【指導奨励事項】
タマネギバエ防除試験成績
北海道立農試十勝支場、北見支場
空知支場、上川支場、病虫部
北海道農試病理昆虫部、畑作部

Ⅰ 指導方針
 昭和36年以降、実施したタマネギバエに対する各種薬剤については作条施用、茎葉散布、潅注、苗浸漬などの圃場試験は計33試験ならびに室内における殺虫試験とその供試された薬剤20数種に上り、このうちからタマネギバエ防除上の参考に供する。
 (1) 作条施用
 播種または移植前、作条にVC粉剤3%、10a当り9㎏(畦巾50㎝として)を施用する。
 (2) 茎葉散布
 BHC粉剤3%を10a当り3㎏、発生初期から7~10日おきに4~5回散布する。発生に応じて回数を増し、作条施と併用する。
 (3) 根際散布(灌注)
 播種前の作条施用または茎葉散布の併用によっても、なお被害の多い場合は、EPN乳剤1,500倍液を10a当200Lの割合で、ネギの根際に散布する。回数の発生に応じて適宜定める。
 (4) 被害株の処理
 被害株を放置すると発生源となるから、処分すること、処分方法としては、地中に深く埋めて、充分踏み固める方法が簡単である。
 (5) 使用薬剤(新規に使用される薬剤)
  1. VC粉剤(ECP粉剤)
 ジエチル・ジクロルフエニール・チオホスフエート3.0%
 一種の有機りん剤で当初接触性殺線虫剤として試験されたが実用化されていない。
 劇物 270㎎/㎏(252~289㎎/㎏)

試験成績
 作条施用
  タマネギ
   試験区別
1 ヘプタクロール 2.5% 粉剤 6㎏
2 ヘプタクロール 2.5% 粉剤 9㎏
3 アルドリン 2.6% 粉剤 6㎏
4 アルドリン 2.6% 粉剤 9㎏
5 VC-13 3.0% 粉剤 6㎏
6 VC-13 3.0% 粉剤 9㎏
7 VC-13 3.0% 粉剤 12㎏
8 ダイアジノン 1%(十勝) 粉剤 9㎏ 2%(北見) 4.5㎏ 2%(空知) 3.0㎏
9 ダイアジノン 1%(十勝) 粉剤 12㎏ 2%(北見) 6.0㎏ 2%(空知) 6.0㎏
10 ペスタン 2.0% 粉剤 6㎏
11 ペスタン 2.0% 粉剤 9㎏
12 ペスタン 2.0% 粉剤 12㎏
13 無処理

   試験条件
項目 十勝 空知 上川 北見 本場
茅室 滝川 砂川 永山 訓子府 札幌
移植月日 6月8日 5月12日 5月18日 5月2日 5月31日 5月1日
品種 札幌黄 札幌黄 札幌黄 札幌黄 札幌黄 札幌黄
収穫 9月14日 9月24日 9月21日 9月26日 10月2日 9月22日
栽植密度 50㎝×10㎝ 50㎝×10㎝ 50㎝×10㎝ 50㎝ 30㎝×10㎝ 45㎝
1区株数 180~191 150(調査株数) 150(調査株数) - 114(調査株数) 畦長さ1mにつき

   試験結果
               被害率
薬剤 十勝 空知 上川 北見 本場
茅室 滝川 砂川 永山 訓子府 札幌
ヘプタクロール 96.9 48.4 79.1 43.3 98.0 2.1
86.3 49.8 79.7 41.9 99.4 4.8
アルドリン 74.5 54.7 73.4 38.4 96.2 2.0
79.8 46.7 56.6 33.2 90.6 3.4
VC-13 14.5 38.1 54.6 12.2 24.3 1.2
13.8 14.5 36.1 12.1 23.9 0.5
12.7 22.9 42.5 - - -
ダイアジノン 17.7 - 55.3 - 33.3 -
19.0 - 57.4 - 31.3 -
ペスタン 33.1 - 43.5 - 39.2 -
23.0 - 34.9 - 28.7 -
19.2 - 32.1 - 30.4 -
無処理 83.9 50.3 94.9 37.0 91.2 2.4

