【普及奨励すべき事項】
笹地における牧草導入法とその効果について A-2 処理別による牧草導入地における乳牛の嗜好性と日中活動 北海道立農業試験場畜産部牧野研究室 |
Ⅰ 目的
前試験によって笹地に牧草の導入にあたり、機械力、追肥の利用程度によりその改良効果にも、それぞれ差を示したが、これに関連して当該牧草導入草地について、乳牛を用い処理別草地の採食、嗜好性、日中の採食動態などを比較調査し、放牧家畜による改良成果と問題点を明らかにする。
Ⅱ 試験方法
1957年8月19日~23日、2番草を用いて次のように行った。
乳牛の日中活動調査~8月20日~22日、 天候~平均25.3℃、 最高30.0℃、湿度78%、 供試乳牛~成牝搾乳牛4頭
日中活動調査~1日8時間放牧とし、4頭延5400分について、乳牛の動態を30秒間隔で採食、反芻、遊歩、休息に分け、さらに採食活動は完全耕起地区、簡易砕土両地区の各々5の肥
料処理区における採食区分調査。
Ⅲ 成績
1. 前掲の同一圃場の2番草地を用いて、乳牛の放牧嗜好度を調査したが、2番草についても1番草と同様、完全起耕、簡易砕土両地区ともに追肥を行った区が草量、草質とも良好な状
態が保たれ、採食率では対照、石灰両区は32~40%であるのに対し、追肥区は57~70%の高い嗜好採食が見られた。
第5表 処理別各区の乳牛採食率比較
処理 状態 |
対照区 | 石灰区 | 過石区 | 過石倍量区 | 完全区 | |||||
SP | SN | SP | SN | SP | SN | SP | SN | SP | SN | |
放牧前草量(kg) | 484 | 454 | 509 | 480 | 1215 | 1109 | 1552 | 1544 | 1295 | 1206 |
放牧後草量(kg) | 301 | 270 | 338 | 324 | 484 | 471 | 556 | 462 | 500 | 461 |
採食率(%) | 37.8 | 40.5 | 33.6 | 32.5 | 60.2 | 57.5 | 63.4 | 70.1 | 61.4 | 61.8 |
2. 放牧による植生変化についてみると、放牧前の植生は1番刈のそれと同様な傾向で、追肥区は概して荳科牧草多く、放牧乳牛は荳科牧草(レッドクローバー、ホワイトクローバー、
ラデノクローバー)、禾本科草(チモシー、オーチャードグラス、トールオートグラス、リードキャナリーグラス)を好食、ササおよび野草は残食した。
完全起耕地区では放牧前植生平均が荳科40.6、禾本科(プロムグラス)0.8、禾本科(チモシー、オーチャードほか)44.5、ササ12.8、野草1.3%であったのが、放牧後の植生平均はそれぞ
れ24.8、3.4、40.2、29.3、2.3%と変わった。このように家畜の放牧嗜好性から、笹地に牧草を導入しても、その後の放牧管理および施肥管理が悪ければ、再びササによって優占される
危険性のあることが考えられる。
3. 調査期間中の日中活動は、4頭3日延べ5400分中にあって、採食53.3%、反芻4.0%、休息38.5%および遊歩4.2%に消費されたが、休息時間の多い場合を占めたのは調査日の気象条件
によるものと考えられる。
第6表 乳牛の放牧採食日中活動
状態 | 延べ時間(分) | 割合(%) |
採食 | 2878.5 | 53.3 |
反芻 | 217.5 | 4.0 |
休息 | 2075.5 | 38.5 |
遊歩 | 228.5 | 4.2 |
計 | 5400.0 | 100.0 |
4. 採食時間中、各処理区において消費された時間をみると、対照、石灰区では6%、9%であるのに対し、施肥を行った区では、いずれも23.8%、39.3%、22.0%の高い採食活動を続けた。
第7表 乳牛の放牧採食中における各処理区において費やされた時間および割合
牛番号 処理 |
1号 | 2号 | 3号 | 4号 | 合計(分) | 平均(分) | 割合(%) |
対照区 | 108.0 | 48.5 | 58.0 | 44.5 | 259.0 | 64.7 | 9.0 |
石灰区 | 52.5 | 55.0 | 29.5 | 33.0 | 170.0 | 42.5 | 5.9 |
過石区 | 198.5 | 161.5 | 158.5 | 167.0 | 685.5 | 171.3 | 23.8 |
過石倍量区 | 292.0 | 343.5 | 245.0 | 250.0 | 1130.5 | 282.6 | 39.3 |
完全区 | 211.5 | 119.0 | 146.5 | 156.5 | 633.5 | 158.3 | 22.0 |
計 | 862.5 | 727.5 | 637.5 | 651.0 | 2878.5 | 100.0 |
5. 放牧前後の植生の栄養組成の変化については、両地区ともに放牧前に対し、放牧後の植生の成分は粗蛋白質75%、粗脂肪80%、に減少し、反対に粗繊維110%、粗灰分110%と増加
し、栄養価の少ない草種または草の部位が残食されたことを示している。
第8表 放牧前後の植生の栄養組成(無水物中%)
区分 | 放牧 | 処理区 | 固形量 | 一般組成 | |||||
粗蛋白質 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | 粗灰分 | |||||
完全耕起地区 | 放牧前 | 対照区 石灰区 過石区 過石倍量区 完全区 |
平均 | 24.6 | 16.4 | 5.1 | 40.0 | 27.7 | 10.8 |
放牧後 | 対照区 石灰区 過石区 過石倍量区 完全区 |
平均 | 38.4 | 12.5 | 4.2 | 40.6 | 31.0 | 11.7 | |
簡易砕土地区 | 放牧前 | 対照区 石灰区 過石区 過石倍量区 完全区 |
平均 | 24.8 | 16.0 | 5.1 | 39.6 | 28.8 | 10.5 |
放牧後 | 対照区 石灰区 過石区 過石倍量区 完全区 |
平均 | 34.1 | 12.6 | 4.2 | 41.4 | 30.4 | 11.4 |