【指導参考事項】
フレイル型フオーレージハーベスタ利用による乾草調製に関する試験
北海道農業試験場農業物理部

 フレイル型フオーレージハーベスタにより牧草の刈取を行う場合、刃の引き裂きあるいは引きちぎり作用により、飼料に著しい裂傷を与えるため、これを牧草の刈取とヘイコンデシヨニングの両作用をかねた収穫法の1つとして乾草調製に利用することが考えられる。
 本試験は、この収穫法に関する予備試験として、行ったもので、まだ、作業体系および機械体系(特に豆科牧草の圃場損失)経済性等、いろいろの問題を残しているが、フオーレージハーベスタ利用による刈取は乾燥速度を著しく早め得る特性を有し、この特性を生かし得れば、乾草調製の1つの方法として価値があることを認めた。
試験成績(昭和37年度)
 (1) 供試作業機の主要諸元および構造概要
  フオーレージハーベスタ
  全長
(m)
全高
(m)
全巾
(m)
刈巾
(m)
ロータ径
(㎜)
ロータ
回転数
(rpm)
SA 2.34 2.29 1.70 0.75 500 1,000
JA 2.86 3.20 2.43 1.51 620 1,350

  ワツフラー
全長
(m)
全高
(m)
全巾
(m)
作業巾
(m)
ロータ
ドラム径
(㎜)
ロータ
回転数
(rpm)
3.06 1.21 1.75 1.58 900 240

  サイドレーキ(フインガーホイール型)
全長
(m)
全高
(m)
全巾
(m)
フインガ
ホイール径
(m)
同枚数
5.50 1.21 1.97 1.21 6

 (2) 圃場の状況
 試験は、昭和37年9月11日~9月22日の間に、札幌市月寒の北農試畜産部圃場で行った。圃場は若干の凹凸はあるが、比較的平坦で風通しもよかった。植生は、反当収量1.5トン程度の赤クロバーが若干混じったオーチヤード2番牧草で、草丈は約70㎝~100㎝程度であった。

 (3) 調査方法
 試験番号No1、No.2の試験では、SA型を使用し、刈取と同時に、第1図のごとき吹きだしを通して後方に放擲して行き、半日に1回程度の割合でワツフラによる反転を行い、乾燥が終了した後サイドレーキで集草し、普通のメデイアムデンシテイヘイベーラで拾上結束を行った。No.3ではJAを使用し同様に結束収納を行った。含水率は、地乾列約50m長さの各区内の数ヶ所より、試料を取り細断して混ぜ合わせ、ケット赤外線水分計で測定した。ザイドレーキ(フインガーホイール型)による集草時の損失は、レーキ通過後、作業巾2m×5mの調査区5区を設け、各区より人手により地面に残っていた細断牧草を拾い取り反当収量から計算した。ベーラによる拾上げ損失は、ウインドローの長さ5mの区を5つ設け、ベーラ通過後、同様に人手により拾上げて計算した。これらは両方共No.2試験で行った。No.3では、圃場損失は、一見あまり差がないようであったので、各損失測定を省略し、ヘーベーラを使用した後の圃場において、任意に10m×10m区を5ヶ設け同様に測定した。フオーレージハーベスタによる拾上損失はベーラの場合と同様である。なお、ベールの長さは、約45㎝程度にし、ワツフラーはフオーレージハーベスタ区は全て、ドアを全閉の状態で行った。細断長さの調査は、刈取直後の飼料を約1㎏をとり、各長さの区分に分け、乾燥後重量を測定し計算した。なお作業速度はSA0.62m/s、JA;1.12m/s、ワツフラー、サイドレーキ;1.62m/s
 (4) 試験結果
 第1表  作業順序並含水率推移
 No.1
試験
番号
9月11日 9月12日
10時 12時 14時
(%)
14時30分 16時
(%)
10時 14時
(%)
14時30分 17時30分
(%)
1-M-1 モーア
(73.0%)
  62.0 無処理 53.0 無処理 44.5 無処理 42.0
1-M-2 モーア
(73.0%)
  62.0 ワツフラ 50.0 ワツフラ 38.0 ワツフラ 34.0
1-F-1   ハーベスタ
(73.0%)
55.0 ワツフラ 41.0 ワツフラ 19.5 ワツフラ 15.0

 No.2
試験
番号
9月12日 9月13日
10時 11時30分 14時 17時30分
(%)
9時30分 16時45分
(%)
2-M-1 モーア
(73.0%)
  無処理 52.0 無処理 46.1
2-M-2 モーア
(73.0%)
  ワツフラ 49.0 ワツフラ 40.1
2-F-1   ハーベスタ
(73.0%)
無処理 37.0 無処理 28.0
2-F-2   ハーベスタ
(73.0%)
ワツフラ 31.5 ワツフラ 19.0

