【普及奨励すべき事項】

笹地における牧草導入法とその効果について
B クロレートソーダ、機械力及び追肥による笹地の改良効果

北海道立農業試験場畜産部牧野研究室

 

Ⅰ 目的
 機械力による種子床の造成、追肥により、かなり良好な草地の造成が可能なことが解明されたが、一面無肥料もしくは少量の肥料では、かなりのササ、野草の再生がみられ、家畜の放牧によって、大部分のササが残食されるなど、草地造成後におけるササの抑圧の問題が残された。この点から、1953年より草地造成の前処理としてクロレートソーダの撒布を行い、同時に機械力および追肥処理による牧草導入効果を明らかにする。

Ⅱ 試験方法
 1. 供試圃場~北農試畜産部用地クマイザサ植生地、   笹量~反当400~700kg
 2. 試験区分
     クロレートソーダ撒布地区------完全耕起区、簡易砕土区
     クロレートソーダ無撒布地区----完全耕起区、簡易砕土区
   クロレートソーダは坪当6匁(反当6.75kg)を1Lの水溶液として笹に葉面撒布(1955年5月18日第1回その後2~3回反覆)、撒布当年はそのままとし、笹の枯殺現象をみた。
   翌年5月耕起、砕土処理によって種子床造成、施肥、播種、覆土、鎮圧を行った。
   4区について下に示す処理を行った。

   第9表 肥料処理(反当貫)
区分 硫安 過石 石灰
窒素
溶成
燐肥
硫酸
加里
尿素
化成
対照区
硫、過区 2.6 5.6 2.0
石、燐区 2.6 5.2 2.0
尿化区 9.0

  各処理区は尿化区に使用せる日東草地用尿素化成肥料2号(N:P2O5:K2O=6:11:11)と同成分量とした。
  混播種子~レッドクローバー 3lbe、オーチャードグラス 3lbe、計6lbeを反当とし混播。

Ⅲ 成績
 1. クロレートソーダの笹に対する効果は極めて顕著で、散布後2~3日で葉脈に沿い、褐色しはじめ、4~5日で判然と色調の変化が区別される。
  約3週間で葉の枯死状態が確認せられ、4週間後から葉は下向を示す。葉面は萎縮し、降雪により葉にに落葉する。散布後3週間目以降は火入も容易となる。
  一般にミヤコザサ、クマイザサ、チシマザサに対しては、その植生密度により多少の差はあるが、坪当6~10匁が適当な撒布量であり、その散布時期も草地造成の施業時期を考慮し
  て、春(4~6月)、もしくは秋(8~10月)を選ぶのが効果的である。
 2. 牧草収量については、4つの整地処理法において、いずれも無肥区に対し、追肥区(N:P:K=6:11:11)は2.0~2.8倍の増収効果を示し、クロレートソーダ撒布による悪影響を認められ
  なかった。また完全耕起地区と簡易砕土地区と、同等の収量が期待される傾向を示した。このことは前の試験に比し、播種以降のローラー、鎮圧と、適切な追肥の結果によるものと解
  せられる。各処理地区における肥料の種類による顕著な収量差は認められなかった。なお、草地用尿素化成肥料は常用されている肥料に比し、劣らぬ好結果を示した。
   追肥に石灰窒素を用いた場合、禾本科草の1番草生時期に若干の被害を与えたが、遅効性であることによって2番草の生育に好影響のあることを示した。

  第10表 各処理別反当収量 (単位 kg)
区分 クロレート、耕起 クロレート、砕土 無撒布、耕起 無撒布、砕土 合計 合計
1956 1957 1956 1957 1956 1957 1956 1957 生草量 固形量
1st 1st 2nd 1st 1st 2nd 1st 1st 2nd 1st 1st 2nd
対照区 530 653 855 2038
(383)
875 490 650 2015
(326)
320 823 855 1998
(436)
651 830 650 2131
(493)
2045 409
硫、過区 1220 2108 1183 4511
(831)
1630 2033 1465 5128
(926)
980 1683 1183 3846
(804)
1441 2108 1465 5014
(941)
4625 871
石、燐区 1220 1382 1517 4119
(727)
1325 1462 1475 4262
(791)
1207 1767 1517 4491
(863)
1170 2267 1475 4912
(932)
4446 828
尿化区 1073 2370 1605 5048
(937)
1415 2000 1870 5285
(917)
975 2333 1605 4913
(902)
1315 2802 1858 5975
(1124)
5304 971
LSD 5% 404 1510 426 347 313 426 245 436 523 323 426 426 606 328
1% 612 2287 645 526 474 645 371 660 793 489 645 645 871 471

 3. ササの再生については、初年目ではクロレートソーダの効果が顕著で「クロレートソーダ耕起地区」ではササの再生は皆無、「クロレートソーダ砕土地区」の追肥区1%以下の混入程度
  であったのに対して、「クロレートソーダ無撒布区」では10~40%の混入を示した。
   2年目においても、クロレート散布区はササの再生が抑制されるが、無撒布区では3~17%の再生を示した。また試験地内のススキは「クロレート耕起地区」では完全に除かれたが「無
  撒布、砕土区」では3~40%の再生を示した。