成績概要書 (2008年1月作成)
大気・水質環境汚染のないふん尿処理技術の確立が求められている。本道の肉牛農家はふん尿を敷料(オガコ)と混合して堆肥化する事例が多い。ふん尿の堆肥化促進のためには通気式堆肥化技術の導入が有望視されるが、通気期間における多量のアンモニア揮散の低減策および寒冷期における通気条件の設定が課題となる。そこで、府県で実用化研究がすすんでいる腐熟堆肥吸着法によるアンモニア揮散防止技術および寒冷期における低量通気による発酵促進効果について検証した。 2.方法 1) 少量通気が堆肥化進行に及ぼす影響の検討 肉牛ふん尿・オガコ混合物の堆肥化過程における通気量が堆肥化進行に及ぼす影響を冷涼期に検討した。通気量:80,40,20L/分/堆肥1m3および無通気。 2) 少量通気条件の堆肥化における腐熟堆肥吸着によるアンモニア揮散低減効果の検討 肉牛ふん尿・オガコ混合物の通気式堆肥化(通気量=40,20L/分/堆肥1m3)において発生するアンモニアの、腐熟堆肥吸着法による除去能力を調査した(図1)。 3) 好気処理によるアンモニア吸着腐熟堆肥の無臭化技術の検討 アンモニアを吸着させた堆肥の好気処理(少量通気・切返し)によって硝化し、無臭化技術を検討した。 4) 寒冷期における少量通気および腐熟堆肥吸着の組み合わせ技術の検証 4m3規模の堆肥化試験を寒冷条件下で行い、発酵温度および発生するアンモニアの腐熟堆肥による除去能を検討した。 3. 成果の概要 1) 乾物分解率および昇温の観点から、通気量40, 20L/分/m3および無通気区が80L/分/m3(府県で適正とされる通気量)区と比較して同程度以上に堆肥化が進行したと判断された(表1)。また、悪臭発生リスクの観点から、切返し時の悪臭は無通気の場合に強い腐敗臭が感じられ(表1)、20L/分/m3区でも切り返し1回目では強い刺激臭をもっていたが、寒冷期における堆肥発酵促進による臭気低減のためには20L/分/m3が適していたと判断された。 2) 堆肥化槽において4週間の通気期間中に発生するアンモニア量は通気量20、40L/分/m3の区でそれぞれ92、171gN/kgTNであり、この発生ガスを通気量の3倍量で腐熟堆肥に通すことで、両区とも8割以上のアンモニアを吸着できることが確認された(表2)。特に、通気開始直後のアンモニア発生ピーク時(2000ppm以上)における吸着率は9割以上と高かった。 3) アンモニアを吸着させた腐熟堆肥は、2週間少量通気(20L/分/堆肥1m3)することで、アンモニアを揮散させることなく硝化を促進し、無臭化することが可能であった。 4) 寒冷条件(堆肥化材料の初期温度が0℃程度・非凍結、開始時外気温が−5℃前後)においても、堆肥化開始後、無通気条件で堆積し50℃以上の品温上昇を確認してから少量通気(20L/分/m3)を開始することで、発酵温度は雑草種子の死滅条件である60℃・3日を満たすことが可能であった。通気時に堆肥化槽で発生する最大320ppmのアンモニアは腐熟堆肥吸着槽表面において20ppm以下であり、アンモニア除去効果が確認された。 以上の結果より、肉牛ふん尿の通気式堆肥化から発生するアンモニアを低減する技術として腐熟堆肥吸着法の有効性が確認された。寒冷期においては無通気で品温を上昇させた後、20L/分/m3の少量通気をすることで60℃以上の昇温が可能となる。図2に腐熟堆肥吸着法によるふん尿堆肥化モデルを提示した。 表1 寒冷期における堆肥化開始時・切返し時・終了時サンプルの悪臭の 程度の推移および堆肥化期間中最高温度と乾物分解率 ![]() 表2 腐熟堆肥吸着試験におけるアンモニア収支 ![]() ![]() 図1 アンモニアの腐熟堆肥着試験装置の概要 ![]() 図2 寒冷期における腐熟堆肥吸着法の肉牛ふん尿堆肥化・利用モデル 4. 成果の活用面と留意点 1) 本成績はオガコを敷料として用いている肉牛牛舎のふん尿の堆肥化促進・脱臭技術として活用できる。 2) 寒冷期においては一次発酵槽の品温を観察し、50℃以上の期間のみ通気する。 3) 吸引管内に発生する結露水を排出する必要がある。結露水にはアンモニア態窒素が高濃度で溶け込んでいるため、環境汚染を起こすことのないよう取り扱いに留意する。また吸引側の送風機はアンモニアに耐性のあるものを使用する。 5. 残された問題 1) 厳寒期における加温通気による堆肥化促進技術。 2) 北海道で利用可能な実規模での実証。 |