【普及奨励すべき事項】
焦性亜硫酸曹達添加サイレージの調製について A. 1956年における基礎試験 北海道農業試験場畜産部牧野研究室 |
(実験第1) SMS及び慣用添加物によるサイレージの調製試験
目的 : 慣用添加物による場合と、SMS添加物による場合とのサイレージ調製効果を明らかにするために、小型サイロを用い実験を行った。
1. 実験方法
(1) 原料牧草の状況
刈取圃場は、畜産部18号用地で、6月22日モーアを用い収穫したが、10a当(反当)2250kgであった。すなわち原料草はオーチャードグラスを主体としたもので、幾分開花後期のため、
原料としては若干刈遅れ気味であり、予乾を行わず運搬埋草した。
第3表 原料草の植生状況
草種 | 割合(%) | 生育時期 |
オーチャードグラス | 86.3 | 開花後期 |
赤クロバー | 6.3 | 開花期 |
白クロバー | 6.2 | 開花期 |
エゾノギシギシ | 1.2 | 出穂期 |
第4表 原料草の一般組成(原物中%)
草種 | 水分 | 粗蛋 白質 |
粗脂肪 | 可溶無 窒素物 |
粗繊維 | 粗灰分 |
オーチャードグラス | 76.2 | 2.3 | 0.9 | 12.9 | 6.2 | 1.5 |
赤クロバー | 80.8 | 3.6 | 0.9 | 9.2 | 4.0 | 1.5 |
白クロバー | 86.1 | 3.1 | 0.8 | 7.5 | 0.9 | 1.6 |
埋草時混合原料 | 74.1 | 3.0 | 0.9 | 13.3 | 6.9 | 1.8 |
(2) 供試添加物
添加物としてはSMSのほか、慣用の糖蜜混合飼料及びふすまを用いた。SMSは米国 Monsannto Chemical Co. 製品のもので、糖蜜混合飼料はサイレージ添加用として作られた全
購連製のもので、糖蜜45%サツフラワー粕15%、パーム粕20%、ビートパルプ10%、ふすま10%の混合のもの及び常用ふすまである。
(3) 埋草処理
原料は刈取後集草し、1時間後に運搬の上、サイレージカッターにて1.5cmに細切し、サイロに一定量あて秤量の上、該当添加物を均等に混合し、定人員と定時間による埋草作業
を行い、各サイロとも同一の条件になるよう努めた。
(4) 供試サイロ
大型試験用桶サイロを土中に埋めて使用したが、規格は直径95cm、高さ120cm、容積約1立方米(32.2立法尺)、容量300~500kgのものである。埋草にあたってはサイロ用ビニールを
用い、加重は平均85kgとし、92平方cm当(1平方尺)9.1kgの加重である。
取出し給与及び分析は埋草後90日後に行った。
(5) 添加物処理
供試サイロは8基で8処理を行ったが、第6表にしめしたように ①無処理、②ふすまの2,5,10%添加、③糖蜜混合飼料の2,5,10%添加、④SMSの0.4%添加とした。
2. 試験成績
(1) サイレージの品質
第6表 各添加物によるサイレージ品質(上中下各3点平均)
区分 | 生草屯当 添加量(kg) |
色火及 び香気 |
PH | 酸組成 | ||
総酸 | 不揮発酸 | 揮発酸 | ||||
無処理 | - |
暗褐黄色、酸臭乏しく刺激臭大 | 5.1 | 0.96 (100) |
0.46 (48) |
0.50 (52) |
糖蜜混合 | 20 (2%) |
褐黄緑色、甘酸、刺激臭 | 4.4 | 1.66 (100) |
0.86 (51) |
0.80 (49) |
糖蜜混合 | 50 (5%) |
褐黄色、甘酸 | 4.0 | 2.20 (100) |
1.30 (59) |
0.90 (41) |
糖蜜混合 | 100 (10%) |
淡黄緑色、甘酸良 | 4.1 | 2.29 (100) |
1.34 (59) |
0.95 (41) |
ふすま | 20 (2%) |
褐黄緑色、甘酸、少刺激臭 | 4.7 | 1.50 (100) |
0.60 (40) |
0.90 (60) |
ふすま | 50 (5%) |
褐黄緑色、甘酸、少刺激臭 | 4.6 | 1.77 (100) |
0.84 (47) |
0.93 (53) |
ふすま | 100 (10%) |
淡黄緑色、甘酸、アルコール醗酵臭 | 4.3 | 2.47 (100) |
1.51 (41) |
0.96 (39) |
SMS | 3.6 (0.4%) |
黄緑色、甘酸、良臭 | 4.5 | 1.14 (100) |
0.90 (79) |
0.24 (21) |
すなわち、慣用添加物は無処理に比較して、添加量の増加とともにPHが低下し、酸組成の改善が示された。しかし無処理ではPH5.1で総酸量に乏しく、また揮発酸が52%をも占め品質
