成績概要書(2007年1月作成)
研究課題:ばれいしょ栽培における茎葉処理機の効果的利用法
      (種ばれいしょ生産のための茎葉処理機械利用技術の確立)
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科、中央農試 生産研究部 機械科
協力分担:
予算区分:受託
研究期間:2004〜2006年(平成16〜18年度)

 

1.目的 ばれいしょの収穫前に行われる茎葉処理は、安全・安心への配慮から、従来の薬剤散布に代わり機械処理に取り組む生産者が増えているが、安定して高い処理精度が求められている。機械処理には茎葉チョッパのほか、近年開発された茎葉引き抜き機があることから、処理精度を比較するとともに、茎葉チョッパ処理時に問題となる茎葉再生の品種間差を調査した。上記をまとめて、ばれいしょの熟期や品種の特性に応じた、効果的な茎葉処理機の利用法について検討した。

 

2.方法
 ①供試機 
   茎葉引き抜き機:機種A(FP-2、トラクタ直装式2畦用、平成18年、十勝農試・空知管内a町)
           機種B(MCL-21、自走式2畦用、平成17年、十勝農試)
   茎葉チョッパ :機種C(TPC-3000、トラクタ直装式4畦用、平成16年、十勝農試)
           機種D(4LKBR300310、トラクタ直装式4畦用、平成17・18年、十勝農試)
 ②供試品種:「男爵薯」、「メークイン」、「ホッカイコガネ」ほか、計12品種
 ③十勝農試(淡色黒ボク土、茎葉処理法の違いによる処理精度の比較)
  ⅰ)茎葉引き抜き機(機種A、B)、 ⅱ)茎葉チョッパ単用(機種C、D)
  ⅲ)茎葉チョッパ処理4〜5日後にピラフルフェンエチル乳剤450ml/10a散布(チョッパ→薬剤)
  ⅳ)生育調節剤(薬剤散布):ピラフルフェンエチル乳剤450ml/10aを2回散布、散布水量100L/10a。
 ④a町の処理区(表層多腐植質黒ボク土):機種Aのみ供試し、農家ほ場にて精密調査を実施。
 ⑤培土形状:十勝農試、a町ともかまぼこ型培土。
 ⑥調査項目:作物条件、茎葉処理直後および2週後の処理茎率・葉付き茎率・再生茎率、塊茎の露出および緑化いも率、塊茎の皮むけ

 

3.成果の概要
1)茎葉引き抜き機の利用適否は、処理精度の良否(表1)と塊茎露出の多少から判断された。茎が畦の中心からずれていると残存茎が増加し、トラクタ直装式の機種Aでは、倒伏が多い
 ときや茎葉引き抜き抵抗が大きいとき処理精度が低下した。自走式の機種Bは、倒伏の影響を受けず、各熟期の品種とも高い処理精度を示した。両機種とも、引き抜き処理後の塊茎
 露出は薬剤散布より多く、塊茎着生深の浅い品種では特に多かった(図1)。塊茎着生深には大きな品種間差があるため(表3)、浅い品種では茎葉引き抜き機は不適であり、やや浅い
 品種は塊茎着生深を事前に確認する必要がある。茎葉引き抜き機では、塊茎の皮むけが薬剤散布より少なかった。
2)トラクタ直装式茎葉チョッパによる茎葉繁茂期処理2週後の再生茎率から、再生程度を「少」から「甚」の5段階に分類した(図2)。早生〜中早生の品種はすべて再生程度「少」で高い処
 理精度を示した(表2)。中生〜晩生の品種は「やや少」〜「甚」の品種間差があり、熟期と再生程度の関係は必ずしも一致しなかった。2週後の再生茎率および葉付き茎率を少なくするた
 めには、「やや少」〜「多」の品種では、茎葉の残存が多い場合には薬剤を散布する必要がある。茎葉黄変始処理では、「やや少」〜「中」の品種は年次によって茎葉繁茂期と同程度の
 茎葉再生が発生する場合があったことから、茎葉の残存が多い場合には薬剤を散布するするのが望ましい。
3)生食用および加工食品用として茎葉処理機の単用処理を行う場合、早掘り栽培ではトラクタ直装式茎葉引き抜き機および自走式茎葉引き抜き機が最も効果的である。一般栽培では、
 早生〜中早生品種は、処理精度と作業能率が高いトラクタ直装式茎葉チョッパが最も効果的である。中生品種は、自走式茎葉引き抜き機の処理精度が最も効果的で、再生の少ない品
 種ではトラクタ直装式茎葉チョッパも有効である。晩生品種は、倒伏の影響を受けにくい自走式茎葉引き抜き機が最も適する。

 

表1 ばれいしょ品種の熟期からみた茎葉引き抜き機の処理精度

注1)葉付き茎率は茎葉処理2週後に調査し、a町の畦ずれの大きい試験区のデータは除いた。
 2)利用の適否 ○:2週後の葉付き茎率の平均が1%未満、△:同 1〜5%、▲:同 5〜10%、×:同 10%以上で実用レベルでない。茎葉繁茂期の2週後の葉付き茎率が1%未満で、
   チョッパ→薬剤並であった場合に◎とした(表2も同じ)。
 3)塊茎着生の浅い品種では茎葉引き抜き機を利用せず、やや浅い品種は塊茎着生深を事前に確認することとする。
 4)作業速度は性能試験等の値を参考に設定した。作業能率は畦幅75cm、作業内訳のうち作業90%として試算した(表2も同じ)。

 

 

表2 ばれいしょ品種の熟期からみた茎葉チョッパの処理精度

注)葉付き茎率は茎葉処理2週後に調査した。早生〜中早生品種は他に「キタアカリ」、「ゆきつぶら」、「トヨシロ」を供試。「きたひめ」は単年度の評価である。自走式チョッパの利用の
  適否は、「茎葉チョッパと生育調節剤による種ばれいしょ生産のための茎葉処理体系」(平成17年指導参考事項)を参考にした。

 

表3 供試品種の塊茎着生深

注)十勝農試(淡色黒ボク土、
  慣行栽培、かまぼこ型培土)
  の結果から判断した。
   
     図1 培土側面からの塊茎着生深と
      緑化いも率(機種B、茎葉黄変始処理、
      十勝農試、平成17年)

     
     図2 トラクタ直装式茎葉チョッパの処理2週後の再生茎率
       (機種C