【普及奨励事項】

水稲オフクモチ(渡福糯)(渡育139号)に関する試験成績

渡島支場

 

1. 来歴
 水稲、本品種は昭和18年上川支場で「青森糯14号」を母とし、「福糯」を父として人工交配されたもので、昭和21年雑種第3代目より渡島支場で選抜育成したものである。その後選抜固定を続け、昭和24年に「渡系149号」の名称で生産力検定予備試験に編入、更に昭和26年以降は「渡育139号」の育成番号をつけて生産力検定及特性検定試験を行い、且地方的適否をも確かめたものである。

2. 特性の概要
 (1) 熟期は「南糯」に比べ一両日おそく晩熟種に属するが、温度の低い年及び冷水の掛る様な所では「南糯」より熟期が遅れない。
 (2) 草型は「南糯」より稍長稈で分葉は中位、穂は長い方で粒着は密である。ふ先色は褐色で、短芒を有する。
 (3) 耐病性、耐倒性、耐冷水性等の障害に対する抵抗性は「南糯」に比べて強い。
 (4) 収量は、稲熱病、倒伏の障害無き年は「南糯」と大差ないが稲熱病の発生地帯及び多発年においては増収する。
 (5) 玄米の品質は小粒ではあるが、色沢は良好で餅の粘力、食味は「南糯」に比べて遜色はない。

 奨励普及の態度
 以上の特性から見て、渡島、桧山の南部、更に胆振(洞爺、伊達)の特に稲熱病の発生し易い地帯で「南糯」に置き代えて普及しようとするものである。

3. 試験成績
 (1) 生育調査
  昭和26年~30年  5ヶ年平均
育苗法 系統名及び
比較品種名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
草丈
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本)
冷床 渡島139号 8.12 9.24 93 18 15
南糯 89 14
水苗代 渡島139号 8.15 9.29 95 17 17
南糯 8.14 9.27 86 18

 (2) 特性調査
系統名及び
品種名
粳糯の別 玄米 いもち
耐病性
冷水
抵抗性
長さ 茎数 強弱 長さ 粒着 ふ色 芒又はふ先色 芒の有無長短 形状 大さ 色沢 品質
渡育139号 稍長 稍強 稍黄色 中短 乳白 稍強
南糯 稍疎 紅褐 稍円

4. 原種決定現地試験成績(昭和30年)
町村名 品種名 出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
障害 成熟期 反当
玄米重量(貫)
収量割合
(%)
品質
稈長(cm) 穂長(cm)
江差 渡育139号 8.16 10.6 倒少 85 18 154 120
南糯 8.15 79 120 100
森(濁川) 渡育139号 8.12 9.26 0 92 16 126 中上
南糯 8.9 9.21 0 21 125
今金 渡育139号 8.15 9.18 倒少 80 18 109 89
南糯 8.10 9.13 73 122 100
伊達 渡育139号 8.5 10.6 0 81 20 110 98 中上
南糯 (9.26) 0 76 23 118 100
洞爺 渡育139号 8.6 10.18 倒多 100 21 96 128 中下
南糯 88 20 75 100 下上
共和
(岩宇試験地)
渡育139号 8.10 9.15 0 98 14 96 107 0
南糯 8.8 9.12 0 91 89 100 0