成績概要書(2008年1月作成)
課題分類:
研究課題:近赤外分析による輸入アルファルファ乾草の飼料成分推定
       (マメ科乾草のための近赤外分析用検量線の作成 )
担当部署:畜試 環境草地部 草地飼料科  
協力分担:
予算区分:受託
研究期間:2006〜2007年度(平成18〜19年度)
1. 目的
フォレージテストでの利用を前提に、アルファルファ輸入乾草を対象として近赤外分析(NIRS)による高精度で安定した飼料成分推定用検量線を作成することを目的とする。
2. 方法
1) サンプルの収集
2005年までに収集されたアルファルファ輸入乾草199点のスペクトルデータについて主成分分析を行い、冗長サンプル44点を除いた155点を標準サンプルとして検量線作成に供試した。また、精度の検定(プリディクション)用サンプルは2005年に収集されたPRE1群(n=40)と2006年に収集されたPRE2群(n=20)の2つの群を供試した。
2) 検量線の作成と精度検定
検量線はすべてPLS法により作成し、プリディクションでは安定性を重視し、PRE1群とPRE2群の2つの群でBias(誤差の平均値)が十分に小さいこと、成分変動幅に対する推定誤差の偏差(SDP)の割合を示すEI値が実用的な範囲にあることの2点で精度を判定した。
3) NDFおよびADLについての他の成分からの回帰推定式とその精度検定
3. 成果の概要
1)-(1) 標準サンプルの成分はCPで11.5〜24.9%、OCWで34.8〜65.5%と大きく変動し、フォレージテストによる評価が重要であることが確認された(データ省略)。
2)-(1) 粗タンパク質(CP)(図1)、酸性デタージェント繊維(ADF)、酸性デタージェントリグニン(ADL)、総繊維(OCW)、溶解性タンパク質(CPs)、酸性デタージェント不溶タンパク質(CPb)、中性デタージェント不溶タンパク質(NDICP)についての高精度の検量線を作成し、未知試料においても精度が安定して維持されていることを確認した(表1)。
2)-(2) 低消化性繊維(Ob)については実用性の判定はPRE1群と2群を込みにしてB判定であったが、PRE2群でBiasがやや大きくなった。利用に当たっては年度ごとの定期的な分析値のチェックが必要である(表1,図2)。
2)-(3) 粗脂肪(EE)についてはBiasが小さく安定しているものの、精度が低かった(表1)。ただし、成分の変動幅が2%以下と小さいことがその要因として考えられることから、暫定的にこの検量線についても提案する(図3)。
2)-(4) 非分解性タンパク質(CPu)については、SDPが他のタンパク分画より大きかったが、レンジがやや広いためC判定であった。一方Biasが大きく、化学分析値より過小評価される傾向にあり、安定性に欠けることから今回作成した検量線は実用的な精度を有していないと考えられた(表1,図4)。
3)-(1) 中性デタージェント繊維(NDF)については現在OCWからの回帰推定値が分析センターで採用されているが、今回作成した検量線によるOCW推定値を説明変数とした場合にも回帰推定値が実用上高い精度を有していることを確認した(図5)。
3)-(2) ADLについては説明変数にADF×Ob/OCWを用いた高精度の1次回帰式が得られた。この式の説明変数にNIR推定値を用いた場合において精度の低下は認められなかったため(図6)、ADLの分析体制が整わないラボ等での利用を想定し、以下の回帰式についても推奨する。
ADL=0.239×(ADF×Ob÷OCW)+0.338     (n=155、r2=0.93)

以上、輸入アルファルファ乾草の主な飼料成分を高精度かつ安定して推定するNIRS用検量線を作成することができた。

 
 

4. 成果の活用面と留意点
・ 輸入アルファルファ乾草に対して適用する。
・ 道内の8つの飼料分析センターにて供用予定(平成20年7月供用開始予定)。

5. 残された問題点とその対応
・ 輸入イネ科乾草(オーツヘイ、ライグラスストロー等)用検量線の作成と統一
・ イネ科主体2番草サイレージの推定精度向上
・ Ob検量線の安定性向上、CPu検量線の作成、NDF消化率等、新たな分析項目への対応