【指導奨励事項】
北海道における改良牧野の造成利用について
農林省北海道農業試験場畜産部
農林省十勝種畜牧場

 本試験は自然牧野、集約牧野との対比における改良牧野の性格を明らかにし、造成方法、牧養力及びその経済性などの諸点について、基本的な技術を究明したものである。
 本試験によれば、改良牧野の造成費は集約牧野の1/2程度であっても技術的には、現在の低い牧養力を2~3倍以上に向上させ、育成牛または肉牛用草地として改良することの可能性と経済性が立証された。また改良牧野は植生、生産性、牧養力及び造成経費の面からも自然牧野と集約牧野の中間的な性格を有しており、今後の草地開発の面において重要な位置を占むるものと考えられ、当面の自然牧野での牧養力の向上を図りつつ利用を行い、ついで集約牧野に発展移行させる段階としての役割をも有しているものである。
 北海道における草地開発計画は第二次北海道綜合開発計画によれば、実質的に家畜の増殖計画に基き約30万ヘクタールの草地が昭和45年までに造成されようとしている。
 事業の体系は小、中、大規模草地改良事業に分けられ、うち、中、大規模の公共有草地が、公共事業として推進されるものであり、小規模草地は主に個人有の乳牛用草地の性格を持つもので、機械化方式による集約草地の造成がなされるものである。中、大規模草地は公共有草地で、現在耕地内で飼養されている育成牛、牝仔牛、肉牛なども、これに移し、冬季間の飼養を含めた考えのもとに、育成基地として性格を持ち、放牧飼養を主体とするものである。また草地開発の現況は平坦地より次第に山麓、丘陵、高原に発展しつつあるから、画一的な抜根、起土、整地を行う集約牧野造成の期待できない面が、かなり多いのであるが、このような条件下にあっても改良牧野の基本的な造成技術の応用範囲は広いものである。
 改良牧野の造成利用についての今後残された研究課題も甚だしく少ないが、現在北海道地域における緊要な草地事情からすると、今回公表の試験成績からかんがみ、基本的な技術は立証されたので、その応用範囲も広いから、特に造成後の合理的な集約管理によって、維持改善の向上を図ることが必要である。

指導要網
 1. 牧野改良上の基本的調査
 改良牧野は、今後かなりの大面積に実施される場合が多く、しかも相当量の改良資料、牧草種子、機械力などを必要とするので、その実施に先立ち、改良対象地の十分な調査資料(土壌、植生、樹林、用水、利用土地保全)に基づく、周到な計画立案が必要である。
  (1) 牧野利用の全体計画
 地形、植生、土壌、樹林、用水など牧野環境に適応する利用の立案をし、このために必要な牧道、牧柵、牧野林の計画も併せ行う。
  (2) 牧野の土壌及び気象条件
 造成予定地の植生歴、土壌及び気象条件などから、適応する草種、施肥の経済性などについて、パイロット圃場による予備調査が必要である。
  (3) 機械力の運行
 牧野の土壌、地形、障碍物の程度などから、予め機械力の運行の適応性、能力、所要経費など適正の把握が必要である。
  (4) 造成後の利用管理
 造成後における適切な追肥管理、放牧管理など牧野利用と家畜の生産計画に見合う管理方法の考慮が必要である。
 2. 障碍物除去
 放牧を主とする改良牧野においては、集約牧野の場合と異なって、全面的な抜根や除去作業を行う必要はない。例えば立木、礫石その他の障碍物は適当な機械力の運行に差し支えない程度に最少限にとどめる。樹林については、牧野の全体利用から、予め水源涵養林、防風、防霧林、待避または被蔭林、土壌保安林、柵用林などを計画的に残すなり、植栽林についても考慮する必要がある。
 3. 灌木、ササまたは野草の処理
 ハギ、ササなどの雑灌木、野草類は、ロータリーカッター、ハンドモーアのごとき簡易な機械力による部分刈掛いと火入れによって容易に処理ができる。
 放牧地にあっては、前年に重放牧を行って種子床のクリーニングを計ったり、不良野草の攪乱を行うのも効果的であるが、放牧の行われていない密生のササ地では、火入れをするのが処理として望ましい。
 4. 種子床の造成
 火入れもしくは重放牧後は、20~30PP程度のトラクター牽引デスクハロー(花型)の2~3回掛を行って種子床を造成する。この場合ロータベータの利用もできる。
 5. 牧草種子
 改良牧野に用いる草種は、土壌、気象条件の考慮のほかに、粗い種子床や比較的簡易な管理下においても適応性を有し、しかも永年型草種の混播などを考慮する必要がある。これらは予備調査の結果にもとづいて行う。播種量は、一般耕地における場合よりも稍々多目に用いることが必要で、根瘤菌の利用も考えるべきである。
 6. 施肥
 造成前の土壌調査によって、土壌の特質を把握し、火入れ後デスキング前に酸性土壌では100~200kg/10a前後の炭カル散布を行う。施用量は予めpH調査によって行う。播種時期には土壌の化学性などによって適切な施肥が必要である。草地化成肥料では20kg/10a程度は必要であり、とくに燐酸含量の低い土壌では過燐酸石灰、熔性燐肥の施用も考えるべきである。施肥をともなわない播種は無意味であって、原植生より不良な草生状態になる場合が多い。
 7. 播種
 播種時期は、北海道地域全般からみて、春季5月から遅くとも夏季8月上旬までの期間に行うことが大切である。牧草種子と肥料に若干の細土を混合し、播種する。播種後はレバーハローで覆土を行った後ローラーまたはカルチパッカーで鎮圧を行う。とくにデスキングでつくった粗い種子床では、牧草の活着と整一な発芽のために鎮圧の効果が大きい。8月下旬以降の播種は牧草の活着が十分な安全を期待し得ないので、むしろ次年の春季に行うよう注意を要する。
 8. 播種後の管理
 春播(5~6月)のものは、播種後30~40日で牧草萌芽生育とともに、かなりの野草が混生育し牧草と競合が生ずる。この場合野草を抑圧するために掃除刈か放牧を行うことが必要である。掃除刈を行った草はサイレージに利用することができる。また放牧の場合には、牧草が10~15㎝の草丈の時分に行うべきである。
 野草抑圧の掃除刈や放牧の遅れは、牧草の生育に大きな悪影響をもたらすのである。とくにササ地においては、再生後の若い葉を、放牧によって採食させ、牧草の生育を促進させることが必要である。
 9. 2年目よりの管理
 改良牧野としての数年間は、ha当年間12トンの草生と50%以上の牧草率を期待する場合は、土壌条件によっても異なるが、毎年草地化成肥料として20~30kg/10aの追肥が必要である。
 10. 放牧利用
 改良牧野では、気象条件や土壌条件などにより差異は示されるが、前述の処理を行って造成される場合には、草生育の期間は5月中旬より9月上旬~10月上旬で、年間20~30トン/haの生産を期待することができる。
 その草の季節的生産性も、自然牧野のそれに比較して大幅に改善されるものである。一般には年平均、ha当500㎏体重の肉牛では250頭前後の放牧が可能であり、草生に応じた輪換放牧によって、補助飼料なしでも1日1頭当0.4㎏の増体が期待しうる。
 放牧地は牧柵によって数牧区に区分した輪換と草生産の季節性に応じた放牧量の調整が必要である。
Ⅰ 導入草種適応性試験(第1試験)
 1. 試験目的
 自然草地に牧草を導入し改良をはかる場合には、輪作草地造成と異なって、種々な条件を考慮しなければならない。第1には整地、即ち播種床(Seed bed)造成の問題があり、これには土壌構造、地形、障害物、及び経費等により耕起(トラクターPlow)後に十分な砕土(トラクター Disk)を行って準備する場合と、火入れ直後に砕土のみですませる簡易な造成法が考えられる。
 第2には肥培管理の問題であり、造成後に十分な肥培が行われる場合と、わずかな追肥より行えない場合とがある。
 第3には播種草種である。肥沃地での集約的な管理に適応性を示す草種と痩草地での比較的粗放な管理にも耐える草種とが指摘される。
 これらの点から、改良牧野造成に際して草種と種子床及び肥培管理の相違が、その後の草生改良効果に及ぼす影響を明らかにしようとした。
 造成後は、これらの組合せによって導入草種と原植生の競合及び生産性を究明するとともに、最終的には家畜に対する嗜好性調査を試みた。
 2. 試験方法
  (1) 試験処理
   A 整地処理 完全耕起砕土区(P)と簡易砕土区(D)とした。
 完全耕起砕土区(P)=障碍物除去→Tractorplow→Tractor disk 3回
 簡易砕土区(D)=障碍物除去→火入れ→Tractor disk 4回
   B 肥料処理 両整地区を無肥区(N)、中肥区(M)と多肥区(H)に3区分とした。
 無肥区(N)=無肥料
 中肥区(M)=毎春化成肥料 24kg/10a
 多肥区(H)=毎春化成肥料 48kg/10a
 但し、イネ科草には日東草地化成3号(N:P2O5:K2O=8:11:8)を用い。マメ科草には1号の4:12:10を用いた。
   C 草種 北海道の牧野改良に広く用いられている草種を原則とし、更に試験地の環境を考慮して8草種を用いた。
使用草種 播種量(kg/10a)
Orchard Grass 1.59
Timothy 0.91
M.Brome Grass 2.27
Meadow Fescue 1.59
Perenial R.Grass 1.36
Red Clover 1.13
Alsike Clover 0.45
Ladino Clover 0.45

