【指導奨励事項】
身不知「なし」に対するポリエチレン袋詰の効果

Ⅰ 北海道立農業試験場種芸部成績(於江部乙リンゴ試験圃)
 (1) 試験目的
 昭和35年より昭和37年の3ヶ年にわたり「かし」に対してポリエチレン袋詰の貯蔵効果について試験した。
 (2) 試験方法
  (イ) 供試ポリエチレン
 厚さ0.03㎜、0.05㎜、0.07㎜
 昭和35年度はポリエチレンの厚さ 0.03㎜
 昭和36年度はポリエチレンの厚さ 0.03㎜及び0.05㎜
 昭和37年度はポリエチレンの厚さ 0.03㎜、0.05㎜及び0.07㎜
を用い内容は35年度45果入の大袋を用い、36年度及び37年度は10果及び70果前後入の小袋と大袋を用いた。成績は大袋入のものである。
  (ロ) 供試品種 身不知(一名千両)
  (ハ) 収穫及び袋詰月日
品種 年度
月日
昭和35年度 昭和36年度 昭和37年度
収穫月日 袋詰月日 収穫月日 袋詰月日 収穫月日 袋詰月日
身不知 10/20 11/1 10/16 10/17 10/16 10/17

 (3) 試験結果
  a 減量歩合
ポリエチレン
の袋の厚さ
\年度
\調査月日
昭和35年度 昭和36年度 昭和37年度
11/1 1/20 2/17 3/16 10/17 12/20 1/20 2/20 10/17 12/20 1/21
0.03㎜         100 97.8 99.5 99.4 100 99.6 99.6
0.05㎜ 100 99.1 98.0 97.1 100 99.8 99.5 99.5 100 99.5 99.5
0.07㎜                 100 99.7 99.6
無処理 100 93.0 92.9   100 94.5 94.3 96.9 100 95.2 93.5
 註 貯蔵時を100とした時の重量割合

  b 硬度及び検糖計示度
項目\年度
\調査月日
昭和35年度 昭和36年度 昭和37年度
11/1 1/20 2/17 3/15 10/17 12/20 1/20 2/20 10/17 12/20 1/21
硬度
(㎏)
0.03㎜ 6.2 4.6 4.2 4.0 6.5 4.4 4.2 4.3 5.7 5.5 5.1
0.05㎜         6.5 4.6 4.0 4.5 5.7 5.5 5.1
0.07㎜                 5.7 5.7 5.2
無処理 6.2 3.6 3.0   6.5 3.6 3.7 3.1 5.7 5.2 4.2
検糖計示度
(%)
0.03㎜         10.9 9.5 9.6 9.8 11.4 9.8 10.0
0.05㎜ 11.6 11.2 10.8 9.8 10.9 9.7 9.2 10.6 11.4 10.1 10.3
0.07㎜                 11.4 10.3 10.3
無処理 11.6 10.6 9.7   10.9 9.8 9.3 9.5 11.4 10.0 10.1
 註 硬度計の先端は直径8㎜を使用した。

  c 貯蔵病害
ポリエチレンの
厚さ\年度
昭和35年度 3/15 昭和36年度 2/20 昭和37年度 1/21
B.E 青カビ 健全 B.E 青カビ 健全 B.E 青カビ 健全
0.03㎜ 2.2 14.4 93.4 0 7.0 93.0 0 0 100
0.05㎜       0 4.4 95.6 0 0 100
0.07㎜             0 0 100
無処理 15.5 13.3 71.2 4.3 22.8 72.9 0 0 10

  d 果色その他
ポリエチレンの厚さ
\年度\調査月日
昭和35年度 昭和36年度 昭和37年度
1/20 2/17 3/15 12/20 1/20 2/20 12/20 1/21
0.03㎜ + + ± + + + ++ +~++
0.05㎜       ++ + + ++ +~++
0.07㎜             ++ ++
無処理 ± - - + ± - + ±
 註
  ++ 果色緑 甘味肉質極めて良
  + 果色黄 僅かに緑色呈す。肉質甘味良
  ± 果色黄 貯蔵限界、甘味良、肉質稍良
  - 果色黄 甘味良、肉質粉質化し、商品価値なし

