【指導奨励上参考に資すべき事項】

水稲「渡育132号」及び「渡育134号」に関する試験成績

渡島支場

 

 新品種名  白光(しろひかり)     紅光(べにひかり)

 

1. 来歴
 水稲「渡育132号」及び水稲「渡育134号」は共に昭和17年水稲「陸羽132号」を母とし、水稲「晩生栄光」を父として北海道農業試験場渡島支場で人工交配し、育成したものである。

2. 特性概要
 (1) 「渡育132号」
  玄米の形状及び大きさは中形小粒、色調は淡飴で、「巴まさり」程度であるが、光沢良く且つ腹白は少なく品質は「巴まさり」より良好である。熟期は「巴まさり」より遅く晩熟種に属する。茎数は「巴まさり」より数ないが「南栄」より多く、草丈も「巴まさり」より稍短い程度であるが、中位の長さの芒があり、且つふ先、芒に特別の着色がないの で既存の優良品種と明らかに区別される特色を持っている。
 倒伏抵抗性は「巴まさり」より強い。いもち病耐病性は穂首に対しては「巴まさり」より強いが「南栄」よりは劣る。
 冷水抵抗性は弱い方であるが糖に水口の冷水でなければ支障はない。収量は「巴まさり」程度である。
 栽培に当たっては晩熟種であるから必ず保護苗代で育苗し、耐冷性の点より水口或いは冷水のかかる地帯では特段の注意が肝要である。
 奨励方針としては以上の特性から見て渡島桧山の南部で「巴まさり」を栽培している地帯では漸次「巴まさり」と置き代わって行くものであると考えられる。

 (2) 「渡育134号」
  玄米の形は稍円味を帯びて居り、大きさも小さめであるが色調は淡飴、光沢は極めて良く、特に腹白は殆どなく極めて良質で現在奨励されているいずれの品種より遙かに優っている。熟期は「巴まさり」より遅く晩熟種に属するが、「渡育132号」よりは早い。茎数は「南栄」程度であるが稍多目、草丈は「巴まさり」より高く「南栄」並であり無芒でふ先に暗紅色の着色がある。
 いもち病耐病性は穂首に対しては「巴まさり」より強いが節に対しては特に強くはない。冷水抵抗性は「巴まさり」程度で「渡育132号」より強い。
 倒伏抵抗性は草丈の伸びる割合に稈は丈夫であり「巴まさり」より強い。
 収量は「巴まさり」程度である。栽培に当たっては晩熟種であるから必ず保護苗代で育苗することが大切であり、倒伏には強いが長稈であることと、節稲熱病に対して特に強いとは言われない点から施肥に注意し、特に多収より良質米の収穫に努めることが必要である。
 奨励方針としては以上の特性より見て渡島、桧山の南部に於ける良質米として現在の品種に配合して栽培されるべきと考えられる。

3. 試験成績
 (1) 特性調査
系統名及び
比較品種名
粳糯
の別
熟期別 玄米 いもち
耐病性
冷水
抵抗性
長さ 茎数 強弱 長さ 粒着 ふ色 芒又はふ先の色 芒の有無 形状 大きさ 色沢 腹白 品質
渡育132号 晩生 稍長 稍多 稍長 黄白 淡飴極良 上中 稍強 稍弱
渡育134号 暗紅 稍円 稍小 殆無
巴まさり 稍長 稍多 淡飴、良 稍多 中中 稍弱
南栄 稍長 稍大 飴良 中下

 (2) 生育調査

系統名及び
比較品種名
発芽
良否
出穂期(月日) 穂揃日数(日) 成熟期(月日)
昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均
渡育132号 良整 8.15 8.11 8.15 8.14 6 9 7 7 9.23 9.23 10.4 9.27
渡育134号 8.13 8.9 8.14 8.12 6 7 6 6 9.22 9.21 10.3 9.25
巴まさり 8.14 8.7 8.13 8.11 7 7 7 7 9.20 9.18 10.2 9.23
南栄 8.11 8.5 8.10 8.9 7 10 8 8 9.17 9.17 9.29 9.21
系統名及び
比較品種名
生育日数(日) 成熟期
草丈(cm) 穂長(cm) 穂数(本)
昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均
渡育132号 150 152 163 155 84 83 81 83 168.8 16.0 17.0 16.6 16 17 17 17
渡育134号 149 151 162 154 94 91 90 92 17.5 17.0 17.0 17.8 16 16 17 16
巴まさり 147 149 161 152 88 86 84 86 15.5 16.0 15.0 15.8 20 20 18 19
南栄 144 147 158 150 96 91 91 93 16.4 17.0 17.0 16.8 15 14 16 15
  備考 1. 本成績は冷床栽培で栽植は1.0尺×0.5尺1株2本植
      2. 反当施肥量は堆肥300貫 硫安4貫 過石6.5貫 魚粕6.5貫
      3. 
  昭26 昭27 昭28
播種期 4月26日 4月24日 4月24日
移植期 5月25日 5月23日 5月20日