  (2) 試験区分
 試験地は対照地区及びPassを含め0.79haとした。1plotの面積は0.5a(5.5×9.0m)で2整地処理×3肥料処理×8草種×2反覆=96plotsである。
 その配置図に示した。
 第1図  試験処理区の配置

 3. 試験成績の要約
 3ヵ年間の成績では肥料に対して反応性の高い(Responseの良い)草種としては、アカクロバー>ラジノクロバー>アルサイククロバー>チモシー>オヤードグラス等であり、これに反してあまり良くないものにメドフエスク<ペレニヤルライグラス<ブロームグラス等が示された。また比較的粗い整地で適応性を有するものにアカクロバー>アルサイククロバー>ラジノクロバー>ドフエスク>オーチヤードグラス>チモシーがあり、適応性の低いものには、ブロームグラスとペレニヤルライグラス等が挙げられた。これらの点からも混播の有利性が認められた。また、改良牧野の達成目標をha当り年間12トンの生草量で牧草率を50%と想定するならば、イネ科牧草を主体とした時の耕起砕土の種子床では草地化成肥料(8:11:8)を毎年30~35㎏の追肥によって期待され、マメ科牧草を主体とする時には20㎏前後の追肥で達成しうることが示された。又牧草の定着を考えた種子床の造成法においても耕起は必ずしも必須条件ではなく、火入、砕土によっても十分期待しうることが認められた。4年目の2番草地で肉牛の採食活動より処理別草地の評価を行った。採食利用率でも48kg/10aの追肥地区は24kg/10aの地区よりも高く、無肥区の採食率は最低であった。また採食活動でも耕起砕土地区における全採食時間に対し、無肥区では15.5%にとどまったが、24kg/10a追肥区では38.9%、48kg/10aの区では45.6%と追肥の効果が明かに示された。また放牧牛の喫食活動も利用率や、採食活動と興味のある関連が示された。即ち処理別草地の家畜による評価では採食利用率、採食活動ともに有効な手段であり、草種及び追肥との関連において今後の草地改良上に興味深い方向が示された。
 土壌の化学性の調査結果では、いずれの区においても、有効成分の減耗が認められた。これらのことから改良牧野は比較的安価な経費で、草生改良の効果が認められるが、その後は合理的な追肥管理とか、数年後には高度集約牧野への推進を計るなどのことが必要であろう。経済性の検討の結果では、耕起、砕土地区の3ヵ年の造成維持経費は無肥区では10a当り4,700円補助を受けた時には2,600円、24kg/10aの区では6,300円と4,000円、48kg/10aの区では7,800と5,300円であった。生草1㎏の生産費はイネ科5種の平均では無肥区2.91円、24kg/10a区1.49円で48kg/10aの区では1.32円と追肥によって造成経費は高くなるが、草生の著しい改善によって経済的草生産が期待しうることが示され、特に肥料を伴はない牧草の導入は無意味であるか、むしろ不経済であることが示された。また補助を受けた時にはさらに30%生産費が軽減されることが知られた。又DCPの1㎏生産費は耕起、砕土地区のチモシーでは無肥区は74.4円、24kg/10a区72.8円、48kg/10a区では52.6円となり、ラジノクロバーでは各々97.8円、37.6円、32.8円と生草生産費と同じような傾向であった。
 DCPの生産費も補助を受けた時には30%近く減少した。現在では、市販される配合飼料のDCP1㎏が200円~250円に比較するならば、合理的な草地改良によって1/4~1/5の経費で供給しうることが示された。
 即ち、生草やDCPの生産費からみても、今後における改良牧野のありかたも示されていると云えよう。
 4. 主なる試験成績の概要
  (1) 生草収量と植生
 第1図  3ヵ年間平均処理別草種別植生状況(その1)

 第2図  種子床別、肥料別、科別平均植生

 (その2)

 第1表  3ヵ年平均、種子床別、肥料別、科別の平均植生
種子床 肥料 草種
(科別)
牧量(3ヵ年平均) 牧草率
(%)
10a当生草
(㎏)
N区を100
とした比較
P区を
100として
Plow N
(0)
Grasses
Legumes
535
617
100
100
100
100
39.7
39.9
M
(24㎏)
G
L
1,413
2,328
264
377
100
100
68.0
78.5
H
(48㎏)
G
L
1,959
3,766
366
610
100
100
85.8
84.5
Disk N
(0)
G
L
861
852
100
100
161
138
10.6
8.4
M
(24㎏)
G
L
1,427
2,323
166
273
101
100
80.6
55.7
H
(48㎏)
G
L
1,932
3,591
224
421
99
95
49.9
74.0

 第3図  3ヵ年平均整地、肥料及び禾別植生状況

  (2) 試験処理による土壌の理、化学性の土壌状況
 第2表  試験処理後の土壌状況
区分 層序 実容積(100cc中) 土壌
硬度
(山中式)
団粒
係数
(%)
pH
(KCl)
pH
(H2O)
Humus
(%)
CaO
(㎎/
100g)
K2O
(㎎/
100g)
P2O5
(㎎/
100g)
NH4-N
(㎎/
100g)

(cc)
空気
(cc)

(cc)
土壌
重量
(g)


(P)
チモシー 第1層 28.05 21.85 50.10 70.1 14.0 21.5 5.2 6.2 6.59 387.0 7.4 1.28 0.215
第2層 22.00 22.10 55.90 62.2 16.0 29.0 5.2 6.0 5.29 315.4 10.4 0.45 0.350
第3層 23.05 25.10 51.80 72.3 16.5 21.5 5.3 6.1 3.99 305.6 9.6 0.45 0.310
レッドク
ローバー
第1層 22.50 21.10 56.40 61.4 9.0 21.5 5.5 6.2 6.68 336.8 8.9 0.45 0.285
第2層 20.20 25.30 54.50 61.80 12.50 26.2 5.2 5.8 6.50 369.8 7.0 0.44 0.330
第3層 18.70 32.20 49.10 58.9 16.0 22.2 5.4 5.9 3.34 239.1 10.4 0.68 0.015


