【指導参考事項】

収穫機に関する試験 (2) コンバイン
北海道立農業試験場十勝支場

Ⅰ 試験目的
 今後収穫作業の機械化を進展してゆく際には、コンバインの作業の利用方式を確立することが重要課題となる。このためコンバインの作業能率諸係数及び、精度を研究しコンバイン利用に資せんとする。

Ⅱ 試験方法  
 試験測定は、実作業中に行い
 1. 試験区
  試験区は、1区1ヘクタール程度とし、東中伏古機械化実験集落を中心に行う。
 2. 調査項目
  作業精度は次に示す通り調査する。
  イ 収穫損失(重量比)
    ヘツドロス(刈取損失)
    シリンダーロス(未脱)、ラツクロス(ささり):3番口2×1mの枚で受けて測定する
    シューロス(とび):2番口受箱を2番口につけて測定する
  ロ 収穫物損傷(重量比)
    外部損傷(くだけ)、内部損傷(不発芽):1番口
  (注)本試は、1番口 くだけのみをみた。一方、脱穀部性能に影響を及ぼす要因をあげれば次の通りである。
   イ 脱穀部の構造
   ロ 扱胴の回転速度
   ハ 扱胴と受カゴ(コンケープ)の間隙
   ニ 作物の種類
   ホ 作物の含有水分
   ヘ 作物の供給量
   ト 風量調節、穀物用篩(シューシーブ)交換
 これ等の調節、変化により、収穫損失、損傷を測定する。
 作業能率試験については、適正な、作業速度予備及び巾(供給量)に於いて、作業の各係数を求め、しかる後作業経費を慣行作業と比較する。

Ⅲ 供試機の構造と諸元
 Inter D8-61 コンバインは、刈取巾1.9mで刈取られた作物は、回転集送機(フイーターオーガー)によって0.7m巾の送入通路に集め送られる。それが2本胴構成のフイータービーで扱胴(シリンダー)にたたきあげられる。扱かれた穀粒は、コンケープ(受カゴ)からグーンパンに落ちる。グレーンパンは揺動し穀粒は、わら茎篩(チヤクシーブ)から穀粒篩を通り、1番口用の送搬オーガーコンベアによって、袋に納められる、わら茎、穀粒篩の通過の際、風選されるが飛散した粒は、仕切板で受止められ、2番口用オーガーコンベアで集められ、再びシリンダーへ戻される。一方、コンケープより下方に落ちなかったわら茎と穀粒は、ストローラツクに送られ、ラツクは揺動、傾斜しているため穀粒は、グレンパンに落下し、わら茎は、機外に出される。刈取部のプラツトホームは、手初油圧を作動して上下できる。搭載エンジンは、ガソリン、27.5馬力で、車速は前進3段で0.6~1.6m/sec範囲で後進が1段ある。
 1. 略図 名称

インターD8-61 自走式コンバイン略図
   1. デバイター
   2. リール
   3. カツターバー
   4. フイダーオーガー(かも込み)
   5. フイーダービーター
   6. シリンダー
   7. コンケープ(受カゴ)
   8. 駆動輪
   9. フアン
  10. 風向調節板
  11. チヤクシープ(わら篩)
  12. グレンシーブ
  13. 穀物用スクリウーコンベア(1番)
  14. くず用コクリウコンベア(2番)
  15. ソール調節ハンドル
  16. 操行ハンドル
  17. プラツトホーム昇降装置
  18. エンジン(空冷、ガソリン 28rs)
  19. シート
  20. くず用エレベーター(2番もどり)
  21. シリンダービーター
  22. 精粒用スクリウコンベア
  23. チエツクカーテン
  24. ストローラツク
  25. 舵輪
  26. 雑草種子コンベア

 2. 諸元
  作業巾  1,950mm
  全長    6,700mm
  全巾    3,370mm
  全高    2,330mm
  全重    2,450kg
  扱胴 (型)  ラスプバータイプ
      (経)  460mm
      (巾)  702mm