 (3) 特性検定試験
  イ 冷水抵抗性検定試験
系統名及び
比較品種名
昭27 昭28
出穂始
(月日)
不稔歩合
(%)
出穂始
(月日)
不稔歩合
(%)
水口 水下 水口 水下 水口 水下 水口 水下
渡育132号 8.31 8.19 96 50 9.8 8.22 96 89
渡育134号 8.31 8.19 76 11 9.4 8.17 98 79
巴まさり 8.31 8.19 88 13 9.5 8.17 96 56
南栄 8.27 8.18 75 20 8.31 8.14 95 48

 備考
  昭和27年は6月12日より9月15日迄、昭和28年は6月6日より9月27日迄冷水掛流を行った。
  昭和27年の平均水温は水口19.8℃水下22.1℃、昭和28年は午前9時の水温で水口16.3℃水下19.5℃であった。
 尚 昭和28年は冷害年であった為冷水だけの影響による結果とは認めがたい点がある。

  ロ 倒伏抵抗性検定試験
系統名及び
比較品種名
昭26 昭27 昭28
傾倒 倒伏 傾倒 倒伏 傾倒 倒伏
渡育132号
渡育134号
巴まさり
南栄
  備考  多肥栽培(窒素のみ倍量)による。

  ハ 稲熱病耐病性検定試験
   晩播畑苗代栽培、多窒素栽培及び稲熱病浮遊液噴霧接種等を行ったが雀害を受けたり稲熱病の発生がなかったりいずれも失敗に終わったが一般栽培委託先の調査等により判定を下した。

 (4) 収量調査
系統名及び
比較品種名
反当玄米重量(貫) 収量割合(%) 反当玄米容量(石)
昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均
渡育132号 110.2 127.3 111.2 116.2 102 107 106 15 2820 3128 2873 2960
渡育134号 109.2 127.3 108.2 114.9 101 107 103 104 2786 3199 2763 2916
巴まさり 109.1 123.7 114.7 115.3 101 104 109 105 2784 3492 2734 2937
南栄 103.0 118.9 105.3 110.7 100 100 100 100 2763 2736 2693 2793
系統名及び
比較品種名
籾摺歩合(重量%) 玄米1升重量(匁) 玄米選粒重量(g)
昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均 昭26 昭27 昭28 平均
渡育132号 30.5 30.4 49.2 34.0 391 400 337 393 23.2 21.1 21.0 21.8
渡育134号 79.7 80.1 80.3 80.0 392 397 391 393 21.0 21.0 20.1 20.7
巴まさり 30.0 30.8 30.3 30.5 392 400 391 394 22.1 21.1 21.1 21.4
南栄 31.1 31.4 31.5 31.3 391 403 391 395 23.6 34 23.0 23.3

4. 町村委託試験成績
管内名 町村名 渡育132号 渡育134号 巴まさり 南栄 備考
反当
籾重(貫)
収量
割合(%)
反当
籾重(貫)
収量
割合(%)
反当
籾重(貫)
収量
割合(%)
反当
籾重(貫)
収量
割合(%)
桧山 厚沢部村鶉 67.0 120 66.4 119 59.4 106 55.9 100  
 〃  赤沼 65.3 167 69.9 137 62.6 123 51.0 100 玄米重量
泊村 165.0 157 144.0 137 135.0 129 105.0 100  〃
渡島 木古内町 110.0 83 156.0 118 120.0 91 132.0 100  
茂別村 141.0 109 129.0 100 147.3 114 129.0 100  
函館市滝原 105.6 103 120.0 117 101.4 99 102.4 100  
 〃  上湯ノ川 129.0 110 129.0 110 141.0 121 117.0 100  
 〃  滝の沢 136.5 111 120.0 98 150.0 122 123.0 100  
亀田村 121.8 117 132.7 127 103.8 100 104.2 100  
上磯町 仲の通 126.2 129 118.6 122 102.4 105 97.8 100  
 〃  清川 89.2 88 73.2 72 114.0 113 101.0 100  
 〃  大工川 94.1 94 114.6 115 101.0 101 100.0 100  
大野村 市渡 102.2 131 113.8 146 99.3 128 78.1 100  
 〃  稲里 151.7 106 165.0 115 169.1 118 143.4 100  
 〃  本郷 165.0 113 171.0 117 179.4 128 145.8 100  
 〃  細入 170.8 104 197.9 120 140.2 85 165.0 100  
 〃  文月 100.0 82 127.3 104 112.4 92 122.5 100  
 〃  東前 147.0 99 123.0 88 147.0 99 148.0 100  
七飯村 180.0 100 240.0 133 180.0 100 180.0 100