(D)
チモシー 第1層 24.30 30.30 45.40 58.4 12.0 25.5 5.3 6.1 9.88 386.8 12.3 0.45 0.500
第2層 23.00 22.10 54.20 56.1 11.5 21.5 4.7 5.6 8.21 286.3 5.7 0.98 0.145
第3層 22.95 22.15 54.90 58.0 14.0 22.5 5.0 5.8 4.73 276.1 5.7 0.00 0.130
レッドク
ローバー
第1層 24.90 19.30 55.80 60.4 7.0 25.2 5.4 5.9 8.35 359.2 7.0 0.68 0.300
第2層 22.80 21.90 55.30 56.1 9.5 25.7 4.7 5.5 8.77 300.6 5.4 0.45 0.198
第3層 24.00 22.10 53.90 64.6 14.0 22.3 5.0 5.9 3.43 288.3 4.8 0.00 0.280
試験開始前
(原土)
第1層 28.30 32.10 39.60 62.2 14.0 32.4 5.8 6.6 10.3 507.9 16.5 6.75 0.368
第2層 26.70 32.00 41.30 60.7 16.0 20.1 5.0 6.3 7.9 438.5 13.6 6.00 0.125
第3層 30.10 33.50 36.40 66.7 16.5 21.6 5.0 6.3 9.6 418.4 11.8 7.25 0.230
 註
  (1) 帯広畜産大学土壌学研究室
  (2) P.D両区とも中肥区 (M)の分析成績である
  (3) 耕起区(P)の第1層、第2層の層の厚さは原土区(第1層0~5㎝)、(第2層5~8㎝)、(第3層8~15㎝)の場合と多少の開きはある。
  (4) CaO、K2O、P2O5はモルガン氏法による

  (3) 経済性の検討
 第3表  造成草地別の3ヵ年の造成維持経費(10a当り)
区分 初年目 覆土
沈圧費
2~3
年目
肥料費
施肥費 3ヵ年合計
造成維持費
障害物
除去費
起土費 砕土費 種子費 肥料費
補助
差引
総経費 補助
差引
炭カル  
耕起区
(P)
無肥(N) 2,000 1,000 500 500 75 0 4,075 2,038 500 0 100 4,675 2,638
中肥(M) 2,000 1,000 500 500 75 480 4,555 2,278 500 960 300 6,315 4,038
多肥(H) 2,000 1,000 500 500 75 960 5,065 2,533 500 1,920 300 7,785 5,253
砕土区
(D)
無肥(N) 2,000 0 750 500 75 0 3,325 1,663 500 0 100 3,925 2,263
中肥(M) 2,000 0 750 500 75 480 3,805 1,903 500 960 300 5,565 3,663
多肥(H) 2,000 0 750 500 75 960 4,285 2,143 500 1,920 300 7,005 4,863
 ※ 補助は50%とし、造成年時に障碍物除去、起土、砕土、種子及び肥料に対して行った。

 第4表  造成維持費概算(10a/円)
区分 3ヵ年合計
造成維持費
(円)
補助を受けたとき
(円)
耕起区(P) 無肥 4,700 2,600
中肥 6,300 4,000
多肥 7,800 5,300
砕土区(D) 無肥 4,000 2,300
中肥 5,600 3,700
多肥 7,000 4,900

 第5表  草種別、種子床及び肥料別3ヵ年間の生草及びDCP生産費
区分 3ヵ年
造成
維持
経費
(10a
/円)
Timothy Ladinoclover 全草種平均
3年間
生草量
(㎏)
生草
1㎏
当り
(円)
3ヵ年
間DC
P量
(㎏)
DCP
1㎏
当り
(円)
3年間
生草量
(㎏)
生草
1㎏
当り
(円)
3ヵ年
間DC
P量
(㎏)
DCP
1㎏
当り
(円)
禾本科草
5種平均
3ヵ年収量
(㎏)
生草
1㎏
当り
(円)
豆科草3
種平均3
ヵ年収量
(㎏)
生草
1㎏
当り
(円)
*(A)



(P)
無肥(N) 4,675 **(37)
2,452
1.91 62.8 74.4 **(32)
1,839
2.54 47.8 97.8 **(40)
1,605
2.91 **(40)
1,851
2.53
中肥(M) 6,315 (77)
4,672
1.45 86.7 72.8 (83)
7,868
0.80 167.8 37.6 (68)
4,239
1.49 (79)
6,984
0.90
多肥(H) 7,785 (90)
7,617
1.02 148.0 52.6 (88)
11,217
0.69 237.6 32.8 (86)
5,877
1.32 (85)
8,298
0.94



(D)
無肥(N) 3,925 (13)
3,083
1.27 74.2 52.9 (6)
2,559
1.53 58.4 67.2 (11)
2,583
1.52 (8)
2,556
1.54
中肥(M) 5,565 (57)
4,043
1.38 84.3 66.0 (49)
7,521
0.74 159.0 35.0 (41)
4,281
1.30 (56)
6,969
0.80
多肥(H) 7,005 (62)
5,982
1.17 104.8 66.8 (73)
10,578
0.66 226.2 31.0 (50)
5,796
1.21 (74)
10,773
0.65
*(B)



(P)
無肥(N) 2,638 2,452 1.08 62.8 42.0 1,839 1.43 47.8 55.2 1,605 1.64 1,851 1.43
中肥(M) 4,038 4,672 0.86 86.7 46.6 7,868 0.51 167.8 24.1 4,239 0.95 6,984 0.58
多肥(H) 5,253 7,617 0.69 148.0 35.5 11,217 0.47 237.6 22.1 5,877 0.89 8,298 0.63


無肥(N) 2,263 3,083 0.73 74.2 30.4 2,559 0.88 58.4 38.8 2,583 0.88 2,556 0.89
中肥(M) 3,663 4,043 0.91 84.3 43.5 7,521 0.49 159.0 23.0 4,281 0.86 6,969 0.53
多肥(H) 4,863 5,982 0.81 104.8 46.4 10,578 0.46 226.2 21.5 5,796 0.84 10,773 0.45
 *(A) 補助を受けなかった場合 **( )内は牧草率
 *(B) 補助を受けなかった場合

 第6表  生草、DCP生産費と割合
区分 Timothy Ladino clover 禾本科草
5種平均
豆科草
3種平均
生草 DCP 生草 DCP 生草 生草
100㎏
生産費
(円)
割合 1㎏
生産費
(円)
割合 100㎏
生産費
(円)
割合 1㎏
生産費
(円)
割合 100㎏
生産費
(円)
割合 100㎏
生産費
(円)
割合
(A)










(P)
無肥 200 100 74 100 250 100 98 100 290 100 250 100
中肥 140 71 73 98 80 31 38 35 150 51 90 36
多肥 100 53 53 71 70 27 33 38 130 45 90 37



(D)
無肥 130 66 53 71 150 60 67 69 150 52 150 61
中肥 140 72 66 89 70 29 35 36 130 45 80 32
多肥 120 61 67 90 70 26 31 32 120 42 70 26
(B)









(P)
無肥 110 100 42 100 140 100 55 100 160 100 140 100
中肥 90 80 47 111 50 36 24 44 100 58 60 41
多肥 70 64 36 85 50 33 22 40 90 54 60 44



(D)
無肥 70 68 30 72 90 62 39 70 90 54 90 62
中肥 90 84 44 104 50 34 23 42 90 52 50 37
多肥 80 75 46 110 50 32 22 39 80 51 50 31

Ⅱ 自然牧野の改良試験(第2試験)
 1. 試験目的
 自然牧野の草生を改善し、牧養力の向上をはかるための手段には種々方途があるが、第1段階として現在の草生を維持するための刈取、採草及び放牧をする方法と、第2段階としては漸次少ない経費と労力によって優良草の導入をはかりながら牧養力の向上を行う場合がある。第3段階としては自然草地の立地条件を充分考慮して適合する種子床、適応草種の選定組合せを行い、合理的な追肥管理をして積極的な優良草の導入をはかる等の方法がある。
 現在、本那では農政的に草地造成事業は改良牧野、高度集約牧野という形で行われているが、これらに対する技術体系は充分ではない。これらの点からいわゆる改良牧野の造基準に基づく改良試験を行い、自然牧野、高度集約牧野との対比により改良牧野の維持、利用の限界を知り、その方策と経済性を明らかにしようとした。さらに試験終了年次には、実際に肉牛の放牧を行って、改良効果の判定の一助とした。
 2. 試験方法
  (1) 試験処理
 処理としては、自然牧野(対照A区)、改良牧野の1(少量追肥のみB区)、改良牧野の2(追肥と追播C区)及び高度集約牧野(起上、砕土、施肥、播種D区)とした。その大要は第1表に示した。
 第1表  試験処理(1959) 


