成績概要書                          (2007年1月作成)

研究課題:SSRマーカーを利用した小豆・菜豆の品種判別
     (DNA多型による金時類および納豆の品種判別技術)
     (DNAマーカーを利用した豆類製品における品種識別)
     (豆類加工製品における品種判別の検証)

担当部署:中央農試 基盤研究部 遺伝子工学科、遺伝資源部 資源利用科・資源貯蔵科、
       独立行政法人 農業生物資源研究所 基盤研究領域 ジーンバンク
協力分担:
予算区分:道費、国費受託
研究機関:2003〜2005年度(平成15〜17年度)

 

1.目的
 近年低価格な農産物の輸入増加に伴い、評価の高い国内育成品種が海外に流出し、海外産として輸入される事例が認められる。登録品種の育成者権を保護するためには、迅速で精度の高い品種判別法を確立する必要がある。中央農試ではRAPD-STSマーカーによる手亡及び小豆の品種判別法を開発した(2002)が、輸入小豆など不特定の遺伝子型を対象とした場合には多型性に難点が認められる。一方、SSRマーカーはRAPD-STSマーカーに比較して多型性が高いとされる。農業生物資源研究所において小豆SSRマーカーの開発が進められ、菜豆のSSRマーカーはカナダ等で報告がある。多型性の高いSSRマーカーを利用して、小豆及び菜豆の品種判別法を検討する。

2.方法
 供試材料:小豆は北海道品種(主要品種8、その他19)、育成系統(8)、府県品種(16)、海外遺伝資源(239)や輸入小豆(7)を、菜豆では主な北海道品種(24)を供試した。
 SSRマーカー:農業生物資源研究所の開発した小豆のSSRマーカー及びカナダで報告のある菜豆のSSRマーカーから多型性の高いマーカーをそれぞれ5種類選抜して供試した。
 マーカーの検定:DNAは乾燥子実から試料を削り、SDS抽出法によった。PCRはSSRマーカーの報告により実施し、DNA増幅断片はポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出した。

3.成果の概要
1)小豆のSSRマーカー5種を供試した結果、登録品種「きたのおとめ」、「しゅまり」と北海道及び府県の小豆品種との判別が可能であった(表1)。RAPD-STSマーカーで区別できない品種
  間の判別も可能であった。
2)海外の小豆遺伝資源239点を解析した結果、「きたのおとめ」、「しゅまり」と同じ遺伝子型を示す遺伝資源は認められなかった。
3)中国からの輸入小豆を検定した結果、同一銘柄内で多型が認められ、輸入小豆は雑多な遺伝子型の混合集団であることが明らかとなった。
4)SSRマーカー5種を供試して菜豆の品種判別を検討した結果、登録品種「福勝」、「福良金時」と他の金時品種、「絹てぼう」と他の手亡品種の判別が可能であった(表2)。


 

 

 

4.成果の活用面と留意点
1)本成果は輸入豆類等の品種判別に利用できるが、輸入小豆の遺伝子型は雑多であるため、含まれる品種の判別には複数の粒を個別に調査する必要がある。
2)精度の高いPCR増幅DNA断片長の解析にはシークエンサー導入が望ましい。
3)本成果の一部をマニュアル化して、農林水産省生産局種苗課のホームページに公開した(http://www.hinsyu.maff.go.jp/)。

5.残された問題とその対応  
 加糖餡などの加工製品の品種判別