  ナガネギ
   試験区別
1 ヘプタクロール 2.5% 粉剤 9㎏
2 アルドリン 4.0% 粉剤 9㎏
3 VC-13 3.0% 粉剤 6㎏
4 VC-13 3.0% 粉剤 9㎏
5 ダイアジノン 1.0% 粉剤 9㎏
6 ペスタン 2.0% 粉剤 6㎏
7 ペスタン 2.0% 粉剤 9㎏
8 EPN 1.5% 粉剤 6㎏
9 EPN 1.5% 粉剤 9㎏
10 無処理

   試験条件
項目 十勝(芽室) 北見
(訓子府)
(Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)
播種月日 - 5月16日 5月16日 5月11日
移植月日 8月11日 - - -
品種 - - - 石倉一本
収穫 10月24日 9月17日 8月11日 8月30日(調査)
栽培密度 50㎝ 50㎝ 50㎝ 50㎝×15㎝
調査株数 480 1,400内外 1,100内外 548×692

   試験結果
          被害率
薬剤 十勝(芽室) 北見
(訓子府)
(Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)
ヘプタクロール 77.8 - - 63.8
アルドリン -    - 50.8
VC-13 - 25.7 - -
VC-13 7.0 15.1 - 15.2
ダイアジノン 10.2 - - -
ペスタン - 73.6 - -
ペスタン 7.3 70.0 - 30.9
EPN - - 18.2 -
EPN - - 12.6 29.9
無処理 87.6 84.1 46.7 48.4

 根際散布(灌注)
  ナガネギ
   試験区別
1 EPN 45% 乳剤 1,500倍 100L
2 EPN 45% 乳剤 1,500倍 200L
3 アルドリン 40% 乳剤 500倍 100L
4 アルドリン 40% 乳剤 500倍 200L
5 デイルドリン 15.7 乳剤 500倍 100L
6 デイルドリン 15.7 乳剤 500倍 200L
7 無処理

   試験条件
項目 十勝
直播 移植
播種月日 5月16日 -
移植月日 - 6月8日
品種 加賀一本太葱 加賀一本太葱
調査株数 - 296 内外
散布月日 6月12、28日
7月13、28日
6月11、27日
7月12、27日
調査月日 8月7日 8月8日

   試験結果
  直播 移植
株数 被害率 被害率 株数 重量
(g)
EPN 810 37.3 36.4 126 3,239
EPN 1,185 12.7 25.4 147 3,954
アルドリン 750 65.5 - - -
アルドリン 755 74.1 - - -
デイルドリン - - 90.3 19 572
デイルドリン - - 95.8 8 209
無処理 737 63.9 91.5 17 428

 参考資料
  1. 作条施用としてダイアジノン、ペスタン粉剤も有効である、使用法はVC粉剤に準ずる。
  2. EPN乳剤1,500倍液20~30分苗浸漬も有効であるが、薬害、その他重ねて検討する要がある。
  3. ペスタン乳剤1,500倍液10分苗浸漬、同粉剤2%作条施用の併用も有効であるが、さらに検討する要がある。
  4. 使用薬剤(新規)
   ダイアジノン粉剤 (ダイアジノン剤) 低毒性有機りん殺虫剤 イソプロピル メチルピリミジル ジエチルチオホスフエイト 2% 劇物 LD50 54㎎/㎏(48~60㎎/㎏)
   ペスタン粉剤(メカルバム剤) 低毒性の有機りん系殺虫剤 ペスタン乳剤 エチルN-(ジエチルジチオホスホリールアセチル)-Nメチルカーベメート 2%(粉) 35%(乳) 劇物 LD50 92㎎/㎏
 使用上の注意
  1. 低毒性燐剤であるが、使用時にはマスクをして下さい。また作業後は洗顔、裸出皮膚面をよく洗うこと。
  2. 作条施用とは播き溝施用のことです、この点は誤解なきよう使用して下さい。作条施用9㎏とはつぎのことを考慮して計算して下さい。
 畦間50㎝株間15㎝を基準と考えて10a当り9㎏を作条に散布する。なお、栽植様式は地帯によって差異があるので作条投下薬量に多少ができる。10a当り9㎏に換算すると畦長10m当り、施用量は9㎏では45㎏(6㎏-30g)となるから総畦長から薬量を算出する。(これは土壌施用(作条)について適用される。)また、全面に散布するときは作条の約3~4倍25~30㎏は必要と考える。