【指導奨励上参考に資すべき事項】

馬鈴薯「北海9号」に関する試験成績

作物部

 

  新品種名  大白(おおしろ)

 

1. 来歴及び適応地帯
  昭和21年島松に於いて交配した馬鈴薯×農林1号の組合せ中の一系統にして翌年実生せられ、46005-24の系統番号を以て選抜され、昭
  和27年春島系253号、同28年北海9号となる。本種は男爵薯と同様早生で道内に於ける食用種として適している。

2. 特性概要
  熟期   男爵薯より2.3日遅いことが多い。
  草状   草丈は男爵よりやや高く、叢性はやや開であるが、男爵薯と大差なく草勢中でチトセと同様男爵薯より強い。
  茎     殆ど着色を見ないが部分的に極く淡い紅色斑点をみる程度で男爵薯より淡い。茎翼は直で男爵薯のように波状を呈しない。

3. 試験成績
 (1) 島松に於ける成績
   地上部特性(昭和26~28年平均)
  萌芽期 開花期 黄変期 枯凋期 茎長 茎数 茎太 叢性 草勢 葉色 茎色 茎翼 分枝
北海9号 6.3 7.7 8.13 8.23 47 4.1 1.1 ヤ開 ヤ濃 緑常
淡紅
男爵薯 64 7.10 8.11 8.22 43 3.7 1.1 ヤ弱 ヤ濃 緑常
淡紫
極少
チトセ 6.1 7.11 8.11 8.19 47 4.2 1.1 ヤ開 緑常
淡紫点在
極少

   地下部特性( 同上 )
  花器 塊茎 粒大 粒揃 屑薯 二次
成長
食味 疫病
薯着 目の
深浅
目の
多少
肉色
北海9号 ヤ多 扁円 淡黄白 ヤ浅 ヤ大 ヤ微 ヤ微 中上 +++
++
男爵薯 淡赤紫
先白
淡黄白 中大 中~中上 +++
+++
チトセ 淡紫
先白
ヤ疎 淡黄 ヤ良 +++
++

   収量
   年次 黄変期 3坪当
上薯数
3坪当
上薯重

標準比
澱粉価 3坪当
澱粉量

標準比
薯重歩合
北海9号 26 8.8 314 5636 113 16.3 919 122 17 55 26 3
27 8.12 206 5398 109 15.6 840 122 49 38 11 1
28 8.20 204 6188 150 15.9 986 168 64 28 8 1
平均 8.13 241 5741 122 15.9 932 138 43 40 15 2
男爵薯 26 8.6 291 4997 100 15.1 756 100 11 56 30 2
27 8.8 207 4952 100 13.9 690 100 39 46 13 2
28 8.20 166 4130 100 14.3 591 100 45 38 15 2
平均 8.11 221 4693 100 14.4 676 100 32 47 19 2
チトセ 26 8.6 298 5543 111 15.1 537 111 19 55 24 2
27 8.10 280 5654 115 15.0 849 123 29 46 21 3
28 8.18 241 6535 159 15.3 986 167 57 34 11 2
平均 8.11 273 5912 126 15.1 892 132 35 44 19 2

  葉色   男爵薯と同様のやや濃色である。
  葉形   男爵薯とほぼ類似しているが、やや広大である。
  花色   紫色で男爵薯やチトセなどより濃い。
  花数   男爵薯程度でやや多い方である。自然結顆することが多い。
  薯の形  扁円形を呈し外貌は良好。
  皮色   淡黄白であるが白色に近く収穫時のそれは純白に近い。
  目     やや浅くその数も少ない。
  肩張り  殆ど目立たない。
  匐枝   極めて短く、男爵薯と大差ない。
  薯着   極めて密である。
  粒揃   大、中粒が極めて多く屑が少ない。揃いは極めて良好。
  肉色   白
  味     男爵に優り極めて良好でメークインに比べ遜色ないがやや味が淡泊である。
        煮沸時間が比較的短くてすみ粉質で煮くずれは比較的少ない。
  収量   男爵薯に比べ1割内外多く屑が少ない。チトセと大差ない。早堀収量も比較的多く、男爵薯より多いがチトセよりやや劣る。
  澱粉価  早生種としては極めて高い方で男爵薯より約1.5%、チトセより約0.5%高い。
        澱粉粒は平均17.9±0.80μで品質的によいものではない。
  耐病性  疫病に対しては弱いが男爵薯よりやや強い。バイラスの発生が比較的少ない。軟腐病による腐敗も少ない方である。二次生長
        は少ないが、しかし薯の中に黒色心腐を生ずることがある。
  休眠性  休眠性が短く、収穫後容易に萌芽してくるものであり、長期貯蔵は注意を要する。
  用途   早生食用種として早堀用にも適する。
  適地   道内一円及び府県一部及び秋作地帯などと考えられる。
  優点   早生種にして多収で早堀にもよく、又極めて品質がよい。薯の外貌は良好であり大薯多く粒揃よい、薯着が密で、耐病性も男爵
        薯に優る。
  劣点   休眠が短いので萌芽しやすく又黒色心腐の生ずることがあるので収穫後の取扱い及び貯蔵に際しては特に注意を要する。

  早堀収量
  株当薯重(g) 澱粉価(%)
26 27 28 平均 26 27 28 平均
北海9号 391 472 350 404 11.3 15.6 13.5 13.5
男爵薯 343 412 100 285 11.4 14.2 12.7 12.8
チトセ 403 575 366 448 10.5 14.5 12.3 12.4

 (2) 地方試験成績(有望とするところ)
  北海道農試 根室支場
   年次 萌芽期 黄変期 茎長 3坪当上薯重 対標準比 澱粉価 3坪当澱粉量 対標準比 疫病 食味
北海9号 28 6.22 9.9 71 8460 107 18.3 1549 118 ++  
男爵薯 28 6.24 9.8 63 7907 100 16.3 1314 100 ++  

  北海道農試 上川支場
   年次 萌芽期 枯凋期 茎長 3坪当上薯重 対標準比 澱粉価 3坪当澱粉量 対標準比 疫病
北海9号 28 6.9 8.29 60 5713 122 135 771 151 ヤ弱
男爵薯 28 6.11 8.28 54 4506 100 11.3 509 100 ヤ弱

  北海道農試 北見支場
   年次 萌芽期 黄変期 茎長 3坪当上薯重 対標準比 澱粉価 3坪当澱粉量 対標準比 疫病 二次生長 食味
北海9号 27 6.5 8.21 67 7347 114 15.1 1109 132 中下
28 6.6 8.20 62 7307 113 13.1 957 120 ヤ多  
平均 6.6 8.21 65 7327 14.1 1033 127      
男爵薯 27 6.6 8.20 67 6451 100 13.0 839 100 ヤ多
28 6.13 8.20 59 6471 12.3 796  
平均 6.10 8.20 63 6461 12.7 812      

  北海道農試 渡島支場
   年次 萌芽期 黄変期 茎長 3坪当上薯重 対標準比 澱粉価 3坪当澱粉量 対標準比 疫病 二次生長 食味
北海9号 27 5.24 (8.21) 40 8.48 107 14.9 1244 131 1.4
28 5.26 8.18 51 8136 110 16.2 1320 128 ++    
平均 5.25 46 8242 109 15.6 1282 130       
男爵薯 27 5.30 (8.19) 7775 100 12.2 949 100 1.3
28 8.15 7407 13.9 1032 +++    
平均 7591 13.1 991      
  (  )内は枯凋期