成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:寒冷期における鶏死体の発酵消毒法
      (寒冷期における鶏死体の発酵消毒(堆肥化)法の検証)
担当部署:畜産試験場 環境草地部 畜産環境科、家畜研究部 中小家畜飼養科
協力分担:
予算区分:民間受託((社)全国家畜畜産物衛生指導協会)
研究期間:2006年(平成18年)    
1.目的
 「高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」に示された「患畜等(鶏)の死体の発酵による消毒法」について、冬季に鶏を用いて試験し、冷涼・寒冷条件が発酵に及ぼす影響を検討する。
2.方法
1) 冷涼条件下における鶏死体の発酵消毒法の検証
(1)堆積方法: 発酵消毒法マニュアルの混合法に従った。図1に堆積断面図を示した。一部底部に暗きょ管を敷設した自然通気部を設けた。(2)試験期間: 平成18年10月18日〜12月1日(45日間)
(3)供試材料: 鶏死体797kg(330羽分)、発酵資材(鶏ふん1221kg、オガコ793kg)、被覆用オガコ680kg 
(4)堆積規模: 3.6t、5m3(幅2m、長さ5m、高さ1.1m) (5)切返し: 14日後
(6)調査項目: 温度(部位別)、大腸菌(部位別に大腸菌サンプルを埋設)、鶏死体の形状、悪臭。
(7)試験場所: 新得町、屋内(ビニルハウス畜舎) 
2) 寒冷条件下における鶏死体の発酵消毒法の検証
 (1)堆積方法: 発酵消毒法マニュアルの混合法に従った。
 (2)実施時期: 平成19年1月12日〜2月23日(43日間)
 (3)供試材料:鶏死体283kg(158羽分)、発酵資材(鶏ふん390kg、オガコ270kg)、被覆用オガコ218kg
 (4)堆積規模: 1.2t、2m3(幅2m、長さ2m、高さ1.05m) (5)切返し: 14日後
 (6)調査項目: 温度(部位別)、指標ウイルス(部位別にND,IBD生ワクチンサンプルを埋設)、鶏死体の形状 
 (7)試験場所: 滝川市、屋内(畜舎)
3.成果の概要
1)冷涼条件下における発酵消毒法(開始時日平均室温12℃、試験期日平均気温-3〜12(平均5)℃)
(1)堆積物の5部位 (1中央底部,2中央部,3中央上部,4端中部,5端底部) で測定した温度はいずれも、ウイルス不活性化の指標とされる56℃以上に達した(図2)。また、暗きょ管を底部に設置して自然通気を促すことで、堆積深部の温度の上昇を早める効果がみられた。
(2)指標菌として温度測定と同部位で測定した大腸菌は開始時には5.9logCFU/g検出されたが、切返し時および終了時にはいずれも検出されなかった(表1)。
(3)堆積状態での臭気は堆肥の発酵臭であり、腐敗臭は感じられなかった。切返しおよび終了時に堆積物を崩したときにはアンモニア由来の強い刺激臭が感じられた。
(4)試験終了時の鶏死体の形状は、内臓は観察されず、羽毛と筋肉が分解した残渣と骨が観察された(写真1)。
2)寒冷条件下における発酵消毒法(日平均室温は-4〜2(平均-1)℃)
(5)堆積物の5部位 (1中央底部,2中央部,3中央上部,4端中部,5端底部) で測定した温度はいずれも、ウイルス不活性化の指標とされる56℃以上に達した(図2)。
(6)生ワクチンを堆積物の5部位(1中央底部,2中央部,3中央上部,4端中部,5端底部)に埋設したところ、一定温度で放置する場合に比べて、発酵消毒によりウイルス力価が著しく低下した(表2)。
(7)堆積状態での臭気は堆肥の発酵臭であり、腐敗臭は感じられなかった。切返しおよび終了時に堆積物を崩したときにはアンモニア由来の強い刺激臭が感じられた。
(8)試験終了時の鶏死体の形状は、内臓はほとんど観察されず、羽毛と筋肉が分解した残渣と大きな骨が観察された(写真1)。また、一部ピンク色を呈した筋肉部分も残存したが、十分に熱がかけられた状態であった。
(9)全体に冷涼条件より発酵・分解の進行が遅かった。
以上のように、冷涼・寒冷条件下において混合法による鶏死体の発酵消毒が可能であることが実証された。

   
   図2 温度推移(上段:冷涼条件、下段:寒冷条件)

               
 
     2 発酵消毒による指標ウイルスの力価の推移(力価測定:十勝家保)
       

4.成果の活用面と留意点
1)本成績は養鶏場および関係機関が鳥インフルエンザに対する防疫体制を検討する場面で活用される。
2)必要な発酵資材を確保する。本試験は発酵資材として鶏ふん・オガコ混合物(容積重約0.5kg/L )を鶏死体に対して重量比で2.3〜2.5倍量、重量・容積比で約5倍量を使用した。
3)本試験は鶏を殺処分後すみやかに屋根のある環境で発酵消毒したものである。また、発酵資材は凍結していない状態で供試した。
4)切返し時にはウイルス死滅温度に達していない部位もあるため、消毒終了まで病原体の拡散防止に留意する。
5)発酵消毒時の温度測定は、温度上昇が緩慢な堆積物の表面から最も遠い部位で測定することが望ましい。6)防疫対策の検討においては発酵消毒後の残渣(堆肥)の処分についても考慮が必要である。
5.残された課題とその対応