【普及奨励すべき事項】
薄荷稈の飼料化について
北海道立農業試験場 北見支場 |
Ⅰ 目的
本道における薄荷の作付面積は約1万町歩に達し、その副産物である薄荷稈は反当100~200貫であって、約1500万貫の生産があり、有力な飼料源である。
このように大量に生産される薄荷稈の適切な利用方法の究明のために研究した結果は次のとおりである。
Ⅱ 試験成績
試験は次の項目について行った。
1. 栽培法と飼料成分との関係
(1) 作物間差異
(2) 薄荷稈部位別差異
(3) 品種間差異
(4) 刈取時期差異
(5) 栽植本数差異
(6) 施肥量差異
2. 薄荷稈の消化率
3. 薄荷稈のサイレージ調製
(1) 薄荷稈と甜菜茎葉との混合割合
(2) 薄荷稈混合サイレージの栄養組織
4. 薄荷稈混合サイレージの消化率
5. 薄荷稈混合サイレージの泌乳効果
Ⅲ 考察
1. 薄荷稈の飼料価値
薄荷稈の一般組成は第1表のとおりであって、無水物中の組成では甜菜茎葉に匹敵するが粗繊維が多く、消化率が低いので可消化蛋白質及びカロリーはチモシー、大豆稈とほぼ
同程度である。しかし石灰分に富みカロチン含量が高い。
これを部位別にみると第2表のとおりであって、葉部は極めて飼料価値が高く、茎部は繊維が多く蛋白質、脂肪が少なく可消化養分が少ない。
品種間には飼料価値の差は認められない。
第1表 作物別一般組成及び可消化養分 (%)
作物 | 区別 | 水分 | 粗蛋白 | 純蛋白 | 粗脂肪 | 粗繊維 | NFE | 粗灰分 | DCP | TDN |
甜菜茎葉 | 原物 | 85.0 | 1.8 | 1.5 | 0.5 | 1.5 | 8.3 | 2.9 | 1.4 | 9.6 |
無水物 | 0 | 12.5 | 10.0 | 3.0 | 10.2 | 55.1 | 19.2 | 9.4 | 64.3 | |
薄荷稈 | 原物 | 12.1 | 10.4 | 8.5 | 1.6 | 23.0 | 44.1 | 8.8 | 4.6 | 43.2 |
無水物 | 0 | 11.8 | 9.7 | 1.8 | 26.2 | 50.2 | 10.0 | 5.2 | 49.1 | |
チモシー | 原物 | 7.8 | 6.1 | 4.7 | 1.7 | 34.6 | 43.8 | 5.9 | 4.1 | 50.7 |
無水物 | 0 | 6.6 | 5.1 | 1.9 | 37.6 | 47.5 | 6.4 | 5.9 | 55.0 | |
大豆稈 | 原物 | 13.5 | 7.1 | 5.5 | 1.3 | 32.1 | 41.2 | 4.1 | 3.5 | 44.6 |
無水物 | 0 | 8.2 | 6.4 | 1.5 | 37.1 | 47.6 | 5.5 | 4.1 | 51.6 |
第2表 薄荷稈部位別差異(原物中%)品種万葉
部位別 | 水分 | 粗蛋白 | 純蛋白 | 粗脂肪 | 粗繊維 | NFE | 粗灰分 | CaO | カロチン(mg) |
葉部 | 12.5 | 19.6 | 18.1 | 2.5 | 9.5 | 42.9 | 12.8 | 1.8 | 23.6 |
上茎抜亜部 | 11.6 | 7.5 | 5.5 | 1.1 | 27.3 | 43.9 | 8.6 | 1.1 | 1.8 |
下茎部 | 10.2 | 4.6 | 3.5 | 0.7 | 35.8 | 42.7 | 5.9 |
2. 栽培条件による飼料価値の差異
第3表のとおり密植するにつれて落葉等の関係で粗蛋白、粗脂肪が少なく、可溶無N物や粗繊維が多くなる。施肥による差異は第4表に示すように増施すると蛋白、脂肪が多くNFE、粗
繊維が少なくなる。 刈取期による差異は第5表のように刈取期が遅くなるにつれて、蛋白、脂肪が減じ、NFEと粗繊維が多くなり、茎部が木化し、消化率が低下する。
したがって薄荷稈を飼料として利用する目的では、栽植本数を少なめにし、多肥栽培を行い、遅刈りをしないようにし特に落葉を防止することが大切である。
第3表 栽培本数差異(無水物中%)万葉
