【指導参考事項】
その3 特に群飼ケージにおける飼育密度について
道立滝川畜産試験場

1. はじめに
 現在単飼ケージが全般的に普及しているが、将来鶏群の能力や健康度合が次第に整一してくれば個体選抜の必要度が少なくなるから、単飼ケージに移行するものと考えられる。群飼ケージで問題となるのは前述のごとく、鶏群の素質の均一性や、飼育密度である。ここでは飼育密度をいろいろな段階に別けた場合の、産卵率そのほかにおよぼす影響を調査してみた。
2. 試験方法
 昭和37年1月から9月の9ヵ月間、次表のごとく、飼育密度を5段階にわけ群飼ケージで飼育した。
  飼育密度
10羽 15羽 20羽 25羽 30羽
飼育方式 群飼ケージ
白レグ若め
す10羽
群飼ケージ
白レグ若め
す15羽
群飼ケージ
白レグ若め
す20羽
群飼ケージ
白レグ若め
す25羽
群飼ケージ
白レグ若め
す30羽
飼料 市販完配 飽食
鶏舎 断熱鶏舎(室温第3表断熱鶏舎に同じ)
ケージの規格 1ヶの大きさ1m×2m 高さ60㎝のもの

3. 試験成績
 (ア) 産卵成績、飼育密度をかえた場合の産卵率は第1表のごとく各群とも65%前後で比較的良好な成績をしめし、飼育密度の高くなるにつれて、減卵の傾向が認められなかった。また同一鶏舎における単飼ケージと比較してみたところ、群飼ケージは第2表のごとく10%の減卵を来たした。
 第1表  群飼ケージにおける飼育密度別産卵率
月別 10羽 15羽 20羽 25羽 30羽 平均
1月 76.3 73.0 65.7 72.2 69.8 61.2
2月 67.0 63.1 74.1 71.6 71.8 61.0
3月 61.3 51.1 61.7 41.0 53.3 54.9
4月 56.0 62.2 61.5 62.7 66.0 60.2
5月 84.3 76.2 74.8 70.6 73.9 76.0
6月 63.6 67.6 60.2 64.7 56.3 60.2
7月 62.0 59.3 63.7 66.3 58.1 60.2
8月 58.7 55.5 57.9 50.7 53.2 55.2
平均 66.2 60.4 64.9 63.2 62.8  

 第2表  群飼ケージと単飼ケージの産卵率の比較
  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
群飼ケージ 61.2 61.0 54.9 60.2 76.0 60.2 60.2 55.2 -
単飼ケージ 66.3 72.2 64.5 80.0 79.9 71.3 69.0 69.1 61.0
-5.1 -11.2 -9.6 -19.8 -3.9 -11.1 -8.8 -13.9  

 (イ) 飼料要求率と摂取量
 飼料要求率は第3表のとおり、10羽群が全期を通じ2.85で最低で、25羽群が3.25の最高であった。
 第3表  群飼ケージにおける飼料要求率と摂取量
  10羽 15 20 25 30 平均
飼料要求率 2.85 3.18 2.93 3.25 3.12 3.07
飼料摂取量 91.7瓦 99.6 100.8 109.7 - -

 (ウ) 体重及卵重
 試験終了時の体重測定結果は第4表の通り各群間に有意差が認められなかった。また卵重においても同様な傾向が認められた。
 第4表 群飼ケージにおける体重と卵重
  10羽 15 20 25 30
卵重 52.3瓦 50.5 53.3 52.2 52.8
体重 1,645瓦 1,582 1,757 1,704 1,670

 (エ) 健康状態
 群飼ケージに特異な事故は認められなかったが、飼育密度別の損耗率は第5表のごとく飼育密度の多い方に高くなる傾向が認められた。またこれを単飼ケージにくらべるとやや高率のごとく思われる。
 第5表  群飼ケージにおける斃死、淘汰率
  10羽 15 20 25 30
斃死淘汰数 3 3 2 8 11
斃死淘汰率 30% 20% 10% 31% 37%

4. 要約
 群飼ケージにおいて飼育密度が高くなれば、個体間の競合等によりある程度の障害が予想せられるが、この試験結果では供試鶏の損耗率以外は、飼育密度が多くなってもそのような傾向が認められなかった。これは供試鶏の育成が良好で健全な鶏を供試鶏に揃え得たためであろう。
 農家の不揃な鶏の場合では密度を高めれば当然、減卵その他の支障が増加して来るこれは確である。