区名 区内
整理
4月
25日
掃除刈
4月
26日
火入れ
4月
29日
石灰
撒布
5月
8日
トラクター
起土
5月8日
トラクター
砕土
5月8日
播種
5月
13日
施肥5月13日 覆土
鎮圧
5月
14日
エドラー
ド設置
6月
24日



A 自然牧野 - - - - - - - - -
B 改良
牧野の1
- - - - - - -
C 改良
牧野の2
-  
D 高度集約
牧野
-

 A 整地処理 試験地は約200年生のワシワ(10a当り3~5本)を抜根整理後に火入れを行い、D区はトラクタープラウデンク4回掛けて行って種子床を造成した。A、B両区は火入れのみとし、C区は火入れ後トラクターデスク4回掛けを行って造成を行った。
 B 肥料処理 日東の草地化成2号を用いた。少肥は12kg/10a、中肥は24kg/10aで多肥は48kg/10aを用いた。炭カルは、B、C、D区に10a当り30㎏を用い、C、D区は砕土直前に撤布した。草地化成はN:P2O5:K2O=6:11:11である。その後毎年春に同量の追肥を行った。
 C 使用種子 牧草混播で10a当りオーチヤードグラス0.91、チモシー0.45、ペレニヤルライグラス0.23、アカクロバー0.45、ラジノクロバー0.12各㎏を用いた。播種にあたっては草地化成肥料と若干の細土を混合の上撤播し、レバーハローで覆土、後にカルチパツカーによる1回鎮圧を行った
  (2) 試験区分
 第1図に配置を示した。Passを含め、0.8haで、1区10×30mの3aで4処理、3反覆とした。
 第1図  試験区の配置

 3. 試験結果の要約
 長草型草地の改良方法として、少ない経費と労力によって行う改良牧野と積極的に多額の経費を用いて造成する高度集約牧野が自然牧野と対比した場合にどのような経年的植生の推移と改良効果が示されるからについて4ヶ年の検討を行った。これらの結果は植生状況についてみると自然牧野A区は初年目収量が1.36屯/10aであり、これを100とすれば4年目には67に減収し、4ヶ年収量は4.48屯で、牧草率は0%で優良野草が退行した。改良牧野1のB区は毎年12kg/10aの化成肥料追肥をしたが、初年目1.58屯で4年目には81%に減収し、4ヶ年合計5.39屯で牧草率は1%でA区と同様に優良野草は減少した。改良牧野2のC区はトラクターデスクによる砕土後播種して毎年24㎏の追肥を行った。初年目1.50屯であったが、4年目には3.90屯と2倍以上に増加し、4ヶ年合計11.6屯で牧草率81%であった。D区は高度集約牧野であるが、慣行造成法で毎年48kg/10aの追肥を行った。
 初年目1.37屯、2年目3.14屯、3年目4.37屯で最高に達し、4年目は3.55屯で合計12.43屯の収量があり牧草率は95%で、C及びD区で改良の効果が示された。栄養粗成及び収量でも草生改善の効果とともに興味ある傾向が示された。4年目に肉牛を放牧し、採食利用率を調査したが、C、D区が三季を通じて良好であった。またこれらを採食活動から追跡したが、三季を通じ採食に費やされた時間の内、A区には13.2%、B区には17.6%、C区には30.1%、D区では39.1%と草生改良の効果が家畜の面からも明らかに認められた。
 土壌の化学性でも第1試験と同じように、多収を示しC、D区での加里及び燐酸の減少が認められ、合理的追肥の必要生草収量と植性が示された。
 経済性の検計、初年目の造成費は10a当りA区2,000円、B区2,315円、C区4,255円、D区5,485で4ヶ年の合計の造成、 維持にはA区2,000円、B区3,500円、C区6,600円、D区9,300円で、補助を受けた時には、C区4,500円、D区は6,500円と示された。補助を受けない時の生草及びDCP1㎏の生産費はA区では0.45円と28.7円、B区は0.65円と43.8円と高くなり、C区では0.57円と24.0円、D区では0.52円と24.5円であった。しかし補助を受けた時にはC区では0.39円と16.4円、D区では0.52と17.1円とC区の改良効果が良好であった。一方経年的な生産費の傾向では、A及びB区では収量が年々減少するので、次第に経費高になることが指摘することができた。
 4. 主なる試験成績の概要
 第1表  処理別、年次別生草収量
区分 1959 1960 1961 1962 比率
A対照 1.36
(100)
1.18
(85)
1.03
(76)
0.91
(67)
4.48 100
B改牧1 1.58
(100)
1.35
(86)
1.18
(74)
1.28
(81)
5.39 120
C改牧2 1.50
(100)
3.06
(203)
3.16
(210)
3.90
(259)
11.62 260
D高集 1.37
(100)
3.14
(230)
4.37
(320)
3.55
(260)
12.43 278
LSD 5% 0.31 0.36 1.32 0.18 - -
1% 0.43 0.51 1.85 0.26 - -

 第1図  4ヶ年合計草種別生産量と植生の割合

 第2図  4ヶ年間の処理別草地の草地の植生変遷
註 優良草とはこの場合牧草類とススキ、エゾ、ヤマハギを意味する。

  (2) 栄養成分及び収量
 第3図  処理別年度別栄養(DCP、TDN)生産量
 註 ①1番刈 ②2番刈

 第4図 放牧試験 季節別処理別採食利用状況

 処理別草地の肉牛の採食活動
 第2表  処理別草地の採食活動(標示牛による)
区分 春季
6月中旬
夏季
8月上旬
秋季
9月下旬
春夏秋平均


(分)
A対照 111.00 (15.2%) 94.75 (17.7%) 48.75 (7.3%) 254.50 (13.2%)
B改牧1 150.75 (20.7%) 84.75 (15.8%) 104.50 (15.7%) 340.00 (17.6%)
C改牧2 171.00 (23.4%) 174.00 (32.5%) 237.75 (35.5%) 582.75 (30.1%)
D高集 297.00 (40.7%) 181.50 (34.0%) 278.00 (41.5%) 756.50 (39.1%)
小計 729.75 (100%) 535.00 (100%) 669.00 (100%) 1,933.75 (100%)
(51.4%) (50.5%) (59.8%) (53.7%)
反芻(分) 400.75 (28.2%) 255.75 (24.1%) 143.75 (12.8%) 800.25 (22.2%)
体患(分) 278.00 (19.6%) 243.25 (22.9%) 281.50 (25.1%) 802.75 (22.3%)
遊歩(分) 11.50 (0.8%) 26.00 (2.5%) 25.75 (2.3%) 63.25 (1.8%)
1,420.00分 (100%) 1,060.00分 (100%) 1,120.00 (100%) 3,600.00分 (100%)
 註
  (1) 日本短角種2頭平均、30秒間隔調査、放牧は5頭48時間内外
  (2) 採食調査は各日 朝8時より午後5時まで

 (3) 処理別草地の土壌の理化学性
 第3表  試験処理後の土壌状況
区分 層序 実容積(100㏄中) 土壌
硬度
(山中
式)
団粒
係数
(%)
pH
(KC)
pH
(H2O)
Humus
(%)
CaO
(㎎/
100g)
K2O
(㎎/
100g)
P2O5
(㎎/
100g)
NH4-N
(㎎/
100g)

(㏄)
空気
(㏄)