は不良であった。両添加物とも5%の添加によってPH4.0~4.3に低下し、酸量は1.8~2.2%と増加し、安定した良品質のサイレージが得られた。
一面SMSサイレージは0.4%の添加によって、Phは4.5と若干高く、酸量は1.1%の比較的少量を示したが、サイレージはいずれの処理のものより明らかに緑度高く、かつ良好で軽快な酸
臭を有した。
(2) 栄養組成
第7表 各サイレージの一般組成(原物中%)*
区分 | 添加量(%) | 水分 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | 粗灰分 |
原料草 | 埋草時△ | 74.1±3.5 | 3.0±0.5 | 0.9±0.2 | 13.3 | 6.9±1.1 | 1.8±0.2 |
無処理 | - | 77.2 | 2.7 | 1.1 | 9.7 | 7.5 | 1.8 |
糖蜜混合 | 2 | 75.2 | 3.0 | 1.3 | 12.0 | 6.5 | 2.0 |
糖蜜混合 | 5 | 73.8 | 3.4 | 1.6 | 9.7 | 7.7 | 3.8 |
糖蜜混合 | 10 | 72.3 | 3.5 | 1.6 | 13.0 | 7.5 | 2.1 |
ふすま | 2 | 75.0 | 3.2 | 1.3 | 11.0 | 7.6 | 1.9 |
ふすま | 5 | 74.6 | 3.1 | 1.4 | 11.6 | 7.3 | 2.0 |
ふすま | 10 | 70.1 | 4.0 | 2.1 | 15.4 | 6.2 | 2.2 |
SMS | 0.4 | 75.1 | 3.3 | 1.4 | 11.4 | 6.5 | 2.2 |
糖蜜混合飼料、ふすまとも添加量の増加とともに、水分が減少し、サイレージの蛋白含量が高いことが示された。なお、SMSでは5%の慣用添加物を用いたサイレージと同様な蛋白含
量を示した。
第8表 各処理別サイレージの可消化成分(原物中%)
区分 | 水分 | DCP | TDN |
無処理 | 77.2 | 1.6 | 12.9 |
糖蜜5% | 73.8 | 2.0 | 15.0 |
ふすま5% | 74.6 | 1.9 | 15.6 |
SMS 0.4% | 75.1 | 2.0 | 15.1 |
(実験第2) SMSと慣用添加物によるサイレージの嗜好性
目的 : SMSサイレージと慣行法によるサイレージの嗜好性を緬羊による free choice法により比較検討した。
1. 実験方法
(1) 供試緬羊
畜産部で飼養中のコルデール種緬羊500頭中より年齢、体重、その他の条件類似の牝緬羊12頭を選定し供用した。体重39~45kg、平均42.2kgである。
(2) 試験期間
9月20日より5日間は予備期として各サイレージの混合物を給与して慣した上、その後の6日間を第1次試験期とした。さらにその後3日間を予備期とし、6日間を第2次試験期とした。
(3) 給与飼料
第1次及び第2次試験ともに4種類あてのサイレージの自由選択採食による嗜好調査を行った。すなわち1日当り4種類のサイレージを12kgあて計48kg、(朝夕2回に分けて給与)と日中
に2番刈牧乾草8kg、夕に2.5kgの配合飼料を供試羊に給与した。サイレージは羊舎の試験房内の四辺に各1箇あての同型の飼槽を準備し、一定時間に給与し、各サイレージごとに残
食量を測定した。
2. 実験成績
(1) 第1次試験 : 無添加サイレージ、ふすま及び糖蜜混合(各5%)添加サイレージ並びにSMSサイレージについて比較調査した。
第9表 各添加物別サイレージの嗜好性
区分 | 無添加 サイレージ |
糖蜜混合 5%サイレージ |
ふすま5% サイレージ |
SMS サイレージ |
総給与量(kg) | 72 | 72 | 72 | 72 |
採食率(%) | 65.0 | 76.6 | 71.6 | 78.8 |
1日平均採食量(kg) | 7.8 | 9.2 | 8.6 | 9.5 |
同上無処理を100とした% | (100) | (117) | (110) | (122) |
すなわち、各処理別サイレージの嗜好性では第1次において示されたごとく、採食率では無処理サイレージ65%、糖蜜混合サイレージ76.6%、ふすまサイレージ71.6%でSMSサイレージで
は78.8%と最良の嗜好性が示された。
また第2次においては、糖蜜の添加とともに増加の傾向が示され、無処理のサイレージに対して10%添加区は19%と優れた。これらの結果から、SMS添加サイレージは、慣用添加物5%
前後の添加によるサイレージとほぼ同様な給与効果があることが認められた。