反当本数(本) | 粗蛋白 | 純蛋白 | 粗脂肪 | 粗繊維 | NFE | 粗灰分 |
18000 | 14.7 | 12.2 | 2.1 | 24.5 | 47.8 | 10.9 |
30000 | 10.7 | 9.6 | 1.8 | 23.8 | 56.1 | 7.6 |
48000 | 8.9 | 7.9 | 1.4 | 25.7 | 56.4 | 7.7 |
66000 | 7.5 | 6.5 | 1.4 | 27.4 | 56.9 | 6.8 |
第4表 施肥量差異(無水物中%)万葉
施肥量 | 粗蛋白 | 純蛋白 | 粗脂肪 | 粗繊維 | NFE | 粗灰分 |
多肥 | 14.7 | 12.2 | 2.1 | 24.5 | 47.8 | 10.9 |
標肥 | 10.7 | 9.6 | 1.8 | 23.8 | 56.1 | 7.6 |
少肥 | 8.9 | 7.9 | 1.4 | 25.7 | 56.4 | 7.7 |
第5表 刈取時期差異(無水物中%)万葉
刈取期 | 粗蛋白 | 純蛋白 | 粗脂肪 | 粗繊維 | NFE | 粗灰分 |
8月23日 | 14.7 | 12.2 | 2.1 | 24.5 | 47.8 | 10.9 |
9月8日 | 10.7 | 9.6 | 1.8 | 23.8 | 56.1 | 7.6 |
9月24日 | 8.9 | 7.9 | 1.4 | 25.7 | 56.4 | 7.7 |
10月10日 | 7.5 | 6.5 | 1.4 | 27.4 | 56.9 | 6.8 |
3. 薄荷稈と甜菜茎葉の混合サイレージ
甜菜茎葉に混合する割合は甜菜茎葉の水分含量を考慮し、水分の多いものに対しては多く、少ない物に対しては少なくするべきであって、その割合は原物重量で1~2割とするのが適
当である。原料切込みは甜菜茎葉のみの場合よりも容易であるが、踏圧を十分にする必要がある。
サイレージの品質(手触り、香気、色沢)嗜好性は甜菜茎葉単味サイレージに比し、混合サイレージの方が優る。薄荷稈の混入により過剰の水分や可溶性養分が稈に吸収されるので
混合サイレージの歩留は良好である。混合サイレージの一般栄養組成は甜菜茎葉単味サイレージよりよく、薄荷稈の混合によって水溶性蓚酸の含量が激減する。
混合サイレージの消化率は薄荷稈の一般栄養素の消化率が甜菜茎葉よりも低いので、甜菜茎葉単味サイレージよりも欠く栄養素ともやや劣るが、一般成分の含量が高いので(乾物
量が多い)可消化蛋白もカロリーも混合サイレージの方が高い。
乳量においては両者間には差異はないが、脂肪量は混合サイレージの方が若干増加する結果がでた。
4. その他
薄荷稈は茎部が粗剛で、しかも葉部が粉状化するので、稈の状態で給与すると採食率が劣り、緬羊で7~8割、乳牛で4~5割程度であるが、混合サイレージでは食率高くほとんど残食
しない。また乾物量が多いのでサイレージを同重量給与する場合は単味サイレージに比して乾草の給与量は少なくてすむ。
第6表 サイレージ一般組成並びに特種組成(原物中%)
サイレージ別 | 水分 | 粗蛋白 | 純蛋白 | 粗脂肪 | 粗繊維 | NFE | 粗灰分 | 総酸 | 不揮発酸 | P.H | 全蓚酸 | 水溶性蓚酸 | CaO |
甜菜茎葉単味 | 84.2 | 2.1 | 1.5 | 0.5 | 2.1 | 8.6 | 2.5 | 1.00 | 0.56 | 4.2 | 0.63 | 0.25 | 0.22 |
薄荷稈混合 | 73.0 | 3.3 | 2.5 | 0.5 | 5.7 | 13.8 | 3.7 | 1.04 | 0.57 | 4.3 | 0.50 | 0.08 | 0.41 |
第7表 サイレージの歩留り及び栄養価
サイレージ別 | 歩留(%) | モリソン(%) | ハンゾン | |||
原物 | 乾物 | DCP | TDN | DTP (%) |
IFEに 要する(kg) |
|
甜菜茎葉単味 | 87.6 | 87.6 | 1.3 | 10.1 | 0.7 | 8.0 |
薄荷稈混合 | 95.8 | 88.6 | 1.7 | 15.2 | 1.0 | 5.6 |