【普及奨励すべき事項】

ルーサン グリム(Grimm)について

北海道立農業試験場 天北支場

 

Ⅰ 来歴
 本種はアメリカから輸入され昭和29年から4ヵ年にわたっての品種比較試験の結果選ばれたものである。

Ⅱ 特性概要
 晩生型で耐寒性が強い、草型は直立型で草丈は高く、分枚数も多い。花は濃紫色で茎葉の毛茸はない。地上部、地下部ともに生育良好で、天北地域では病害最もすくなく、各年次とも他品種に比較して多収である。

Ⅲ 成績
 生育及び収量調査成績

品種名 昭和30年~昭和32年合計
開花始(月日) 草丈(cm) 茎数(本) 干草率(%)
1番草
2番草 3番草 1番草 2番草 3番草 1番草 2番草 3番草 1番草 2番草 3番草
Grimm 7.3 7.29 9.10 96.4 57.5 45.2 111 138 121 25.9 21.2 25.5
在来種 7.3 7.28 9.7 90.8 54.8 45.5 97 119 107 26.7 21.7 24.7
Common 7.3 7.30 9.9 88.7 58.3 44.4 100 134 113 27.1 21.5 25.6
Cassack 7.3 7.29 9.10 90.3 55.1 40.3 99 135 115 26.5 21.7 24.6
Buffalo 7.5 7.31 9.14 90.3 58.3 41.9 89 122 89 26.5 21.5 25.2
Atrantic 7.4 7.29 9.14 91.3 52.7 39.3 96 135 102 27.3 21.5 25.6
Ranger 7.4 7.30 9.11 88.0 53.5 37.1 95 129 97 26.4 21.2 25.5
Ladak 7.3 7.30 9.17 89.8 47.6 30.7 82 109 73 26.5 21.3 25.0
赤クロバー 6.15 7.19 49.7 30.5 84 51 19.5 18.6
品種名 昭和30年~昭和31年の平均 その他の特性 昭和29年~昭和32年合計
茎葉立 小葉 節間数 茎の太さ
(mm)
根重
(g)
病害 冬枯 生草量(kg) 干草量
1番草
2番草
3番草 長さ(mm) 巾(mm) 長さ/巾 同左割合(%)
Grimm 0.60 0.85 1.33 29.4 14.3 2.06 18.0 3.24 166 15054 120 3636
在来種 0.68 1.90 1.26 26.4 14.0 1.89 17.3 3.01 152 ++ 12554 100 3105
Common 0.63 0.89 1.27 27.7 15.2 1.82 17.1 3.06 142 13573 108 3368
Cassack 0.67 0.90 1.41 27.3 14.1 1.94 16.8 2.44 127 + 13018 104 3211
Buffalo 0.65 0.94 1.35 29.0 15.5 1.87 17.4 3.20 153 12974 103 3185
Atrantic 0.68 0.88 1.29 26.8 14.1 1.90 17.1 2.42 124 + 12589 100 3156
Ranger 0.64 0.92 1.39 26.1 12.9 2.02 16.9 2.44 133 + 12406 99 3015
Ladak 0.70 1.04 1.61 27.0 13.3 2.03 16.5 3.12 104 ++ + 11065 80 2736
赤クロバー + + 9652 (100) 1742
  備考  1. 1区面積10平方メートル
       2. 草丈および茎数は開花はじめにおける調査結果で草丈は成長点までの長さ茎数は50cm間の測定結果である。
       3. 茎葉率は刈取時における生草の葉部重量の茎部重量に対する比。
       4. 刈取は1/10開花期を基準として実施した。
       5. 小葉の長さ、巾節間数および茎の太さは主稈について昭32年の1番草刈取時に行った。
       6. 根重は3番草刈取時における畦長20cm×深さ30cm中に含まれる根部重量にして昭31.32年の平均をもって示した。
       7. 病害はルーサンは主として斑葉病赤クロバーは炭疽病による (-)=無~少、(+)=中、(++)=多
       8. 冬枯の程度は次のとおり。(-)=冬枯がないか、ほとんど認められない。(+)=わずか認められる。

Ⅳ 栽培上の注意
 播種当年は在来種赤クロバーに比較し、生草収量も劣るが2年目以降は遙かにまさり、乾草においても各年次ともまさり、また他のルーサン品種にくらべ多収で、耐寒性も永続性も高いので天北地方の適品種である。なおこの地帯でも肥培管理によっては3~4回刈は可能で、青刈乾草用として好適している。