【指導参考事項】

収穫機に関する試験 (1)馬鈴薯収穫機
北海道立農業試験場十勝支場

Ⅰ 試験目的
 馬鈴薯収穫機が外国より導入され、又、国内でも製造を開始したが、実際に使用してみて、多くの問題を発見されてきた。なかでも、如何に作業能率を向上せしめるかが、大きい問題点である。この解決を進め、機械利用をからんとす。
Ⅱ 試験方法
 すでに導入されたハーベスターを使用して、機械上改造を要する点を発見し、これを改造し、再度実験し、能率の向上をはかる。調査をするより改造を行なう事が主体となろうが調査項目は次の通りである。
 1. 作業能率、係数
 2. 収穫損失
 3. 収穫機特性
Ⅲ 試験成績
 1. マツセイフアーガソン
 711型 ポテトハーベスターに関する改造試験
  ア 試験条件
     試験ほ場1 試験ほ場2
1.試験日時 昭和37年9月17日 昭和37年9月25日
2.試験場所 芽室町 芽室町
3.供試機 MF・711・35 PS トラクター用 MF 711 35PS トラクター用
4.試験ほ場      
土質 火山性じよう土 火山性じよう土
水分 31% 34%
硬度 18.4 山中式(cm) 畦間12.5 塊茎下18.1 山中式(cm)
雑草量 250kg/10アール 最大400kg 最小100kg 300kg/10アール
種類 ハコベ、ナギナタ、アカザ、タデ ツユクサ/ビエーレツドトツプ
茎葉 完全枯渇 100kg/10a 完全枯渇
収量 23.1 ton/ha 31.6 ton/ha
品種 農林1号 農林1号

  イ 供試機とその改造点
   1. 改造の必要性
 本機による馬齢しよ収穫行程は、デイスク刃により掘取を行い、エレベータードラムで、選別テーブル上に馬齢しよを運搬し、選別人により馬齢しよのみが送出テーブル上によりわけられ、それを袋詰めにするのである。しかし、土じょうの湿潤な地帯、又は雑草、青茎の多い地帯での堀取収穫作業に於いては、選別テーブル上に土じょうの莢雑物のあがりが多く、その量はしばしば馬齢しょの量よりも多い場合が発現する。ためにテーブル上より馬齢しょを取出すのに多くの労働を要し、人手で選別するのに限界があるから、作業能率を著しく低下せしめる要因となつていた。そこで土砂の分離を良好にするため改良をはかる必要がある。

第1図 フアーガソン(711)ポテトハーベスター略図
     ←馬齢しょの移動方向
 改造点は、略図中、点線で示した通り、A・B・Cの3ヵ所である。
番号 名称 仕様
1 堀取デスク 直径760mm

2 回転ホーク   
3 回転ホーク、クリーナー   
4 エレベータードラム   
5 選別テーブル   
6 送出テーブル   
7 スクレーパー     
8 ダンパー     
9 袋詰装置     
10 機体運搬指示車 6.50-16
11 機体調節油圧装置     
12 ミツシヨン     
13 変速装置     
14 索引方向調節装置     
エンジン回転数   1,100r・p・m
PTO回転数      440r・p・m
作業速度        0.5m/sec
回転ホーク回転数  62r・p・m
エレベータドラム回転数  165r・p・m
選別テーブル          7r・p・m
(註)?Dは改造後、土砂受テーブルとなる。

   2.改造点
   (A) エレベータードラム:エレベータードラムの外周側はスラツト状で側面はゴム製カンバスより成つているが、このゴムカンバスをスラツト状にし、回転ホークよりの放擲物を受け、土砂を多少とも除去するようにした。
   (B) 土砂分離テーブルの装着:スラツト状とし、回転フォークの如く製作した。
   (C) イモ受カゴの装着:土砂受テーブルのスクレーパーのヵ所にイモ受カゴを取り付け、土砂受テーブルに乗った馬齢しょをそこで集めるようにした。
   A 作業能率試験
 作業能率は第1表の如くなつた。そこで前年度の改造前の能率と比較した。
 作業補助人数は、改造前では5人以上必要で、作業速度も0.5m/sec 程度であったが、改良後、本機を使用したところ作業補助人数は4名で足り、作業速度は1.0m/secくらいで作業が可能となった。作業速度を1.0m/sec以上とすれば、袋詰めに1名では多忙過ぎ、2名必要となる。枕地は、9m~10m必要で廻行には平均1分弱要する。手入の時間とは、エレベータードラム、その他に雑草茎、芋茎等のてんらくしたものを除去する作業である。この手入の時間は、改造後では1/3程に減少した。これは主としてエレベータードラムの外周側のスラツト状アミの目がつまらなくなったことに基因する。作業能率は、50~100%向上せしめ得た。作業効率は、改造前の方が若干高いが、これは実能率が低いためで、大略75%程度と考えてよい。労働量は、ヘクタール当にして17時間以上の減少、即ち改造前に比較して40%以上の軽減をみた。
第1表
   作業補助
人員
作業速度
(m/sec)
作業巾
(m)
ロスタイム(hr/ha) 作業能率
(ha/hr)
作業効率
(%)
労働評価
廻行 手入 所要労働時間
(hr/ha)
収穫量
(ton/hr)
改造前 機上 5人 0.55 0.7 1.4 0.8 0.11 80 45.4 0.5
改造後 機上 4人 0.75 0.7 1.4 0.3 0.14 76 28.6 0.8
比較増減 機上 1人 +0.2 - - -0.5 +0.03 - -16.8 +0.3

