成績概要書(2008年1月作成)
放牧草の嗜好性を左右する要因を整理し、嗜好性の良い放牧草地の管理方法についての情報を提供する。 2.方法 1) 放牧実施農家圃場における地形と放牧草成分の影響検討(行動観察による。対象牧区;MF主体1ha、放牧頭数;搾乳牛群42〜49頭) 2) 窒素施肥量および施肥資材の違いが嗜好性に及ぼす影響の検討 3) 掃除刈残渣が放牧草の嗜好性に及ぼす影響の検討(場内、チモシー主体草地) 3.成果の概要 1)-(1) 奥行き/幅比=7.18(中央と最奥に高低差2〜3m程度の凹地あり、ゲート付近に水槽設置)の牧区(図1)における一頭あたり牧区幅0.8〜0.9m、日中のみの放牧条件では、暑熱ストレスを受ける条件などによりばらつくが、ゲートからの距離が長くなるほど採食を含む各行動型の時間が短くなる(放牧地の利用性が低下する)傾向が観察された(図2)。牧区レイアウトの際には起伏の多い地形に長方形の牧区の組み合わせは避け、水槽を牧区奥に配置するなどの対策が必要である。 1)-(2) 4カ年9回の行動観察結果を用いて各ブロックの放牧草(MF)成分の牧区平均比と採食行動型割合の相関を調べたところ、ADF、ADF×Ob/OCWは負の、OaおよびWSC+Oaは正の影響を及ぼすことが示唆された(表1)。ADF×Ob/OCWはADLリグニンと相関の強い項目である。成分の影響の強さの順列は一律ではなく、成分の変動幅などに影響を受けて変動すると考えられた。成分変動要因の一つとして牧区内の起伏に起因する肥料養分の偏りが考えられた。嗜好性のばらつきを抑えるためには地形を考慮した施肥について検討する必要がある。 2)-(1) 窒素施肥量を標準施肥より増やして一対比較法試験を行ったところ、過剰に窒素施用した区の嗜好性は明らかに低下した。過剰な窒素を施用した区の牧草中成分は標準区と比較してCPおよびOa含量が高くなり、その他の繊維およびWSC含量が低下傾向を示した(表2)。過剰なN施肥が嗜好性を低下させることを確認した。 2)-(2) 施肥成分量は一定とし、酸性促進型と中性維持型を想定した施肥資材の組み合わせ間で一対比較法により嗜好性を検定したが、短期的には両者に差は認められなかった(データ省略)。 3)-(1) 草丈30㎝で利用率70%を想定した条件で、牧区内に掃除刈り残渣残置区と持ち出し区を配置し、処理後約3週間後に肉牛を入牧し採食行動を観察した。各回次においては有意差が認められなかったものの、3回の調査すべてで残置区での採食行動割合が低下した(表3)。夏場の放牧草嗜好性向上に掃除刈り残渣の持ち出しが有効であると考えられた。 以上、農家調査事例等から放牧草の嗜好性低下に係わる要因を抽出し、解析した結果、放牧草地管理上の参考となる一定の知見を得た。 ![]() 4.成果の活用面と留意点 ・放牧地の管理方法研究における参考となる。 5.残された問題とその対応 ・嗜好性の改善方法の実証 |