【指導参考事項】
ケージによる産卵鶏の飼育試験
その1 特に産卵鶏の平面飼育とゲージ飼育方式の比較
道立新得畜産試験場

1. はじめに
 ケージ養鶏はもともと暖地の開放環境に適するものであって、本道のように冬期間、密閉飼育をよぎなくせられる地帯では、その適性について多分に問題点が潜在している。そこで同一条件下で平面飼育と比較し、産卵、孵化率、斃廃死率、飼料、要求量について両者の優劣を検討してみることにした。
2. 昭和36年12月より37年5月までの6ヵ月間、改造鶏舎を二つに仕切り、一方にひな段単飼ケージ一方を平飼いとし、それぞれに白レグ若めす180羽宛収容した。飼料は市販完全配合飼料で特に寒冷を考慮して高カロリーのものを使用しなかった。交配法はケージの方のみ人工授精を行った。試験舎内の温度は第1表のごとくであった。
 第1表  試験鶏舎の室温
月別 毎月の最高
気温の平均
(℃)
毎月の最低
気温の平均
最高気温 最低気温 平均気温
12 5.8 1.3 9.5 -1.0 3.6
1 5.1 -0.3 8.0 -3.0 2.5
2 5.7 -0.1 8.0 -4.0 2.8
3 6.5 2.3 10.0 0 4.4
4 11.8 7.7 18.0 4.0 9.8
5 15.4 10.6 22.0 7.0 13.0

3. 試験成績
 (ア) 試験鶏舎の室温
 冬期間の保温鶏舎の望ましき温度は4.0℃(平均気温)以上で、俗に飲料水の永らない程度とされているが、その点からみるとこの試験舎は1月の平均気温で2.5℃であるから、いくらか寒い方の鶏舎に属する。湿度は最高で80%以下が望ましいが、この鶏舎はやや多湿の傾向があった。
 (イ) 産卵数
 産卵率は両者の優劣判定の最も有効な指標になるが両者の差は僅か4%にすぎない。
 12月の減卵は換羽の影響による。
 第2表  産卵率の比較
月別 平面飼育
(%)
ケージ飼育
(%)
12 26.6 29.0
1 37.1 39.3
2 71.5 71.1
3 68.4 69.3
4 64.6 71.6
5 57.7 68.6
0 0 54.3 58.2

 (ウ) 孵化成績
 ケージ養鶏の一般普及化にともない、ケージ飼育における人工授精による種卵の実用化が問題となってくる。すなわちこの試験結果では受精率、孵化率ともに自然交配の平飼いよりも、それぞれ5.3%、3.2%低い。とくに受精率は当初の間、人工授精技術が未熟のため低かったが、それ以降は90%に達した。このように寒冷地でも週1回の人工授精によりほとんど支障なく孵化が可能であることがわかった。
 (エ) 飼料消費量
 ケージ飼育の方が一般に飼料消費量がやや少ないのが通例である。これは運動の制限や餌箱の構造によるものである。この試験結果は両者間の差異は認められなかった。
 第3表  孵化成績
  ケージ
(人工授精)
平飼
(図然交配)
人卵数 10,673ヶ 8,948ヶ
無精卵数 1,609ヶ 879ヶ
受精卵率 84.9% 90.2%
孵化羽数 7,860羽 7,250羽
孵化率(対入卵) 73.6% 81.0%
孵化率(対有精卵) 86.7% 89.9%

 第4表  飼料消費量と飼料効率
  平飼飼育 ケージ飼育
飼料消費量 3,214.2㎏ 3,283.6㎏
延飼養羽数 314,512羽 315,530羽
1日1羽当採食量 102.2g 104.1g
総生産卵数 16,740個 18,166個
卵1ヶ当り飼料量 180.9g 180.8g

4. 要約
 同一条件下のもとでケージ飼育と平面飼育とでは常識的に考えても、平面飼育の方に優位な成績が予想されるが、この試験結果ではつぎのごとく両者間にほとんど差異が認められなかった。
 すなわち産卵率では3.9%ケージ飼方の方がよく、人工授精では受精率は差異がなく、孵化率ではケージ飼育の方がやや劣り3.2%低かったが、ケージ飼育下で人工授精が支障なく実用化し得ることが明になった。飼料の消費量や斃廃死率はほとんど差異を認められなかった。