【指導奨励上参考に資すべき事項】

早生枝豆用大豆品種「大野在来B」に関する試験成績

渡島支場

 

 新品種名  坂本早生

 

1. 来歴及び適応地帯
 従来大野村の一農家が作っていたもので、始め七飯村銚子口から入手したものといわれるが、その来歴は詳らかでない。本種は早生で子実はクラカケに属し、収量食味もよく、草丈は伸びず且つ分枝に多く着莢するために枝豆としての外観は最も優っており、渡島地方における蔬菜用枝豆として優良と認められた。

2. 試験成績
   耕種法   試験項目以外は一般大豆の耕種法による。
           播種期5月上旬、畦巾2尺、株間5寸、3粒点播2本立
   1区面積  3坪

 (1) 品種選抜試験
品種名 枝豆としての
適期(月日)
枝豆としての
草丈(cm)
5株総莢数(ヶ)
昭和
26年

27年

28年
昭和
26年

27年

28年
昭和
26年

27年

28年
大野在来B 8.8 8.5 8.7 19 21 21 154 96 115
吉岡中粒 8.7 8.8 23 23 95 110
奥原1号 8.10 8.6 29 26 125 88
樺太1号 8.14 8.10 8.10 24 31 41 144 96 151
極早生大豆 8.2 25 70
ホクタネ極早生枝豆 8.13 25 120
札幌興農園極早生枝豆 8.14 21 101
吉岡大粒 8.23 42 389
中生光黒 8.25 71 362

   特性調査(昭和28年)
品種名 枝豆としての収穫期 株莢数 子実色 食味
月日 草丈(cm) 分枝(本) 主茎 分枝
大野在来B 8.7 21 2.8 61 54 115 クラカケ 上下
吉岡中粒 8.8 23 2.0 63 47 110 中上
樺太1号 8.10 41 1.9 96 55 151 上中

  イ、「大野在来」は最も早く採取される。
  ロ、8月10日までに採取出来る品種もあるが草丈が伸びすぎたり(樺太1号)莢着きが不足する欠点もあった。「大野在来B」は分枝に着莢
    多く、外観も優る。
  ハ、食味は大差がなかった。

 (2) 播種期試験  昭和28年
  早採りを目的とするため農家は極端な早播をする者もあるので本試験を行った。
播種 品種名 発芽期
(月日)
開花期
(月日)
枝豆収穫期 株莢数
月日 草丈(cm) 分枝(本) 主茎 分枝
4月27日 大野在来B 5.18 7.2 7.31 19 6.2 41 56 97
吉岡中粒 5.18 7.4 8.2 19 3.4 72 24 96
樺太1号 5.17 7.10 8.4 28 3.8 109 41 150
5月4日 大野在来B 5.22 7.9 8.4 19 6.8 40 59 99
吉岡中粒 5.22 7.13 .7 21 4.0 64 33 97
樺太1号 5.23 7.15 8.9 35 4.4 91 40 131
5月15日 大野在来B 6.1 7.10 8.8 21 6.4 9 47 116
吉岡中粒 6.1 7.15 8.10 23 3.6 73 38 111
樺太1号 6.1 7.19 8.12 40 4.8 108 64 172

  イ、早播により収穫期は多少早まるが草丈、分枝等に差は少なく、莢数も増加しない。
  ロ、早播しても収穫はそれ程早くならないので、5月上旬が適当と思われる。

 (3) 栽培密度に関する試験  昭和28年
  草丈の著しく短いもの株立を多くすることが有利と考えられ本試験を行った。
畦幅×株間 播種法 坪当株数 品種名 収穫適期 莢数
草丈(cm) 分枝(本) 1株 坪当
2尺×5寸 3粒点播
2本立
36株 大野在来B 20 5.0 24 864
吉岡中粒 21 3.0 24
2尺×5寸 2粒点播
2行千島1本立
72株 大野在来B 20 3.2 13 936
吉岡中粒 20 1.7 10 720
1.8尺×5寸 80株 大野在来B 19 3.1 11 880
吉岡中粒 20 2.1 11
1.5尺×5寸 96株 大野在来B 19 2.8 13 1248
吉岡中粒 21 2.2 11 1056
  備考  収穫期はいづれも大野在来Bは8月8日、吉岡中粒は8月10日

  イ、栽植密度の差による生育の差は殆どない。従って株数の多い1.5寸×5寸が有利
  ロ、2本立は株の生育は良いが坪当たり莢数は少ない。取り引きは莢数を考慮して5~7本を1把として行われるから坪当たり莢数の少ない
    ものは不利となる。

3. 結論
  イ、早生枝豆用品種としては早熟で草丈も伸びず分枝に多く着莢する「大野在来B」が適している。
  ロ、極端に早播きしてもそれ程収穫期は早くならず増収もしない。5月上旬頃が播種適期の様である。
  ハ、草丈の低いもの故密着する方が有利である。1.5尺×5寸の2行千島2粒点播1本立が適当の様である。

参考
  函館に於ける支場価格(1把)
     8月 1日~10日    20~25円
        11日~15日    15~20円
        16日~20日     5~10円
        21日~31日     3~5円
      (1把は5~7本)