(㏄)
土壌
重量
(g)
A対照 第1層 22.65 33.05 44.30 56.8 10.0 20.5 5.6 6.2 10.49 474.6 17.2 0.45 0.285
第2層 20.10 26.50 53.40 48.3 15.0 29.5 5.0 6.0 11.79 467.9 10.2 0.68 0.340
第3層 18.20 29.80 52.00 48.1 16.0 22.0 5.1 6.2 7.80 381.8 13.7 0.68 0.330
B改2 第1層 21.30 30.60 48.10 59.9 12.5 23.5 5.3 5.6 10.14 444.2 11.1 0.45 0.370
第2層 19.65 27.25 53.10 44.0 15.0 26.0 5.0 5.8 10.49 418.7 6.7 0.75 0.330
第3層 19.30 29.50 51.20 48.8 15.0 25.0 5.1 6.2 4.92 330.2 7.0 0.65 0.215
D人工 第1層 25.35 27.05 47.60 64.2 14.0 26.5 5.0 5.7 8.79 448.2 7.3 0.45 0.650
第2層 19.40 36.04 44.20 54.5 15.0 23.9 5.0 5.7 5.80 379.4 5.3 0.68 0.500
第3層 22.00 35.00 43.00 58.2 15.5 11.0 5.5 6.2 2.78 330.2 3.7 0.45 0.318
試験
開始前
(原土)
第1層 28.30 32.10 39.60 62.2 14.0 32.4 5.8 6.6 10.30 507.9 18.0 10.05 0.298
第2層 26.70 32.00 41.30 60.7 16.0 10.1 5.0 6.3 7.90 438.5 13.1 14.50 0.350
第3層 30.10 32.50 36.40 66.7 16.5 21.6 5.0 6.2 9.60 340.2 13.2 15.00 0.345
 註
  (1) 帯広畜産大学土壌学研究室
  (2) D人工区の第1層、第2層の厚さは耕起したため原土区のそれ(第1層0~5㎝、第2層5~8㎝)と多少の開きはある。
  (3) CaO、K2O、P2O5はモルガン氏法による。

 (4) 経済性の検討
  A 算出基礎(北海道における高集牧野事業実績より)
 1961年度において北海道の度集約牧野は5809ha造成されこれらの造成に要した平均経費、とくに障碍物除去、起土及び整地(これにはトラクターの使用量、運転手賃金、必要馬車及び人夫賃を含む)の算出額下表を準用した。
 参考1表  北海道集約牧野造成事業実績調 ※(1960年~1961年)
年次 団地数 実行面積
(ha)
ha当り
平均
障碍物
除去費
(円)
ha当り
平均
耕起費
(円)
ha当り
平均
砕土費
(円)

ha当り
牧草
種子代
(円)

ha当り
土改費
ha当り
平均
総事業
経費
(円)
1960 1890 4268(2.3) 15,672
11,093
- 6,511 14,269 47,502
1961 2368 5809(2.5) 19,581 8,736 4,826 7,452 18,586 59,181
 ※ 昭和37年1月17日北海道農務部畜産課草地改良係調査資料
  ( )数字は団地当たり面積ha

 註
  ① 砕土の経費も含む。
 昭和35年度の草地改良実績調査の結果では、草地改良事業に用いたトラクターによる作業は、全道平均して障害物除去にはha当り12時間、起土には7時間、砕土には3時間を要した。
 またトラクターは一日平均6.5時間の稼働を行い、年間147日間の運転を行った。目下北海道には85台のトラクター(内52台はレーキトーザで80馬力)9台のトラクターは草地管理用として活動している。
  ② 14草種が用いられている。
  ③ 炭カル、熔燐、草地肥料、過石等である。

 第4表  処理別草地の10a当り4ヶ年の造成管理若費(木棚を含まず)
処理 造成年次の経費 覆土
鎮圧
3ヶ年の
肥料及び
施肥代
4ヶ年
造成
管理費
合計
補助を
差引いた
実際経費
障碍物
除去
起土
砕土
種子 肥料 小計 1/2補助
A対照 2,000 0 0 0 2,000 0 0 0 2,000 2,000
B改牧1 2,000 0 0 315 2,315 0 0 1,120 3,435 3,435
C改牧2 2,000 750 950 555 4,255 2,130 500 1,840 6,595 4,470
D高集 2,000 1,500 950 1,035 5,485 2,750 500 3,280 9,265 6,530
 註
  肥料代 炭カル1㎏2.5円、草地化成1㎏20円(運賃含む)
  補助 50%補助とし、対象は障碍物除去、起土、砕土、種子及び初年目肥料
  肥料代 10a当り100円の施肥代とし4年間分400円とする。

 第5表  処理草地必要経費(10a/円)
処理 4ヶ年造成管理費
(円)
補助費を受けた(4ヶ年)時
(円)
A自然 2,000 2,000
B改牧1 3,500 3,000
C改牧2 6,600 4,500
D高集 9,300 6,500

  B 処理別草地の生草及びDCP生産費
 第6表  処理別草地の生草及びDCPの生産経費
区分 処理 4ヶ年
経費
1ヶ年
平均
経費
4ヶ年
合計
生草
収量
(t/10a)
生草1㎏の生産費(円) DCP1㎏の生産費(円)
4ヶ年
平均
初年目 2年目 3年目 4年目 4ヶ年
平均
初年目 2年目 3年目 4年目
補助を受
けないとき
A自然 2,000 500 4.48 0.45 0.37 0.42 0.49 0.55 28.7 27.3 23.1 31.0 37.0
B改牧1 3,500 880 5.39 0.65 0.56 0.65 0.75 0.69 43.8 30.0 36.2 73.3 62.0
C改牧2 6,600 1,650 11.62 0.57 1.10 0.54 0.52 0.42 23.4 56.8 20.8 22.7 16.3
D高集 9,300 2,325 12.44 6.77 1.70 0.74 0.53 0.65 31.8 88.0 43.9 17.8 28.3
補助を受
けたとき
A自然 2,000 500 4.48 0.45 0.37 0.42 0.49 0.55 28.7 27.3 23.1 31.0 27.0
B改牧1 3,500 880 5.39 0.65 0.56 0.65 0.75 0.69 43.8 30.3 36.2 73.3 62.0
C改牧2 4,500 1,125 11.62 0.39 0.75 0.37 0.36 0.29 15.9 38.8 14.2 15.4 11.1
D高集 6,500 1,625 12.44 0.52 1.19 0.52 0.37 0.46 22.3 61.5 30.7 12.4 19.7

