成績概要書(2007年1月作成)
研究課題:春まき小麦の半数体倍加系統作出の効率化
    道産小麦の安全性・安定性向上試験
     1.赤かび病抵抗性強化とDON低減技術による安全性向上
     1)赤かび病抵抗性及びマイコトキシン産生抑制型品種の開発促進
    民間流通に対応した高品質小麦の開発促進
     2.難防除病害抵抗性品種の開発促進
     1)赤かび病抵抗性系統の育成と対策
担当部署:中央農試 基盤研究部 遺伝子工学科、細胞育種科
協力分担:中央農試 作物研究部 畑作科、北見農試 作物研究部 麦類科
予算区分:受託
研究期間:2001年度〜2006年度(平成13年度〜18年度)

 

1.目的
 葯培養によって赤かび病抵抗性系統作出を行う中で 1)これまで夏期にのみ行われてきた春まき小麦の葯培養を冬期でも実施できるよう検討し効率的に作業できる体系を構築する 2)省力化のために葯培養再生個体を圃場で養成することによってさらに効率的に春まき小麦の半数体倍加系統を作出する方法を検討した。

 

2.方法
1)花粉が1核期の中〜後期に達した幼穂を取り出し、
 第1、第2小花の葯をとり、胚様体形成培地で約25
 〜40日間、28℃、暗所で静置し、胚様体を形成させ
 た。緑色体形成培地に胚様体を移植し緑色体を再
 分化させた。幼植物体養成培地で緑色体を25℃、
 16時間日長で培養し十分に発根するまで養成した。
2)再生個体はクリーンルーム内で2〜3日順化した。
 5cm角のジフィーストリップにタキイ育苗培土を入れ、
 培養個体を移植し1〜2週間温室で養成し、ポット
 あるいは圃場に移植した。
   

2.方法
1)花粉が1核期の中〜後期に達した幼穂を取り出し、第1、第2小花の葯をとり、胚様体形成培地で約25〜40日間、28℃、暗所で静置し、胚様体を形成させた。緑色体形成培地に胚様体を移植し緑色体を再分化させた。幼植物体養成培地で緑色体を25℃、16時間日長で培養し十分に発根するまで養成した。
2)再生個体はクリーンルーム内で2〜3日順化した。5cm角のジフィーストリップにタキイ育苗培土を入れ、培養個体を移植し1〜2週間温室で養成し、ポットあるいは圃場に移植した。

3.成果の概要
1)冬期に葯培養を行うことによって供試する穂が小さくなり培養効率は低下するが(表1)、植物体再生率の高い交配組合せを利用することによって作業上問題は生じなかった。
2)葯培養再生個体は圃場に移植しても活着し、正常に生育した。温室で養成する場合と比較すると(表1、2)、生育が旺盛で、採種粒数が多く(表3)、予備選抜と種子増殖を同時に行うことができた。これらの結果から、より低コストで効率的な作業体系を構築できる。
3)夏期に交配したF1種子を冬期に温室で養成して葯培養し、再生個体を圃場で養成することにより(表4)、これまでの葯培養と比較して1年間、通常育種と比較すると3年間育種年限を短縮することが可能と考えられる(図1)。



  

  

 

    
    図1 春まき小麦品種改良スケジュールの模式図
        網掛け部分が今回改良した部分。
        ●は葯培養(改良型)で省略できる部分。

 

4.成果の活用面と留意点
1)本方法は春まき小麦品種改良における早期固定、予備選抜、種子増殖、省力化による育種年限短縮に活用できる。
2)葯培養を行う際は植物体再生率に優れた交配親を用いることが望ましい。

5.残された問題点とその対応