【指導上の参考事項】

降水時における馬鈴薯疫病の防除について

北海道立農業試験場北見支場

 

Ⅰ 目的
 降水の直前或いは小雨中において現在一般に使用されている薬剤を散布した場合の防除効果を明らかにする。

Ⅱ 試験方法
 1区面積および区制   9平方米
 供用品種名        農林1号

  試験区別
  試験区別 摘要
1 無防除区 撒布方法     1) 3粍降水直前散布のものは薬液が乾燥しない中に散布
           2) 3粍降水中散布は葉面が既に濡れてから雨中で散布
             (降水の中間に散布を終わる)
           3) 10粍降水の直前は(1)と同様

降水の方法    1) 3粍の水を噴霧機の圧力がかからぬようにして5分間で散布
           2) 第1回目は園芸用如露にて10粍の水を約3分間に散布
             第2回目は噴霧器を使用して15分間で散布した。

散布時の天候   1) 第1回目早朝より散布、1時間前まで霧雨(0.4粍)
             散布中曇後晴
           2) 第2回目夜間より散布直前まで降雨(8.5粍)散布中は晴れ
             たり曇ったり、夜間より翌朝にわたり再び降雨(21.2粍)

散布薬剤量    粉剤は反当3kgの割
            薬剤は反当4斗の割

薬剤散布期日   第1回目  8月6日
            第2回目  8月27日

2 3粍降水直前に
4斗式石灰ボルドー液散布
3 3粍降水中に
4斗式石灰ボルドー液散布
4 10粍降水直前に
4斗式石灰ボルドー液散布
5 晴天時に(標準区)
4斗式石灰ボルドー液散布
6 3粍降水直前に
散粉ボルドー散布
7 3粍降水中に
散粉ボルドー散布
8 10粍降水直前に
散粉ボルドー散布
9 晴天時に(標準区)
散粉ボルドー散布
10 3粍降水直前に
馬鈴薯ボルドー散布
11 3粍降水中に
馬鈴薯ボルドー散布
12 10粍降水直前に
馬鈴薯ボルドー散布
13 晴天時に(標準区)
馬鈴薯ボルドー散布
 註  馬鈴薯は標準耕種法により栽培した     降水は如露によった

 

Ⅱ 成績(3ブロック平均)
    発病調査 収量比
(%)
澱粉価
初発日
(月日)
8月12日
(%)
8月17日
(%)
8月22日
(%)
8月27日
(%)
9月1日
(%)
9月6日
(%)
9月11日
(%)
枯凋期
(月日)
1
ブロック
2
ブロック
3
ブロック
平均
4斗式石灰
ボルドー液
無防除区 8.9 5.6 49.6 72.6 75.0 85.0 92.7 96.2 9.3 79 13.1 14.8 16.3 14.7
3粍降水直前散布 15 2.6 9.3 24.0 27.2 32.7 40.8 10.2 111 16.3 15.9 16.3 16.2
  〃   中 〃 15 7.7 15.8 21.7 26.8 38.8 46.2 10.2 103 17.1 15.6 17.0 16.6
10粍降水直前〃 16 2.1 12.3 32.0 37.3 46.8 53.8 9.30 100 16.3 16.0 15.2 15.8
晴天時     〃 16 3.5 10.0 13.5 16.3 27.3 33.0 10.2 100 16.0 15.8 15.9 15.9
散粉
ボルドー
無防除区 8.9 16 49.6 62.6 75.0 85.0 92.7 96.2 9.3 85 13.1 14.8 16.3 14.7
3粍降水直前散布 15 6.9 23.7 35.0 37.7 62.2 63.5 26 107 15.8 16.4 17.0 16.4
  〃   中 〃 14 10.6 28.5 37.8 45.7 60.5 68.2 24 96 17.7 17.4 16.5 17.2
10粍降水直前〃 15 7.5 17.3 39.7 49.0 60.7 67.2 26 104 15.2 16.5 15.8 15.8
晴天時     〃 15 8.0 15.3 26.3 35.8 53.2 63.2 27 100 13.5 16.1 17.0 15.5
馬鈴薯
ボルドー
無防除区 8.9 8.9 49.6 72.6 75.0 85.0 92.7 96.2 9.3 87 13.1 14.8 16.3 14.7
3粍降水直前散布 15 5.8 23.1 31.7 37.1 49.7 64.2 29 113 16.9 14.5 16.3 15.9
  〃   中 〃 15 11.6 240 33.3 39.3 57.0 66.0 28 123 17.1 14.4 16.9 16.1
10粍降水直前〃 15 3.3 19.6 42.8 47.8 51.7 59.5 29 109 16.0 14.8 17.4 16.1
晴天時     〃 15 5.3 21.6 18.8 24.2 34.7 51.3 29 100 16.0 14.1 16.7 15.6

 

 人為的に3粍および10粍の降水を行ってその直前および途中で薬剤散布を行って防除効果試験を行った成績を要約すれば次のとおりであった。

 1. 観察による薬剤の附着状態
   降水直前および降水中に散布した場合液剤では淡色となりかなり流亡したようにみられたが、乾燥後は標準区よりは淡いが、全面に薬剤が付着している状態が認められた。
   また粉剤は液状となって全面に拡散し乾燥後は液剤と同様の附着状態を示した。
 2. 疫病の防除効果について
   各区とも無病除区に比べて極めて顕著な差が認められ10粍降水直前に散布した4斗式石灰ボルドー液区は標準区に比べやや効果が劣ったが、その他のものはほとんど差が認めら
   れなかった。

 

Ⅳ 普及上の注意
 北見地方における7月下旬より8月中旬に至る降水日数は平年で15日(533粍)となっており近年は更に多い傾向を示している。そのため馬鈴薯疫病に対する薬剤防除は降雨による効果の低減を懸念してややもすれば適期を失し意外の減収を招く場合が少なくない。しかして人為的に降水を行って一般に使用されている3種の薬剤を使用して行った本試験成績より考察すれば小雨の直前あるいは雨中または普通の降雨直前であってもかなりの効果が期待されるので、降雨が連続することを予想される場合には以上のような条件下でも期を失せず防除を行うべきものと考えられる。