Ⅲ 自然牧野における家畜導入と草生改良更新ならびに放牧効果に関する試験(第3試験)
 1. 試験目的
 北海道の自然牧野において家畜の過度な放牧結果は一般に優良野草の衰退をきたし、その過程において適地性がしめされるイネ科草類(おもに、オーチヤドグラス、チモシー、フェスキュー、ブリユーグラスおよびレッドトップ等)ヤマメ科草として白クロバーが漸次草生し、自然の更新がおこなわれる場合が多い。しかし、これらが牧草植生群は収量的にも少なく、不安定な植生段階にある。すなわちこの時期にさらに重放牧または過放牧(Heavy or Over Grazing)をおこなう場合には土壌の理化学性の悪化とともに優良草は根絶し、ついで宿根性の不良野草が群生化し、ついには裸地を生じ土壌流亡等がみられる場合が多い。一方これらの植生推移を利用し、野草地の草生改良法として家畜の短期重放牧をおこない、野草の消滅と種子床のcleaningをおこなった後で各種の改良方策をおこなう方法が考えられる。
 以上の点から、北海道の代表的な長草型野草地に家畜を重放牧し、種子床のcleaningをおこない、さらに人為操作による追肥または追播を併用し、どのような改良効果が示されるかを、植生の推移と家畜の放牧試験を行いながら、その経済性を明らかにしようとする。
 2. 試験方法
  1) 試験処理
 緬羊による過放牧を行った後で、次表のごとき処理をおこなった。
 第1表  試験処理の概要
区分 試験地設
定区劃58
8月12
~21日
緬羊過放
牧58
8月20~
9月12日
ハギ刈払
火入59
4月15日
~18日
炭カル
散布59
5月7日
トラクター
デスクハ
ロー
5月11日
施肥
5月11日
播種及び
覆土鎮圧
5月13日
~14日
定点コド
ラード設
定調査
8月7日
収量植生
調査
8月12日
A対照 0 0 0 - - - - 0 0
B1追肥(少) 0 0 0 0 - 0 - 0 0
B2追肥(中) 0 0 0 0 - 0 - 0 0
C追播 0 0 0 - 0 - 0 0 0
D1追肥追播(少) 0 0 0 0 0 0 0 0 0
D2追肥追播 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 すなわち改良更新にあたっても改良牧野の主旨により、追肥および表土処理も少ない経費でおこなうよう考慮した。
 A 過放牧処理 1958年8月12~21日に各処理区(1ha)に木柵を設定し、電気柵とした。8月22日~9月14日に十勝種畜牧場繋養中の種牝羊180頭で6月9日より試験の隣接地区で充分な予備放牧をおこなったものである。過放牧中に各試験地ごとに可及的に均一な重放牧をおこなうようにつとめ、植生の衰退の度合いに応じて調整した。放牧中は緬羊は特別な補助飼料は給与せず、食塩は自由とした。供試羊は2~7才のもので体重55~77㎏であった。1区(1ha)あたり平均627頭の放牧をおこなった。
 B 整地処理 各区とも1959年4ヶ月中~下旬に残食されたヤマハギの茎を刈りはらい、火入れをおこなったが、充分に地肌を出すことはできなかった。C、DおよびD2区は1958年11月に2回と1959年5月11日に2回の計4回のTractor Diskによる砕土をおこなった。Disk Harrowは円板18吋で花型で、アアモールCのTractorを用いた。
 C 追肥処理 日東草地用尿素化成2号を用いた。A、C区は無追肥で、B1、D1区は毎年10aあたり12㎏の少肥、B2およびD2区は10aあたり24㎏を用いた。炭カルはA、C区を除いた区に1959年のみ30㎏/10aを施用した。
 D 使用種子 第2試験地と同じ混播例を用いた。すなわち10aあたりOrchard grass 0.91㎏、Timothy 0.45㎏、Red clover 0.45㎏、Perennial ryegrass 0.23㎏、Ladino clover 0.23㎏である。播種にあたっては各区1haに均等になるように注意し、1haを等分して細土を均等に混合の上縦横2回散布し、レバーハローにより覆土をおこない、カルチパッカー1回かけをおこなって沈圧した。
  2) 試験区分
 1処理1haで6処理とした。各区は50×20mで牧区設定その他は次図のごとくである。禁牧区は(5×50m)2.5aで、放牧試験は代表的なA1、B2、およびD2区についておこなった。その他のB2、C、D区は待期放牧に用いた。しかし各区ともⅡ牧区の禁牧区で刈取りによる収量調査をおこない、Ⅰ牧区における集牧区では草生産の季節性の調査をおこなった。
 第1図 試験処理区の配置と諸施設

 3. 試験結果の要約
 緬羊の放収をおこなった後で、対照A区、追肥少肥B1区(毎年草地化成肥料12㎏/10a)、追肥中肥B2区(24㎏/10a)、追肥をともなわない追播C区、追播少肥D1区(12㎏/10a)と追播中肥D2区(24㎏/10a)の5処理を各1haの面積で4ヵ年間の調査をおこなった。
 植生状況では、A区は4ヵ年合計の生草収量は3.07屯/10aで、平均収草率は13%であり、初年目に対する4年目の収量は28%に減少し、優良野草は減少した。B1区は4ヵ年収量4.77屯で牧草率が18%と若干の改善はしめされたが4年目収量は70%に減少した。B2区では4ヵ年で4.94屯でA区より61%増加がしめされ、牧草率では23%としめされた。しかし、4年目では初年目収量の82%にとどまった。追肥をともなわない追播のC区は4ヵ年で2.91屯でA区の95%収量にとどまり、牧草率は15%で4年目収量は68%と改良の効果は全くしめされなかった。C区に毎年12㎏/10aの追肥をおこなったD1区では4ヵ年で6.61屯の収量でA区の215%となり、牧草率も60%と向上し、4年目収量も143%としめされ、改良牧野の目標に達した。さらに24kg/10aの追肥を加えたD2区では10.22屯で牧草率も77%で4年目収量も307%と年々増加の傾向がしめされた。処理別草地の季節的生産性ではA区は春には1日10a当り7.8㎏の生草生産で、夏には2.6㎏と減少し、秋にはわずかに1.2㎏であり、年間の草生産期間は6月中旬より9月下旬までの100日であった。B2区は春に13.4㎏/10a/dayで夏には8.3㎏、秋には4.5㎏とA区よりかなりの改善がみとめられた。草生産の期間は5月下旬より10月上旬までの120日間の如くであった。
 D2区では、A、B2区に比較して、かなり改善され、春に21.0㎏、夏に27.6㎏、秋においても14.8㎏と生産性および季節灰分がよく、草植構成もよいため、生育期間は5月中旬より10月下旬までの160日間と推定された。牧養力3ヵ年にわたり肉牛の放牧試験をおこなって、家畜による改良の効果判定をおこなった。
 A区では3ヵ年平均ha当りの生草量は7.2屯で牧草率は14.8%であり、体重500㎏に補正した肉牛は平均haあたり101頭の放牧がなされ、1日1頭当りの増体は0.25㎏で、採食利用したTDNは454㎏と推定された。
 B2区では平均haあたり11.9屯で牧草率は28.5%であり年間ha当り159頭の放牧が可能で、1日1頭あたり0.32㎏の増体がしめされた。また採食利用したTDNは811㎏と算出された。
 D2区では平均haあたり30.3屯の収量で牧草率は77.2%であり、体重500㎏の肉牛を239頭放牧することができた。1日1頭あたり放牧のみで0.45㎏の増体がしめされ、年間haあたり1627㎏の採食利用がしめされた。すなわち草生の改善とともに放牧効果も順調に向上された。すなわち牧養力でA区に対し、B2区は1.8倍、D2区では3.6倍であった。日中活動および採食活動においても草生ときわめて興味ある関連がしめされた。土壌の化学性で石灰、加里、燐酸が減少しており、合理的な施肥管理の必要性がしめされた。
 経済性の検討をおこなった、これらは木柵経費を含めて、4ヵ年の造成維持経費と生草およびDCP生産費を調査した。A区では造成、維持経費は2,700円で1㎏の生草生産費は0.88円、DCP1㎏の経費は38.0円であった。B1区では4,060円で0.85円と49.1円を効果はみとめられず、B2区では5,020円で1.02円と57.5円と逆に生産費が高くなり、C区でも造成・維持費は4,960円に対し、生草では1.71円と75.7円で不経済な改良方法であることがみとめられた。D1区においては6,220円で0.94円と36.4円でA区よりDCPにおいてわずかに良好な生産費であった。しかしD2区では造成・維持経費は7,180円と最高であったが、1㎏生草には0.70円とDCPは26.3円で、明らかに草生改良の効果が経済的にもみとめられた。また体重の肉牛の1日1頭あたりの放牧経費はA区では89円、B2区では104円と高くなり、D2区では84円としめされた。また標準牝牛の1日1頭あたりの経費はA区では135円、B2区で140円であり、D2区では99円としめされた。
 以上のごとき結果から、放牧を主体にした改良牧野造成にあたっては自然草地に12㎏/10aの少量追肥または追肥をともなわない追播等は不経済であり、追播とともに毎年20㎏前後の追肥をおこなって草生の改善を積極的に進めることによって経済的な草生産を期待しうることがしめされた。
 しかし、B2区においてもはじめに緬羊の重放牧により、野草の消滅と、放牧の定着を期待し、その後24kg/10aの年々追肥をおこないながらの放牧によって4年目には生草量はhaあたり10屯であったが、牧草率が当初2%程度がものが54%にも達し、また、対照無肥区でも生産量6屯であったが牧草率が43%にも改善されたことは、見逃すことのできない事実であって、放牧による草地の質的改良が期待しうることが立証された。
 第2表  4ヵ年間の処理別草地の生草収量(kg/10a)

