【指導参考事項】
てん菜用機械に関する試験  (1) 被覆種子用てん菜施肥播種機
北海道立農業試験場十勝支場

1. 試験目的
 てん菜の被覆種子は間引作業軽減に役立つので、その普及が望まれるが、現在のところ砕粒種子を心としているため、発芽率がわるい。しかるに播種直後に鎮圧をおこなった場合、その発芽率が向上することが明らかとなった。今回播種された被覆種子の直上を局部的に鎮圧する方式を採用した播種機が出現したので、その試験を実施した。
2. 試験方法
 異なった圃場条件下において肥料、種子の土中における相対的位置を測定し、作業精度を検定した。
 1) 供試圃場面積 50a
 2) 試験調査区 3m×5m
 3) 試験区
  イ) 平坦区
  ロ) 波状区 A 進行方向に直角交叉
  ハ) 波状区 B 進行方向に平向
 4) 測定法
 供試機の作業せる前後の土壌表面形状、播種された種子の位置、肥料の位置、種子肥料の水平面隔、播種間隔を測定して、覆土量、種子相互間隔、種子肥料の間隔を出し、平均値と変異係数より、機能を判定した。
3. 供試機
 畜力用2畦、トラクター用4畦の総合播種機で、施肥播種機構はそのままであるが、播種用溝切装置および鎮圧輪に改良が施されている。
 すなわち、てん菜種子を巾狭く、しかも比較的浅く点状播し、さらに播種された被覆種子の直上を局部点に鎮圧するために、特殊な鎮圧車輪を有する。
 台糖製羽衣種子用施肥播種機の播種機構の側面図
 A:播種溝を作る機構
 B:種子落下筒
 C:種子の深さを規正する定規車
 D:種子を土中に圧入する車輪
 E:覆土用のゴム板
 S:種子

  肥料と種子の位置および種子圧入輪の作用模式図

4. 試験条件
 1) トラクター用4畦の場合
  a) 試験期日 昭和37年11月18日
  b) 試験場所 伊達郡稀府篠原義弘農場
  c) 圃場条件 有珠系火山灰砂壌土にして平坦、プラウ耕後ロータリーハロー仕上げ、土壌水分33%
 2) 畜力用2畦の場合
  a) 試験期日 昭和37年12月4日
  b) 試験場所 道立農試十勝支場
  c) 圃場条件 火山灰砂壌土にして平坦、ブラウ耕後ロータリーハロー仕上げ 土壌水分36.5%
 供試肥料はビート配合1号、種子は台糖製羽衣種子
5. 試験結果
 トラクター用4畦については、平坦地および波状地にて実施した。(試験番号1、2、3)波状の形態は進行方向に対し直角交叉と平行とあるが、いずれも振巾1.5m、高さ15㎝波形を人工的に造った。
 畜力用2畦の場合は(試験番号4)平坦地のみで実施した。
 試験の結果は、数次にわたる予備作業の後、各部位を調節して作業し得られたものである。
 1) 播種間隔
 点条播された種子相互の間隔は、平均で5.2~4.3㎝の間をしめし、偏差はトラクター用がやや大であるが、畜力用は概ね良好であり、実用上欠株を生ずることがないものとみとめられた。
 2) 種子鎮圧の程度
 点条播された被覆種子は、鎮圧輪の中央にある巾の狭く直径の大きな局部鎮圧輪によって、完全に鎮圧されている。ただし、土壌水分が過多で、局部鎮圧輪に土壌が附着する場合は、被覆種子が車輪に附着して回転するおそれがあるので注意を要する。一般には差支えないものと思われる。鎮圧部分の土壌硬度は山中氏土壌硬度計で11㎜~15㎜で種子の発芽、水分の吸収には適当と考えられた。
 3) 覆土量
 トラクター用4畦にあっては、各畦間の覆土量の偏差に相当の広さがあったが、畜力用2畦では、概ね良好と考えられる。ビートの覆土は、ごく浅くする必要があるので平均値に対する偏差が大きく出る。ただし、在来方式による膨軟覆土と異なり、種子の下層が鎮圧されており、表層が膨軟なのであるから、偏差の大なる割には、発芽不均一となる割合は少ないものと考えられる。ちなみに、種子が鎮圧されているが覆土が充分でなく、露出している場合でも、種子の下半分が土中に埋れ、水分の吸収ができるので、発芽した例もみられた。
 4) 種子と肥料の関係位置
 この場合も、畜力用2畦がトラクター用4畦にすぐれており理想的な関係位置が得られているが、トラクター用も実用上支障ないものと考えられる。これは肥料用溝切機が比較的深く作用し、それに対する種子用溝切機が地表面に対しごく浅の追随して作用しているためである。
6. 総括
 畜力用2畦およびトラクター用4畦について作業精度試験を実施した結果、前者は実用の段階に到達しているものと考えられ、後者はさらに改良の余地があるものとみとめる。
 畜力用2畦を使用するに際しては、歩様の広きに過ぎる耕馬を使用すると、踏み跡に鎮圧輪がはまりこんで、作業機全体が波を打って前進することがあるから、歩様の狭い耕馬に適している。また、耕馬の速度は1.0m/sec以下で作業させるようにすることが好ましい。速きに失すると、安定性を欠くおそれがある。
 鎮圧車輪後部に附属させてある均し板については、その高低調節を充分にすること。
 また、本畜力用機は2畦であり、真直に、しかも隣の畦から離れすぎ、あるいは近よりすぎないように作業すること。しからざる場合はカルチベーター作業を困難にするので注意を要する。