【指導参考事項】
サウスダウン種とコリデール種の雑種に関する試験
道立滝川畜産試験場

目的
 現下肉資源の涵養上羊毛を主として飼育していた緬羊も、その肉の利用に目的が変り、肉緬羊として名あるサウスダウン種を海外から輸入し、その純粋繁殖は勿論コリデール種との間に一代雑種を造成し、肉緬羊の素緬羊として用いられている。この一代雑種の発育、産肉性、産毛性などにつき昭和35年より調査し次の成績を得た。
試験Ⅰ 仔緬羊の発育
 昭和35年より37年迄に生産された(サウスダウン種雄×コリデール種雌の一代雑種)仔羊、雄39頭、雌25頭についての実績。
 第1表  (1) 仔緬羊(一代雑種)の月別体重
性\月令 生時
(㎏)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
3.68 9.2 16.2 21.8 24.8 27.0 29.5 31.4 33.8 36.4 38.6
4.27 11.0 18.6 26.2 29.4 32.1 34.8 37.9 40.2 44.0 45.9

  (2) 離乳時期迄の発育とコリデール種との比較
品種 生時体重 離乳時体重 日数 一日当り増体重
F1 427 26.2 90 243.7
コリデール 4.46 27.19 102 221.3
F1 3.68 21.83 90 190.6
コリデール 4.17 23.25 103 187.5

試験Ⅱ F1とコリデール種の育成、肥育試験
 (1) 供試緬羊
 F1及びコリデール種共各々5頭宛を供試験緬羊として用う。
 (2) 試験期日及び期間
 昭和34年7月31日より9月18日まで50日間を第一期とし、昼間放物、夜間羊舎内に収容し飼料を給与する。
 第二期(肥育Ⅰ期) 9月19日~10月18日(30日間)
 第三期(肥育Ⅱ期) 10月19日~11月7日(20日間)
 共に舎内、単房に収容、個体別の採食量調査。
 (3) 試験羊の体重増加
区分 No. 開始時 放物期 肥育第Ⅰ期 肥育第Ⅱ期 増体量 一日当り増体重(g)
全期 放物期 肥育期
F1 平均 31.1 36.6 40.7 44.8 13.7 137 110 164
コリデール 平均 33.2 37.5 41.7 46.2 13.0 130 86 174

 各区の平均増体量は全期でF1区が13.7㎏、コリデール種区が13.0㎏で0.7㎏多かった。これを放物期と肥育期に分けてみると、放物期ではF1区の増体が大きく、肥育期に於てはコリデール種区の方が大きかった。
 このことは放牧時に於ける草の利用性がF1区の方がすぐれており、肥育時の増体については屠体の脂肪の蓄積状況から見てF1は発育の最盛期を過ぎ筋肉発育よりも脂肪の蓄積に与えられた飼料が利用されたのに対し、コリデール種の方はこの月令に於てもなお脂肪の蓄積よりも生体各部の発育のために飼料が利用されたものと推定される。
 (4) 飼料の採食量と利用性
 飼料の採食量はF1区もコリデール区も大差なく飼料の種類は、生草、青刈大豆、乾草、配合飼料(燕麦32%、フスマ17%、大豆粕17%、玉蜀黍17%、ビートパルプ17%)などである。
 しかして、その利用性は全期通じてF1区の方が稍良好であり、放牧期に於ける1㎏増体に要した栄養量はF1区の方が約13%すぐれていた。
 (5) 産肉性
 各区の平均歩留りは次の通りである。
試験区   生体量 枝肉 赤肉 脂肉
F1区 平均値(㎏) 37.98 19.96 10.56 5.43 3.55
対生体比(%)   52.55 27.80 14.30 9.34
対枝肉比(%)     52.91 27.20 17.80
コリデール種区 平均値(㎏) 38.14 18.92 10.14 4.41 3.88
対生体比(%)   49.61 26.59 11.57 10.18
対枝肉比(%)     53.59 23.31 20.51

 即ち、枝肉の歩留りはF1区の方が52.55%でコリデール種よりも2.9%高く、又赤肉も絶対量が0.42㎏多く、更に脂肪量はF1区が5.43㎏で生体比が14.3%で、これは標準の15%に近い。脂肪の厚さはコリデール種区よりも厚く、F1区の脂肪のつき方は適当といえよう。
 又、屠体の形態についてはF1区はコリデール種区よりも長さは短く(4㎝)腰の周囲が大きく(2.3㎝)肢の長さも短く(4.3㎝)なっている点から見てF1区の方がかなり良好といえる。
 (6) 産毛成績
 肉目的の緬羊といえども羊毛をないがしろには出来ないので調査してみたところ、産毛量はF1区の2.74㎏に対してコリデール種区は3.46㎏であった。
 同一日令の7ヶ月目の毛長はF1区のものはコリデール種区より平均1.2㎝短く、純毛量ではコリデール種区の80%と推定される。
 (7) 色斑の出現状況
 サウスダウン種には、雄雌共に顔面及び四肢下端に灰色、又は褐色の色斑があり、従ってコリデール種とのF1をつくる場合約82%の頭数に色斑が出現した。
総括
 ① 以上要約するにF1の生時体重は、コリデール種に比べて小さいが生後3ヵ月間の発育は極めて良好であって我日本に於いても食肉市物の要求が外国のそれの如く小型でも良質のものを是とするならば生後3~4ヶ月で即ち離乳後直ちに屠殺することが最も効率的であろう。しかし我国市物の現況では格付もないのでたとえよいものを出してもよい単価を望むことは出来ない。従って技肉量の少ない、又毛量の少ない毛皮の利用法不確定の状態では離乳直後の屠殺出荷は不利であるから考えねばならぬ。
 ② 我国で一般に行われている生後10ヶ月前後で出荷するラム造成方式に従った育成、脂肪をコリデール種と比較した場合、発育の前期はF1が良好であるが後期はコリデール種の方がやや良好であることからF1の屠殺出荷時期としては8ヶ月頃が限度であるようである。
 したがって今後はその時期を頭において育成なり肥育の方法をとるべきである。
 ③ F1の体型は両親のコリデール種とサウスダウン種のほぼ中間であり、コリデール種に比して肢が短くなり幅も出て来て枝肉とした場合の型はコリデール種より良好である。
 ④ 産毛量はコリデール種の75~80%であり羊毛の点のみを考えるときは余り期待出来ない。
 ⑤ 羊肉需要の拡大に伴って早期(夏~初秋)の市場に対してはF1の早熟性を利用し計画的生産出荷は考えF1とコリデールを組合せ常時良質のラム供給を図ることは将来の課題である。