区分 A-C
無処理対照
A
対照
B1
追肥(少肥)
B2
追肥(中肥)
C
追播無肥
D1
追播追肥
(少肥)
D2
追播追肥
(中肥)
実数 指数 実数 指数 実数 指数 実数 指数 実数 指数 実数 指数 実数 指数
1959 1,454 100 1,291 100 1,550 100 1,350 100 860 100 1,275 100 1,141 100
1960 の1 1,192 82 500 39 740 48 771 57 564 66 1,427 150 1,267 259
の2 - - - - - - - - - - 485 1,303
の3 - - - - - - - - - - - 380
1961 の1 708 49 917 71 1,383 89 1,708 127 900 105 837 125 1,558 230
の2 - - - - - - - - - - 763 1,067
1962 の1 904 62 365 28 1,092 70 1,108 82 583 68 797 143 1,773 307
の2 - - - - - - - - - - 1,025 1,733
4,258(100) 3,073(72)
100
4,765(112)
155
4,937(116)
161
2,907(68)
95
6,609(155)
215
10,222(240)
333

 4. 主なる試験成績の概要
 第3表  4ヵ年間の処理別草地における草種別生産割合
区分 A-C A B1 B2 C D1 D2
4ヵ年合計生草収量(kg/10a) 4,258 3,073 4,765 4,937 2,907 6,609 10,222
植生割合
(%)
牧草 イネ科牧草 341
(8)
412
(13)
843
(18)
1,124
(23)
302
(10)
2,171
(33)
2,989
(29)
マメ科牧草 0 0 0 0 145
(5)
1,785
(27)
4,882
(48)
牧草率(%) 8 13 18 23 15 60 77
野草 ススキ及び
イネ科野草
1,231
(29)
669
(22)
1,001
(21)
847
(17)
314
(11)
128
(2)
196
(2)
エゾヤマハギ 267
(6)
393
(13)
656
(14)
544
(11)
172
(6)
259
(4)
212
(2)
ワラビ 1,398
(33)
565
(18)
352
(7)
336
(7)
721
(25)
1,030
(16)
547
(5)
その他 1,021
(24)
1,034
(34)
1,913
(40)
2,085
(42)
1,253
(43)
1,236
(19)
1,396
(14)

 第4図  4ヵ年間における処理別植生変遷の概要

 第3図  処理別年度別栄養(DCP、TDN)生産量
 註 ① 1番刈 ② 2番刈

  (2) 禁牧区と放牧区の植生
   A 1962年による植生状況
 第4表  放牧区の生草収量と植生割合-1962(固定プロテクトケージ内)
草種(%)
\生草収量(kg/ha)
\処理
A対照無肥 B2追肥(中肥) D2追播追肥(中肥)
禁牧区 放牧区 禁牧区 放牧区 禁牧区 放牧区
1番刈 2番刈 1番刈 2番刈
365
(100)
608
(167)
1,108
(100)
998
(90)
1,773 1,773 2,451 1,994
3,506(100) 4,445(127)
オーチヤードグラス 8.9 1.9 8.7 4.5 14.5 35.5 12.6 22.1
チモシー 3.9 3.4 12.2 15.2 16.8 5.8 33.1 10.5
レッドトップ 18.1 24.2 16.1 21.2 2.8 3.6 5.3 0.4
ケンタッキーブルグラス 4.1 13.0 1.1 13.1 7.6 4.4 4.3 1.9
レッドクローバー - - - - 4.7 10.2 5.3 26.7
ラジノクローバー - - - - 46.5 34.8 35.3 33.8
エゾヤマハギ 2.5 1.3 5.2 1.0 - - - -
ワラビ 4.3 10.8 3.5 9.0 0.2 3.6 1.1 3.4
ササ類 2.1 2.9 1.6 1.2 - - - -
ヤワアワ - 0.7 1.0 - - - - -
オオアブラススキ 13.5 12.0 9.6 4.0 0.1 0.1 - -
スゲ類 0.4 1.1 1.5 2.0 - - - -
スズラン 5.3 - 0.3 5.7 1.0 - 1.3 -
アヤメ 1.4 0.7 1.2 - - - - -
アキカラマツ 4.6 4.1 2.6 0.1 2.3 0.4 0.1 -
キジムシロ 2.5 5.3 2.6 4.0 1.6 0.3 0.7 -
クサレダマ - - 0.3 - - - - -
オカトラノオ 1.1 - - - - - - -
オミナエシ 6.4 0.5 4.4 0.6 - - - -
ツリガネニジン 2.1 7.9 6.1 3.5 - - - -
ヒヨドリバナ 0.7 0.7 - - - - - -
シラヤマギク 2.5 1.3 3.5 1.9 0.2 - - -
カセンソウ 0.6 0.4 2.6 0.2 - - - -
ノコギリソウ - - - - - - - -
オトコヨモギ 2.9 1.6 9.6 5.9 0.1 - - -
オオヨモギ - 1.9 3.5 1.5 0.3 0.5 - -
コウゾリナ - - - 0.2 - - - -
セイヨウタンポポ 2.9 1.3 - 1.2 0.5 0.4 0.5 0.9
ヒメジヨオン 3.6 - 1.5 0.4 - - - -
ヤマニガナ - - - - 0.7 0.3 0.1 -
その他 5.1 3.0 1.3 3.6 0.1 0.1 0.3 0.3
牧草率 (%) 35.0 42.5 38.1 54.0 92.9 94.3 55.9 95.4

  (3) 草地の季節生産性
 処理草地における春、夏、秋の生産性(禁牧区における)
 第5表  季節別生産性
区分 A B2 D2
計又は
平均
計又は
平均
計又は
平均
生草収量(kg/10a) 598 123 50 711 925 400 193 1,518 1,450 1,325 638 3,413
生育期間(日数) 69 48 43 160 69 48 43 160 69 48 43 160
1日平均生育生草量(kg/10a) 7.8 2.6 1.2 4.4 13.4 8.3 4.5 9.5 21.0 27.6 14.8 21.3
DCP生産(kg/10a) 14.4 3.7 1.6 19.7 17.5 10.7 7.1 35.3 42.0 35.0 23.1 100.1
1日平均DCP生産量(kg/10a) 0.21 0.07 0.04 0.12 0.25 0.22 0.17 0.22 0.61 0.73 0.54 0.63
TDN生産(kg/10a) 95.0 27.1 10.3 132.4 148.7 75.1 43.6 267.4 163.6 158.8 118.0 440.4
1日平均TDN生産量(kg/10a) 1.38 0.56 0.24 0.83 2.16 1.56 1.01 1.67 2.37 3.31 2.74 2.75
 ※ 春=4月25日~7月3日 夏=7月4日~8月20日 秋=8月21日~10月2日

 第4図  草生産の季節性

  ⅱ 放牧地における草生産の季節性
 第6表  処理別 放牧地植生の季節的生産性(移動ゲージ法の調査より)
区分
\輪換
\牧区
\放牧地
A B2 D2
1 2 1 2 1 2 3 1 2 3 1 2 3 4 1 2 3 4
コドラード
設定月日
7月
6日
7月
25日
6月
18日
7月
7日
5月
30日
6月
18日
8月
12日
6月
19日
7月
7日
9月
1日
5月
31日
6月
19日
7月
25日
8月
30日
6月
19日
7月
7日
8月
11日
9月
17日
刈取月日 7月
25日
9月
26日
7月
7日
9月
15日
6月
18日
8月
12日
9月
27日
7月
7日
9月
1日
10月
5日
6月
19日
7月
25日
8月
30日
9月
27日
7月
7日
8月
11日
9月
17日
10月
5日
生育期間
(日)
19 53 19 70 18 55 46 18 56 35 19 36 36 28 18 35 37 18
生育量
(kg/10a)
43 188 41 213 76 416 265 55 334 84 527 1,225 1,003 409 690 965 670 237
1日平均
生草量
(kg/10a)
2.3 3.5 2.2 3.0 4.2 7.6 5.8 3.1 6.0 2.4 27.7 34.0 27.9 14.6 38.3 27.6 18.6 13.2

