【普及奨励すべき事項】

オーチャード・グラス・フロード(Frode)について

北海道農業試験場畜産部

 

Ⅰ 来歴
 本種は昭和28年スエーデンから輸入し、同年より5ヵ年間にわたって品種比較試験を行った結果選ばれたものである。

Ⅱ 特性概要
 晩生種に属し、在来種に比べ、出穂開花は14日前後遅い。多葉型で葉長、葉幅は比較的大きく、寒さに対する抵抗性大きく、降雪直前まで緑葉を維持する。
 病害抵抗性は道産在来種にくらべてまさるが完全抵抗性を示すとはいいがたい。

Ⅲ 成績
 第1表 オーチャードグラス「フロード」の生育および特性調査表
品種名 出穂(月日) 開花(月日) 葉長
(cm)
葉巾
(mm)
葉色 一茎節数 茎の太さ
(mm)
葯色 病害 霜害
フロード 6.11 6.16 6.25 6.28 21.1±0.63(長) 8.4±0.19(中) ヤ淡緑 3.9±0.66 2.3±0.66 淡黄紫 + -
道産在来種 6.1 6.7 6.16 6.20 19.8±0.65(長) 8.4±0.25(中) 4.4±0.09 2.5±0.67 淡紫 ++ +

 第2表 オーチャードグラス品種「フロード」の収量調査成績(3ブロック合計の修正値)
品種名 昭和28年 昭和29年 昭和30年 昭和31年 昭和32年 昭和28年~32年合計
生草重 乾物重 同左%
生草重
生草重 乾物重 同左%
生草重
生草重 乾物重 同左%
生草重
生草重 乾物重 同左%
生草重
生草重 乾物重 同左%
生草重
生草重 乾物重 同左%
生草重
フロード 10.35 2.27 89.6 34.72 10.25 108.4 24.70 6.56 84.2 24.25 7.02 102.1 20.40 5.90 90.7 114.42 32.00 96.0
道産在来種 11.55 2.33 100.0 32.04 8.51 100.0 29.34 7.45 100.0 23.75 6.31 100.0 22.50 7.25 100.0 119.18 31.85 100.0
   註 1. 1区面積 3.6m×1.8m(収量調査面積 3.3m×0.9m)
     2. 出穂、開花は品種の早晩性判定。
     3. 葉長葉巾、葉の粗密、葉色、一茎節数、茎の太さ、葯色は昭和32年度調査による。調査月6月17日
     4. 葉長、葉巾は主茎第2節目より出た葉について測定、茎の太さは第2節と第3節の間を測定一茎葉数は主茎について測定。
     5. 測定値は30個体の平均、1番草を対称として調査した。
     6. 病害
       〇 条葉枯病 (Scolecatrichum graminis Fuckel)
       〇 雲形病 (Rhynchosporium arthosporum Caldwell)
          + 少、 ++ 中、 +++ 多 
     7. 霜害
          - 無、 + 中、 ++ 多

Ⅳ 栽培上の注意
 元来オーチャード・グラスは開花後急に粗剛化するものであるが、本道ではいわゆる在来種のみの作付のため収穫の期間が短く、天候条件や面積の広い場合は適期収穫が困難で良質な乾草の生産もきわめて困難であった。しかしこの在来種は永年本道に馴化したものであるためその生産力は重要視しなければならない。
 本種のような晩生種を配合作付労力の配分から養畜経営の上にきわめて有利と考えられる。なおオーチャード・グラスと赤クロバーを混播し乾草調製する場合、早生型の在来種オーチャード・グラスと赤クロバー早生型の組合せ、オーチャード・グラス晩生型〈フロード〉と赤クロバー中生型との組合せ混播すれば開花期が一致するので、利用上きわめてこのましいことである。このように時期的利用の幅を広くもたせる意味で本品種は本道オーチャード・グラス栽培地帯に導入すべきものである。