成績概要書(2007年1月作成)
研究課題:貯雪冷熱を活用した花き栽培技術の実証
   (貯雪冷熱エネルギーを用いた花き栽培技術の実証)

担当部署:花・野菜技術センター 技術体系化チーム
協力分担:沼田町、JA北いぶき、空知農改北空知支所沼田分室、空知支庁
予算区分:道費(その他事業)
研究期間:2005〜2006年度(平成17〜18年度)

 

1.目的
 平成16年指導参考事項「花き栽培における雪冷房システムの利用」の成果に基づき、雪冷熱を利用した花き栽培技術の現地実証及びシステムの改良、適応品目の拡大を図る。

  

2.方法
1)適応品目の拡大
 試験場所:沼田町農家圃場
 ハウス規格:間口6.3m×奥行き50m、315㎡
 貯雪槽サイズ:2.7×2.7×1.8m(深さ)=13.1m3
 供試品目:スターチス・シヌアータ(平成17、18年)4-5月定植無加温6-10月切り
        デルフィニウム    (平成17、18年)5月定植無加温7-10月切り
        トルコギキョウ    (平成17年)   5月定植無加温8-9月切り
 冷房方法:冷水を貯雪槽より水中ポンプ(750W)でくみ上げ地中埋設(深さ10-15cm、1ベット当たり2本、40cm間隔)した架橋ポリエチレン管に流した。
  平成17年:スターチスは冷却管の一部を保温シートで巻いて無冷房区とし、デルフィニウム、トルコギキョウは1ベットのみ地中冷房した。
  平成18年:3ベット(1ハウス)のうち2ベット地中冷却した。
 冷房時期:平成17年は7/19から8/22まで7回、平成18年は7/19から8/28まで8回の雪投入を行った(1回当たり10m3)。夜間(18時〜6時)に通水した。

2)システムの改良
 改良の内容:貯雪槽に断熱材利用、貯雪槽蓋部分に断熱シート利用
 断熱材:スタイロフォーム1.8m×0.9m×5cm、5mmのコンパネで両面を挟む
 蓋部分素材:アルミ蒸着フィルム2層、中間に発泡ポリエチレンシート1層
3)調査内容 切花調査(収量、品質)H17/8/29、H18/9/7より採花調査開始
         地温推移、冷却水水温、電気使用量

 

3.成果の概要
1)平成16年の成果では、シートで漏水防止した穴に貯雪したが(図1)、断熱材を利用して貯雪槽の断熱性を高めた。また、システムの改良を行い、雪投入時の衝撃による貯雪槽及び
 水中ポンプと配管の破損を回避するとともに、開口部の断熱性向上と雨水の浸入防止が可能となった(表1)。
2)本試験の冷房規模では1回約10m3の雪を4日に1回程度投入する必要があった。
3)地中冷房により、地温はベット中央部分(深さ10cm)で2〜4℃低下した(表2)。
4)雪冷熱の1晩当たりの利用量は、平成17年が約44,000kcalで雪に換算すると約1m3、平成18年が94,000kcalで雪に換算すると約2.3m3であった。
5)地中冷房が切花生育に及ぼす効果では、デルフィニウム、スターチスで収量性や品質が高まった(表3)。トルコギキョウは作型が合わず効果が判定できなかった。
6)経済性評価では、地中冷房により切り残しが多い場合を除き、増収効果がデルフィニウム、スターチスとも見られ、電気料、施設償却を考慮に入れても地中冷房が優位であった
 (表4)。

 

       
       図1 貯雪地中冷房システムの概要

 

         

 

 

4.成果の活用面と留意点
1)貯雪施設のある地域で、スターチスとデルフィニウムに適用する。
2)地中冷房により採花時期が遅れるので、栽培管理に留意する。

 

5.残された問題とその対応
1)貯雪施設のない地域への普及。
2)適応品目の拡大。