跡部より1cm上部)、浅切(標準よ
   り1cm上部)、深切(標準より1cm下部)。 品種:「のぞみ」(根重型)、「えとぴりか」(中間型)、「あまいぶき」(糖分型)。
 

3.成果の概要
 1) 圃場堆積の中央部では、農家貯蔵による根重の減少はほとんどなく、根中糖分は貯蔵前に比べ同等から7ポイントの低下と試験例により差が認められ、糖量の減少に影響を及ぼし
  た。(表1)。
 2) 圃場堆積の中央部における根中糖分の低下程度と糸状菌根率、萌芽根率との相関は低かったが、貯蔵期間の積算温度とは有意な負の相関が認められた(表2)。このことから、呼
  吸による糖の消耗が糖分低下の主な要因と考えられ、低温日における収穫および圃場堆積の作成や収穫期の遅延化等により貯蔵開始時の品温を下げることが重要である。
 3) 圃場堆積の天井面、底面では、農家貯蔵による根重の減少はほとんどなく、根中糖分の低下は試験例により差がみられた。中央部、天井面および底面における根中糖分の低下程
  度と貯蔵期間の積算温度には、積算温度が300℃の場合、根中糖分が貯蔵前に比べ3ポイント低下する関係がみられた(図1)。
 4) 圃場堆積の側面における貯蔵では、根の凍結により根重の減少程度が大きくなる傾向があることから、シート被覆を二重にするなどの凍結防止対策が重要である(表3)。
 5) 打撲傷をつけた根の農家貯蔵では、糖量が減少する傾向があったことから、収穫や圃場堆積の作成における打撲傷の発生に留意する必要がある(表4)。
 6) タッピング位置が浅くなるほど農家貯蔵後の萌芽根率が高まり、糖量が減少する傾向があったことから、収穫時のタッピング位置に留意する必要がある(表4)。
 7) 農家貯蔵による根重、根中糖分、糖量の損失程度に品種間差は認められなかった(表4)。

 

 

     

 

     

 

4.成果の活用面と留意点
  農家貯蔵における根中糖分、根重の損失実態とその要因を明らかにしたものであり、農家貯蔵を指導する際の参考として活用する。

5.残された問題点とその対応
  農家貯蔵による根中糖分、根重の損失軽減対策技術の開発。