【指導参考事項】
重デスクハローに関する試験
北海道農業試験場農業物理部

 草地簡易造成に利用するとともに酸性矯正用石灰の充分な攪入を図る目的をもって牽引抵抗、土壌の物理的な変化、石灰の攪入ならびに能率について試験を行った。抜根後の未墾地において重量4屯程度にして3回掛けを行えば攪耕深度約15㎝を期待でき、笹の根も切断でき、また砕土態もおおむねよく、ただちに牧草の播種に適すると認めた。
 また、従来不満足であった石灰の攪入は深く耕起した土壌のほとんど全層に略均一に混入し得る性態を持ち実用に適することを確認した。
1. 供試機
 形式 タンデム型油圧昇降式デスクハロー
 全長 4,770㎜
 全巾 4,460㎜
 全高 1,350㎜
 耕深 230㎜
 重量 2,500㎏
 円板 カツトウエイ型、直径710㎜(28吋)32枚
 ガング角 油圧調整式 0~16°
 なおトラクターは小松D60レーキドーザ(12tons・108PS)を使用した。
2. 試験地の概要
 ⅰ) 試験地 紋別郡興部町 北興地区開拓地
 ⅱ) 地形、3~13度の波状性段丘地
 ⅲ) 土性、表面には径3~6㎜の礫が多く、5~15㎝大の礫を混在する埴壌土であり、代表的土層断面および物理性は図-1および図-2に示すとおりである。なお表層は2㎝凍結していた。

3. 牽引抵抗
 牽引抵抗を調査した圃場はレーキドーザにより抜根作業を終えた個所で6°~6.5°の傾斜地である。未墾地(抜根したのみ)およびブラツシユブレイカーにて平均23㎝耕起した後地においてそれぞれ3回掛けを行った。トラクターの速度はおおむね3速で行ったが一部登り坂ではエンスト状態になり速に切換えた。(試験番号10.11.)なお荷重として重デスクハローの各ガングに250㎏づつの土ノウを積載した。また試験時のガンク角は14度であった。
4. 土壌の物理的な変化
 ⅰ) 重デスクハロー施行による土層深度別三相容積変化
 未墾地および耕起後地を同一方向に回デスキングした後の土の三相容積の変化を図-3に示す。膨土の割合を施行前後の土の密度より求めた結果、未墾地ではみかけの耕深17.5㎝、正味耕深8.5㎝、ブラツシユブレイカーによる耕起後地ではみかけの耕深22.5㎝、正味耕深11㎝であった。すなわち約2倍の膨土を示した。
 ⅱ) 重デスクハロー施行による砕土および植物根の切断状況
 砕土状況を調べるために、施行直後0.5㎡の攪耕された土壌を採取し、節別後重量比を求めた。その結果を図-4に示す。土の表面2㎝位は凍結してあり、また同一方向に施行したが、凍結していない状態で交又してデスキングすればさらに砕土されよう。
 植物根の切断状況については、レーキドーザにて抜根したため笹の根等も相当減少しているようであったが、切断された笹の根は長いもので33㎝、短いもので6㎝位で大部分は径5㎜程度のものが14㎝位に切断され、笹の地上部は25~6㎝で径5㎜程度で約10㎝のものが最も多い。また樹木の根は長いもので6㎝位、大部分は径1㎝で10㎝位の長さに切断されていた。根の量は0.5㎡当り、乾燥前重量で笹の根が260g、笹の地上部90g、樹木の根は210g程度であった。

               図-2  A層深度別の3相容積割合

      図-2  試験地土壌の物理性

 表1 重デスクハローの牽引抵抗 
試験
番号
作業条件 進行
方向
作業速度
(m/sec)
トラクター
滑り率
(%)
耕深
(㎝)
牽引抵抗
(ton)
同左
平均値
(ton)
所要馬力
(ps)
1 未墾地 - - - 0.43 0.56 -
2 無負荷 1.41 - - 0.64 12.0
3 未墾地 1.38 2.5 10 2.08 2.12 38.3
4 1回掛 1.26 3.2 2.20 37.0
5 未墾地 1.24 3.3 13-15 1.90 2.15 31.4
6 2回掛 1.32 0.8 2.40 42.2
7 未墾地 1.40 0.3 15-20 1.80 2.20 33.6
8 3回掛 1.42 - 2.40 45.5
9 耕起後地 1.33 0.3 15-16 3.00 3.20 53.2
10 1回掛 1.00 3.6 3.40 45.3
11 耕起後地 0.97 5.2 20 3.20 3.30 41.4
12 2回掛 1.25 10.9 3.40 56.8
13 耕起後地 - - 23 3.80 - -
  3回掛              

図-3  重デスクハロー施行による土層深度別の三相容積割合の変化

5. 石灰の混入状況
 重粘性土壌地帯の草地化は少なくとも0.3~0.5t/10aの炭酸石灰の施用が必要である。石灰の攪混状況を調べるためブラツシユブレイカーにて耕巾65㎝、耕深20~25㎝に反転耕起し、1回デスキングして地表面を平にした後、6t/10aの炭酸石灰を撒布し、さらにデスキング1回(石灰撒布前を合せて2回がけ)と2回(同3回がけ)とについて観察したのが図5である。(断面に透明ビニールを当て、スケッチし、また北農式酸度検定液を大判濾紙に吸着させ乾燥しこれを攪耕層の断面に当て蒸留水を吹きつけ反応を調べ。)
 これによれば炭酸石灰撒布後1回のデスキングでは炭酸石灰は比較的大きい土塊の周囲に多く、混入する深さも浅いが、さらにデスキングを1回加えると混入の深さも増し、前者より均一に混入されていた。
 炭酸石灰の混入も砕土と同一方向でなく、直角の方向にもデスキングすれば好結果が期待できよう。
A 耕起後 デスク2回(耕起→デスク→石灰撒→布デスク)
 (6t/10a)

B 耕起後 デスク3回(耕起→デスク→石灰撒布→デスク)
 (6t/10a)

6. 能率
 20m×100mの圃場において重デスクハロー2回掛を行い、その所要時間を求めた。トラクターの速度は登り2速、降り3速で行った。なお重デスクハローには1,270㎏の荷重を積載した。
 所要時間 32分15秒
したがって1回掛の場合1ha当り1時間21分となる。