成績概要書 (2007年1月作成
研究課題:りんどうの胚珠培養法
      (りんどう育種のための組織培養技術および苗養成技術の確立)
      (りんどう育種のための組織培養法および苗養成法の開発)
 担当部署:中央農試 基盤研究部 細胞育種科、ながぬま農業協同組合
 協力分担:
 予算区分:民間共同
 研究期間:2001〜2006年度 (平成13〜18年度)

1.目 的
  りんどうの胚珠培養法を確立する。さらに、胚珠培養により得られた種間交雑個体の雑種性を圃場における特性調査により確認する。

2.方 法
1)供試材料
  エゾリンドウ個体およびりんどう野生種5種(G. paradoxa、G. septemfida、G. dahurica、G. tibetica、G. andrewsii)
2)交配方法
  圃場の株より多数の蕾を有する抽苔茎を採取。切花で維持。子房親の葯が裂開する前に除雄。柱頭が2分したときに、他家あるいは自家の花粉を受粉。
3)培養方法
  交配数日後に肥大した子房を採取。表面殺菌後、胚珠を培地 (1/2NH4NO3量のMS基本培地、0.01mg/l NAA、30または45g/l ショ糖、8g/l 寒天または2.5g/l ゲルライト) に置床。置床2
 ヶ月後に発芽数を調査。発芽個体は、新しい培地に移植。
4)胚珠培養条件の検討
  胚珠培養における培養開始時期、培養培地のゲル化剤 (8g/l寒天、2.5g/lゲルライト)、培養培地へのジベレリン添加の有無 (無添加および2mg/l)について検討。
5)胚珠培養により作出した種間交雑個体の雑種性確認
  エゾリンドウと野生種5種との交配および野生種間交配を実施。エゾリンドウ×G. paradoxa種間雑種個体に関してはエゾリンドウおよびG. paradoxaの戻し交配を実施。得られた個体は
 雑種性確認のため圃場に定植。2006年、開花した個体について、開花期、草高、葉長、花段数、花色、花長、花冠先端の転回、がく片長等の特性を調査。

3.成果の概要
1)りんどうの切花を用いて交配し、数日後に肥大子房より胚珠を摘出し、NH4NO3量を1/2とするMS培地で培養することで、発芽個体を得ることができた。
2)胚珠培養の開始に最適な時期は、エゾリンドウ個体間交雑での発芽数の調査結果から、交配2〜5日後よりも7〜10日後が適当であり(表1)、10日を超えると発芽数は減少した(データ
 省略)。また、交配1日後には胚はすでに胚珠培養での発芽能力を有していた(表1)。
3)胚珠培養培地のゲル化剤には、寒天よりゲルライトが1子房当たりの発芽数が多くなり、適当であった(データ省略)。また、培地へのジベレリン添加は、無添加に比べて発芽が早まり、
 発芽数も1.5〜2倍となる発芽促進効果が見られた(データ省略)。
4)エゾリンドウとりんどう野生種(G. paradoxa、G. septemfida、G. dahurica、G. tibeticaおよびG. andrewsiiの5種)の交配後、胚珠培養技術を用いることで、発芽個体が得られた(表2、
 図1b)。また、野生種間の3組合せ(G. septemfida×G. tibetica、G. tibetica×G. septemfida、G. tibetica×G. dahuricai)においても発芽個体が得られた(図1c、d)。
5)得られた個体の雑種性を確認するため、圃場に定植、養成し、開花させた。開花個体の花形、花長、がく片長、葉長、葉幅などの形態的特徴や花色は、両親の中間的であり、雑種個
 体と判断できた。また、幾つかの組合せでは、開花個体の大半が不親和性によると思われる奇形花を生じた(表2、図1a)。
6)エゾリンドウ×G. paradoxa種間雑種個体へのエゾリンドウあるいはG. paradoxaの戻し交配により、極めて低率ではあるが雑種後代個体を得ることができた(データ省略)。

  

 

  

4.成果の活用面と留意点
1)りんどう種間雑種の獲得に利用できる。

5.残された問題とその対応
1)種間雑種個体の大量増殖法。