 No.3
試験
番号
9月21日 9月22日
10時 11時30分 14時 14時
30分
(%)
14時40分 9時
40分
(%)
10時 14時
30分
(%)
3-M-1 モーア
(72.0%)
  60.5 無処理 49.4 無処理 40.5
3-F-1   ハーベスタ
(72.0%) 
無処理 34.0 サイドレーキ 26.0 サイドレーキ 21.0
3-F-2    ハーベスタ
(72.0%)
無処理 34.0 ワツフラー 22.0 ワツフラー 18.0
3-F-3    ハーベスタ
(72.0%)
刈巾5フイート分
ウインドロー(巾50㎝)
35.0 サイドレーキ 30.0 サイドレーキ 19.0
3-F-4   ハーベスタ
(72.0%)
刈巾5フイート分
ウインドロー(巾50㎝)
35.0 ワツフラー 30.0 ワツフラー 18.0
3-F-5   ハーベスタ
(72.0%)
刈巾10フイート分
ウインドロー(巾80㎝)
45.7 サイドレーキ 41.5 サイドレーキ 29.0
3-F-6   ハーベスタ
(72.0%)
刈巾10フイート分
ウインドロー(巾80㎝)
50.0 ワツフラー 38.0 ワツフラー 26.0
3-F-7   ハーベスタ
(72.0%)
刈巾15フイート分
ウインドロー(巾100㎝)
55.0 サイドレーキ 44.0 サイドレーキ 31.5
3-F-8   ハーベスタ
(72.0%)
刈巾15フイート分
ウインドロー(巾100㎝)
55.0 ワツフラー 43.0 ワツフラー 27.0

 第2表  飼料価
  一般成分(%) 可消化成分(%)
水分 蛋白質 脂肪 NFE 繊維 灰分 DCP TDN
原料草 無水物 - 12.9 4.6 46.3 25.3 10.9 8.6 66.5
原物 80.1 2.6 0.9 9.2 5.0 2.2 1.7 13.2
No.1乾草 無水物 - 11.0 4.6 42.3 31.7 10.4 6.9 51.0
原物 16.8 9.1 3.8 35.2 26.4 8.7 5.7 42.4
No.2乾草 無水物 - 13.2 4.1 41.1 32.9 8.7 8.9 58.3
原物 16.9 11.1 3.4 33.6 27.7 7.3 7.5 49.0

 No.1乾草; 1-M-2の乾草(9月13日夜~14日霜雨、18日収納)
 No.2乾草; 1-F-1の乾草(9月12日収納)

 第3表  圃場損失
 サイドレーキ集草損失
調査区 サイドレーキ
集草損失
(%)
No.1 6.7
No.2 10.1
No.3 1.1
No.4 15.8
No.5 3.0
平均 7.4
※サイドレーキ前進速度1.63m/s

 圃場全損失
調査区 圃場全損失
(%)
No.11 3.0
No.12 7.5
No.13 10.3
No.14 8.4
No.15 18.2
平均 9.5

 ベーラ拾上損失
調査区 ベーラ拾上損失
(%)
No.6 1.3
No.7 1.7
No.8 3.1
No.9 8.1
No.10 2.7
平均 3.4
※ベーラ前進速度0.92m/s

 ハーベスタ拾上損失
調査区 ウインドローの大きさ 供試機 拾上
損失
(%)
No.16 刈巾5フイート刈枚 JA 8.4
No.17 刈巾15フイート(巾85㎝) JA 6.3
No.18 刈巾5フイート(巾50㎝) SA 10.9
※ハーベスタ前進速度0.62m/s

 (5) 試験成績の摘要
  ⅰ) フレイル型フオーレージハーベスタにより刈取を行い、大きなウインドローにしないものは、モーアで刈取ったものに比して、乾燥速度は著しく、大体1日半で20%以下に達した。
  ⅱ) ハーベスタで刈取を行ったものの内、刈取直後ウインドローにしたものは、ウインドローの大きさが増大するにつれて、内部の乾燥速度が低下し、乾燥むらが大になる。
  ⅲ) 圃場損失は、集草の際のサイドレーキ損失が最も大きく、また、場所(地面の凹凸、地乾列の状態等)による差が大であった。(従来のサイドレーキはモーアで刈取った牧草用のため、フインガーホイールが充分に下に下がらなかったことも1因である。)
  ⅳ) ベーラによる拾上げ搬送に際しては、ピツクアツプ、オーガ装置で、一般の長稈乾草の場合に比して、若干円滑を欠く場合がみられ、またピツクアツプドラム内のすき間を通って、細い乾草が地面に落ちるなどの現象がみられたが、拾上損失は、予想以上に、比較的少なかった。また結束損失は僅少であった。(地面が平坦であったLとも1因)
  ⅴ) ハーベスタによる拾上損失は、供試機の構造、ロータ回転速度、前進速度等にもよるが、可成大であった。(供試機の構造上、特に回転を上げれなかった。また刈取部の構造にも問題があると思われる)
  ⅵ) 飼料価については、試料採取量(約2㎏)が充分でなかったため、参考価に過ぎないが、ハーベスタによる乾草は、刈取2日目に収納出来たため、降雨にも合わず、緑度も大で、分析値では、モーアによる乾草に比して、かなり高い値を示した。
  ⅶ) 乾草調製をフレイル型フオーレージハーベスタによって行う場合には、いろいろ問題はあるが、特に新たに集草、反転機の改良または考案の必要を認めた。