   B 作業精度試験
    1. 収穫損失
     埋没いも(kg/ha) こぼれいも(kg/ha) 合計
重量
(kg)
収量に対
する比較
(%)
平均
1ヶ重量
(g)
重量
(g)
収量に対
する比率
(%)
平均
1ヶ重量
(g)
重量
(g)
収量に対
する比率
(%)
改良後 270 1.2 27 225 0.9 75 495 2.1
改良前 485 2.0

    2.損傷
  項目
試験区別    
ヘクタール当収量
(ton)
損傷いも重
(kg)
収量に対する比率
(%)
改造前 24 168 0.7
改造後 試験ほ1. 23 383 1.6
試験ほ2. 31 63 0.2
 収穫損失及び損傷は、大略同程度で、これは仕事初めの開講時、又は廻行後畦に入り始め畦方向に作業機があわない場合、多く発現する。

    3.土砂の分離状態
  デイスクシヨベルによる
すくい上量(%)
回転フオークに
よる分離量(%)
エレベータードラム
による分離量(%)
土砂受テーブル?Dに
上つた量(%)
改造前 100 62.8 35.4 1.8
改造後 100 75.6 20.6 3.8
 (註)作業速度は改造前 0.55m/sec 改造後は 0.75m/sec
 改造前、後の各個所の土砂の分離状態を比較すると、土砂受けテーブル上の土砂量が半減したことがわかつた。
  
    4.収穫物の土砂異物混入量
 収穫袋内の土砂量の混入は、改造前、雑草の多いほ場に於いて25%以上を示した場合もあった。改造後は、混入物の量が少なくなっているが、雑草量の多い第1区は、収量が多いが、雑草量の少ない第2区の方が、混入物が少ない。従って畑には、雑草が少ない方が好結果を生ずる。
 又、土砂受テーブル⑤の上には、馬齢しょがヘクタール当り140kg程度乗る。200m畦では、ゆきに約2kg程度であるから、イモ受カゴはあまり大きなものは必要としないが、土砂の落下孔であるため、スラフト状の目の働きを十分にしておいた方がよい。

収穫袋(カマス)内容
試験区   ヘクタール当収量
(ton)
土砂混入量収量に
対する比率(%)
異物混入量収量に
対する比率(%)
合計比率
(%)
改良後 1区 23 3.4 0.3 3.7
2区 31 0.8 0.1 0.9
改良前 34 8.7 2.4 11.1

土砂受テーブル(イモ受カゴ内イモ量)
試験区 収量
(ton/ha)
土砂量
(ton/ha)
イモ重
(kg/ha)
収量に対する
イモ比率(%)
第1区 23 16 140 0.6

    5.利用経費の比較
   機械利用
時間/ha
機械利用経費 円/時間 機械利用
経費 円/ha
労働費
円/ha
合計
経費 円/ha 
トラクター 作業機 小計
機械改造前 (5人)9.1 590 370 960 8,700 3,640 12,340
機械改造後 (4人)7.1 590 370 960 6800 2,910 9,710
慣行(15人) 4,000 156時×80円
=12,500
16,500
(註)算定基礎トラクター新調価115万、ハーベスター110万、固定費はこの20%とし、トラクター利用時間1,000/年間ハーベスター600時間/年間とし、運転費用を360円/時間とし、補助労働者の賃金は80円/時とした。

 慣行区に比較して、機械利用区は、利用経費が少なくてすむが、改造により能率の増加と作業人員の軽減で、20%程度利用経費を減少せしめ得た。なお慣行の機械利用はスピンナー利用である。

   稼働日数 時間 面積(ha) 移動時間
9月 日間 199.30 22.50 5.15
10月 29日間 264.15 25.90 11.10
11月 日間 92.50 9.70 3.40
66日間 556.35 58.1 20.05
(註)昭和36年度、農協有MF711型ポテトハーベスター利用実績(中札内)