Ⅱ 北海道農業試験場園芸研究室成績(於琴似)
 (1) 試験目的
 道立農試と同じ(試験成績は昭36年度のものとする)
 (2) 試験方法
  (イ) 供試ポリエチレン袋
   厚さ0.03㎜、0.05㎜、0.07㎜
   袋の大きさ 20×40㎝
  (ロ) 収穫日 10月16日
  (ハ) 詰め方とその後の処理
 果実は、採取後数日間野外に放冷、選別後、身不知梨果を4個宛袋に詰めその口を完全に加熱密封し、直ちに半地下軟石造りの普通貯蔵庫に収納し、翌春まで貯蔵した。なお貯蔵中の温度変化は第1表の通りである。
 表1 貯蔵中の温度変化
期間\
月\日
10 11 12 1 2 3 4 5
1~15 16~31 1~15 16~30 1~15 16~31 1~31 1~28 1~31 1~15 16~30 1~11
温度(℃) 13~9 10~9 10~6 6~4 5~2 2~0.5 0 -1~0 1~1.5 1.5~2.5 3~6 4~7
濁度 80~95% R.H

 (3) 試験結果
  a 重量及び硬度の変化
 貯蔵中の減量は第2表に示すとおり、りんごと同様に明らかに抑制された。
 表2 「身不知」貯蔵減量と硬度の変化
  減量 (参考 昭和37年度成績) 硬度(硬度計指度)
調査月日 10.19 12.4 2.8 4.2 10.5 12.6 1.8 10.20 12.7 2.4 4.2
無処理区 100.0 94.1 - - 100.0 97.3 95.1 19.6 18.0 - -
0.03㎜区 100.0 99.1 99.0 98.9 100.0 99.7 99.7 19.9 20.5 19.4
0.05㎜区 100.0 99.4 99.4 99.4 100.0 99.6 99.6 20.0 19.0 19.4
0.07㎜区 100.0 99.6 99.6 99.6 100.0 99.7 99.7 19.7 20.5 20.2

  b 貯蔵病害
 表3 「身不知」の貯蔵病害被害(参考 昭和37年度成績)
調査月日 10.19 12.4 2.8 4.2 10.5 12.6 1.8
無処理区 0.0 71.4 100.0 - 0.0 60.0 77.7
0.03㎜区 7.1 32.1 52.1 0.0 2.5
0.05㎜区 10.7 28.9 68.9 5.0 5.0
0.07㎜区 14.2 39.2 39.2 2.5 2.5

  c 糖分及びpHの変化
 表4 貯蔵「身不知」の糖分とpHの変化
  還元糖 % 非還元糖 % pH
分析月日 12.17 2.14 4.10 12.17 2.14 4.10 1.10 2.10 4.4
無処理区 6.01 - - 0.12 - - 5.05 - -
0.03㎜区 5.95 3.55 3.55 0.10 1.80 1.82 4.90 5.00 4.90
0.05㎜区 6.46 4.95 3.86 0.11 1.64 1.71 4.80 5.00 4.90
0.07㎜区 6.19 3.27 4.02 0.20 1.66 1.59 4.65 5.00 5.00

Ⅲ 結論と実施上の注意
 身不知に対するポリエチレン袋詰は次のような効果がある。
 1. 貯蔵中果実の減量を少くする。
 2. 果実硬度は、ポリエチレン袋詰は無処理に比べ高い。
 3. 果実検糖計示度は無処理に比べて、ポリエチレン袋詰が高い傾向を示した。
 4. 貯蔵病害の発生は袋詰が少い。
 5. 貯蔵未期に無処理果は、地色が黄ばんで肉質も粉質化し、食感は極めて悪かったが、ポリエチレン袋詰果は緑色をおび新鮮な感じで肉質よく、食味も良好であった。
 6. ポリエチレン袋詰果の安全な貯蔵限界は2月初旬から2月下旬である。
 7. ポリエチレン袋の厚さは0.05㎜を使用するが良い。
 8. 袋の大きさは、大袋、又は小袋とし、採収、袋詰、貯蔵などの条件に、万全を期することが必要であるが、札幌以南の如く、収穫期が比較的高温である地帯では大袋の使用は遅ける。