【指導参考事項】
その2 特に温度を異にした2つの鶏舎における単飼ケージの飼育比較
道立滝川畜産試験場

1. はじめに
 本道では冬期間の寒怜がケージ飼育に大きな障害であり、これがどのような姿であらわれて来るか不明な点がはなはだ多い。ここではとくに寒さに影響されやすい産卵率について調査を行った。
2. 試験方法
 次表のごとく暖鶏舎にそれぞれ種類の供試鶏を昭和37年1月~9月まで9ヵ月間飼育し、その間、市販の完全配合飼料を自由採食で飽食せしめた。
  試験区分
暖鶏舎 寒鶏舎
供試鶏及び
飼育方式
WL×WL56羽 ひな段式
単飼ケージ
WL×WL29羽 ひな段式
単飼ケージ
SR×WL27羽 SR×WL13羽
BP×WL27羽 BP×WL13羽
AL×WL28羽 AL×WL28羽
WL×AL27羽 WL×AL20羽
飼料 市販完全配合飼料飽食
試験鶏舎 断熱鶏舎
冬→暖かく
夏→涼しい
トタン屋根天井なし
バラック鶏舎
冬→寒く
夏→涼しい

3. 試験成績
 (ア) 試験鶏舎の室温
 寒怜舎では厳寒期の最低気温(平均)が-5℃で、飲水、鶏尿が完全に凍結したのに反し、暖鶏舎は最低気温は4℃で、望ましい保温状態であった。
 第1表  温度を異にした2つの試験鶏舎の室温比較
鶏舎 1月 2月 3月
最高 9.00±0.45 8.14±0.74 8.61±0.70
最低 4.74±0.61 3.64±1.07 3.94±0.58
最高 5.13±0.50 5.00±0.99 6.87±0.49
最低 -6.06±1.15 -4.10±1.47 2.58±0.50
最高 3.87 3.14 1.74
最低 11.80 7.74 1.36
鶏舎 4月 5月 6月
最高 12.27±1.31 16.84±4.32 18.90±0.71
最低 6.70±0.88 10.19±0.75 12.81±0.71
最高 14.67±1.37 18.11±0.91 21.00±0.84
最低 5.86±1.99 11.00±1.03 11.70±2.09
最高 -7.40 -1.97NS -2.10
最低 0.84NS -0.81NS 1.10NS

 (イ) 産卵成績
 寒鶏舎では厳寒期の寒怜の影響で当然減産が予想されるところであるが、第2表のごとく暖鶏舎との差異は認められなかった。また5つの品種間にも同様な傾向がみられた。
 第2表  産卵成績(1ヵ月1羽産卵ヶ数)
  1月 2 3 4 5 6 7 8 9
暖鶏舎 20.56ヶ 19.60 18.78 20.52 23.44 20.80 20.60 20.05 19.92
寒鶏舎 19.86 18.00 19.64 21.46 22.42 18.96 19.34 20.32 19.10

 (ロ) 飼料の要求率と摂取量
 飼料摂取量を産卵重量で除した割合、即ち飼料要求率は第3表の通り、厳寒期の暖鶏舎の飼料要求率は2.7であるのに反し、寒鶏舎の平均が3.5であった。このことは第4表のごとく寒鶏舎では体温維持に多くのカロリーが必要となり1羽日量で10~20瓦多く摂取した結果によるためである。また夏期においては寒鶏舎はトタンぶき天井無しのため日中の室温が暖鶏舎にくらべ極度に高くなり、飼料要求率は暖鶏舎3.09、寒鶏舎2.88と逆な傾向をしめした。このことは暑さのため寒鶏舎の鶏群が食欲減退に陥った結果である。
 第3表  月別飼料要求率
  1月 2 3 4 5 6 7 8 9
暖鶏舎 2.69 2.71 3.26 3.21 2.77 3.09 3.09 3.06 3.28
寒鶏舎 3.95 3.07 3.20 2.55 2.61 2.88 2.88 2.95 2.94

 第4表  月別飼料摂取量(1羽日量)  (単位㎏)
  1月 2 3 4 5 6 7 8 9
暖鶏舎 101.9 106.9 110.4 121.0 120.9 121.0 119.4 112.8 115.4
寒鶏舎 126.8 119.9 122.5 110.9 110.1 114.0 100.8 104.4 117.8

 (ハ) 健康状態及び体重
 両鶏舎極めて良好であったが、寒怜舎では室温度が極端に下った場合(-5℃)は活気がなく、時には鶏冠に凍傷を生ずるものが認められた。試験期間中の斃死淘汰率は暖鶏舎は11%、寒鶏舎は21%で、年間15%~20%斃廃率(人為的淘汰を除く)が一般の基準成績とすれば、寒鶏舎の損耗率はやや高い。
4. 要約
 供試鶏5種類、269羽を室温の異なった寒、暖2つの鶏舎に収容し、夫々ケージ飼育を行い、両者の成績を比較してみた。産卵成績は冬期間両鶏舎間に著しい温度差(第1表)を生じたので、当然格差があるものと予想したが、結果は予期に反して差異が認められなかった。しかし、夏期にいたって防暑構造のない寒鶏舎が減卵の傾向をしめした。
 飼料要求率は第3表、第4表に見るごとく、寒鶏舎の方が厳寒期において飼料摂取量が10~20%多かったため、暖鶏舎2.7にたいして寒鶏舎は3.5であった。また健康状態は寒鶏舎においてやや見劣りしたが、体重は差異がなかった。以上の結果から厳寒期の月平均最低気温-5℃位までなら保温飼料の10~20瓦増飼いで産卵率を下げないで維持し得ることが判明した。