 第5図  放牧地における草生産の季節性

  (4) 放牧の効果
   ⅰ 牧養力
 第7表  年次別、処理別草地のha当りの牧養力  
区分 対照無肥A区 追肥中肥B2 追播追肥D2
1960 1961 1962 1960 1961 1962 1960 1961 1962
禁牧区による生草量(kg/10a) 5.0 9.2 3.7 7.7 17.0 11.1 29.5 26.3 35.1
植生状況 牧草率(%) 18.4 12.7 35.5 25.2 22.3 38.1 60.9 77.8 92.9
優良野草率(%) 16.9 13.9 16.0 2.2 7.8 14.8 2.3 3.8 0.1
延放牧頭数 110 118 122 140 182 197 280 259 434
Cow Day ① 96 101 105 121 156 202 230 219 403
増体の状況 延増体重(㎏) 58.0 -9.0 26.0 52.0 22.0 89.6 199.0 115.0 126.7
1日1頭当り増体(㎏) 0.53 -0.08 0.21 0.37 0.12 0.46 0.71 0.53 0.29
草地より採食利用されたTDN(kg/10a) 568.5 302.1 491.6 639.1 674.0 1120.5 1581.1 1241.3 2057.4
標準牝頭数 ②
Standard cow day
84 44 72 94 99 165 233 183 303
採食栄養量 1日1頭当り採食TDN(㎏) 5.17 2.56 4.03 4.57 4.38 5.69 5.68 5.67 4.74
1日1頭当り採食生草量(㎏) 34.5 16.4 22.8 30.4 28.8 40.9 40.3 44.0 43.1
 ① 体重500㎏の補正を行った。
 ② 1日1頭当り15封度のTDN(6.79㎏)を必要とする乳牛を1標準牝牛とする。

 第8表  3ヵ年平均の牧養力(ha当り)
  A B2 D2
3ヵ年平均生草量(屯/ha) 6.0(100) 11.9(198) 30.3(505)
平均牧草率(%) 22.2 28.5 77.2
Cow Day ① 101(100) 159(157) 284(281)
増体の状況
(3ヵ年平均)
平均延増体重(㎏) 25.0(100) 54.5(218) 146.9(588)
1日1頭当り増体重(㎏) 0.25(100) 0.32(128) 0.45(180)
3ヵ年平均採食利用 TDN (㎏) ② 454(100) 811(179) 1627(358)
標準牝牛頭数 66(100) 119(180) 239(362)
1日1頭平均採食 TDN (㎏) ③ 4.49(100) 5.10(114) 5.72(128)
 ③=②+①で示した。

  (5) 処理別草地における肉牛の日中活動
   A 日中活動状況

 第8図  処理別草地の肉牛の日中活動(1960年7月19~20日)

 註 各群3頭 2日間、1日15時間、計5400分調査、30秒間隔方式による記録

 第9表  その他の放牧中の活動(3頭平均)1日当り回数
区分 A群 B群 D2
横臥 11.4 15.2 13.2
飲水 3.7 6.2 4.2
舐塩 1.4 4.9 1.9

 B 時間経過と採食活動
 
第7図  時間的な肉牛の採食活動

  (6) 土壌理化学性
 第10表  試験処理後の土壌状況
処理区 層序 実容積(1000㏄中) 土壌
硬度
(山中
式)
団粒
係数
(%)
pH
(KCl)
pH
(H2O)
Humus
(%)
CaO
(㎎/
100g)
K2O
(㎎/
100g)
P2O5
(㎎/
100g)
NH4-N
(㎎/
100g)

(㏄)
空気
(㏄)

(㏄)
土壌
重量
(g)
A1
対照無肥区
第1層 29.35 24.15 46.50 74.20 20.0 25.0 5.1 6.1 6.33 212.0 9.4 9.4 0.395
第2層 25.90 34.30 39.80 61.60 18.0 17.3 5.5 6.3 6.55 325.2 7.0 7.0 0.198
第3層 - - - - 18.0 29.4 5.6 6.2 6.18 430.2 4.1 4.1 0.170
B2
無肥区
(中肥)
第1層 29.30 30.40 40.30 76.20 16.5 25.5 5.1 6.1 6.38 495.5 10.2 10.2 0.167
第2層 23.60 27.90 48.50 52.50 16.0 15.7 5.7 6.2 6.37 315.4 7.0 7.0 0.500
第3層 - - - - 17.0 27.5 5.0 6.1 6.01 475.3 6.7 6.7 0.215
D2
追播追肥区
(中肥)
第1層 32.50 25.30 42.20 81.30 16.0 24.0 5.1 6.0 6.31 341.8 5.4 5.4 0.165
第2層 34.30 22.90 42.80 53.40 18.0 15.3 5.5 6.2 6.81 315.4 7.3 7.3 0.166
第3層 - - - - 17.0 26.5 5.3 6.0 6.25 471.1 2.7 2.7 0.215
試験開始前
(原土)
第1層 27.90 30.60 41.50 61.70 11.0 25.3 5.1 6.2 6.60 586.4 20.4 10.4 0.322
第2層 24.80 30.20 45.00 61.70 13.0 19.3 5.3 6.3 6.90 307.7 15.4 15.4 0.506
第3層 25.30 31.20 43.50 54.80 17.3 26.6 5.6 6.5 6.90 412.8 14.5 14.5 0.730
 註
  (1) 帯広畜産大学土壌学研究室
  (2) A1、B2、D2各区とも放牧区土壌の分析結果である。
  (3) CaO、K2O、P2O5はモルガン氏法による。

  (7) 経済性の検討
   A 造成の経費
 第11表  造成維持経費(10a当り)
区分 造成年
4ヵ年
木柵
覆土沈圧 3ヵ年の
肥料代
4ヵ年の
肥料代
4ヵ年造成
維持管理費

火入れ
障害物
の除去
砕土 種子
肥料
A 500 - - - 2,200 - - - 2,700
B1 500 - - 240 2,200 - 720 400 4,060
B2 500 - - 480 2,200 - 1,440 400 5,020
C 500 750 910 - 2,200 500 - 100 4,960
D1 500 750 910 240 2,200 500 720 400 6,220
D2 500 750 910 480 2,200 500 1,440 400 7,180
 註
  ① 簡易に除去し得る状態
  ② 草地化成1㎏20円(運賃含む)
  ③ 1ha延550mとし、4mに1本のアングル材、3段張り、造成人夫として5,500円の経費となる。10ヵ年使用とすれば年間10a当り550円となり、4ヵ年分は2,200円となる。造成経費はm当り約100円である。

   B 生産経費
 第12表  生草及びDCPの生産費
処理区 4ヵ年収量
(kg/10a)
4ヵ年栄養収量(kg/10a) 4ヵ年造成
維持経費
(円/10a)
生産費(円)
DCP TDN 生草1㎏ DCP1㎏
A 3,073 71.1 711 2,700 0.88 38.0
B1 4,765 82.7 997 4,060 0.85 49.1
B2 4,937 87.3 1,105 5,020 1.02 57.5
C 2,907 65.6 650 4,960 1.71 75.7
D1 6,609 180.8 1,162 6,220 0.94 36.4
D2 10,222 272.9 1,519 7,180 0.70 26.3

   C 放牧経費
 第13表  放牧経費
処理区 4ヵ年造成
維持経費
(円/10a)
標準牝牛放経費 体重500㎏肉牛放牧経費
3ヵ年延放牧
頭数
1日1頭経費
(円)
3ヵ年延放牧
頭数
1日1頭経費
(円)
A 2,700 20 135 30 89
B1 5,020 36 140 48 104
D2 7,180 72 99 85 84