調節部名 扱胴回転数 コンケーブ間隙 フアンの開き方 風向調節
作物名
小麦 1,109 YPm 前 6mm 後4mm 3/4 上より 2~1
大麦 1,245 前 6mm 後3mm 3/4 上より 2~1
燕麦  996 前 8mm 後6mm 1/2(半分) 上より 3
豆類  766~687 前 12mm 後10mm 1(全開) 上より 2

Ⅳ 試験成績
 A 作業精度試験
  各作物別の作業精度は次の通りである。

 (a) 小麦の収穫とコンバインの性能 (第1表)
試験番号 作業
速度
(m/sec)
作業巾
(m)
供給量
(m/sec)
刈取高
(cm)
1番
損傷粒
ロ(%)
混入口
2番口
損失(%)
3番口
損失(%)
コンケーブ前後
(mm)
シリン
ダー
(rpm)
備考
K-11 0.8 1.65 1.28 40.2 0.0 3.4 0.06 0.73 6.4 1100 子実水分
    18.4%
稈 〃 
    42.6%収量
 172kg/10a   
K-12 0.8 1.65 1.28 18.2 0 2.2 0.04 0.79 6.4 1100
K-18 0.8 1.65 1.28 39.3 0 2.3 0.05 0.93 12.10 1100
K-19 0.8 1.65 1.28 13.0 0 1.9 0.07 2.17 12.10 1100
G-1 0.4 22 0.88 20.0 0 0.11 0.08 6.4 1050 子実水分
    21.6%
収量
 37.8kg/10a
G-2 0.8 1.65 1.28 20.2 0 0.71 0.30 6.4 1050

 (イ) コンケーブの間隙を大に過ぎると、3番口損失が増加する。
 (ロ) 供給量を増せば一般的に損失は増加する。従ってしようするに当っては倒伏株のない場合は、高刈りをした方が、損失が少なくでき、場合によつては、G1、G2の比較におけるように、刈巾を少なく、速度を進め、供給量を増して作業率を高めることも考える必要がある。なお、1番口の混入物が多いのは、風量を弱め2番口よりの損失を防止したのと又、実干しの際多少稈が混入していた方が良いだろうという意図があるためである。

 (b) 水稲の収穫とコンバインの性能(第2表)
試験番号 作業
速度
(m/sec)
スリツプ
(%)
供給量
(m/sec)
刈取高
(cm)
1番口
脱穂(%)
2番口
損失(%)
3番口
損失(%)
コンケーブ前後
(mm)
シリン
ダー
(rpm)
備考
O-11 0.41 5.8 0.74 19.0 6.3 0.36 2.94 6.4 1050 10月10日刈取
茎水分61%
    (水口)
10月19日刈取
茎水分47%
O-13 0.71 5.8 0.85 19.0 22.9 0.15 3.37 4.3 1050
O-21 0.72 4.0 0.80 19.0 26.0 0.14 1.11 4.3 1050
O-22 0.72 4.0 1.29 19.0 27.2 0.13 0.81 4.3 1050

 水稲収穫にあたつては、地盤沈下と、畦越が問題となるが、本試験は、水はけのよい場所で行なつたなお畦越は、若干の修理で元通りになる程度の支障をきたすだけである。又、走行スリツプは、5~6%であつた。試験の結果は、次の通り要約されよう。
 (イ) 脱穀しずらい作物に於いては、供給量を少なくし、刈取時期をできるだけ延期した方がよい。
 (ロ) 3番口損失((主としてシリンダー損失)が、麦類に比較して多く、コンケープ間隙を小とすれば、この傾向は少なくなるが、1第口の脱粒率が多くなる。しかしくだけは、認められなかつた。
 (ハ) 扱胴がラスプバータイプであつたため、脱フ率が高いものと思われる。

 (c) エン麦の収穫とコンバイン性能(第3表)
試験番号 作業
速度
(m)
供給量
(㎡/sec)
コンケ
ーブ前後(m)
シリン
ダー
(rpm)
1番口
混入物
(%)
2番口
損失
(%)
3番口
損失
(%)
風量 穀物篩
mmf
ピクア
ツプロス(%)
備考
K-31 0.7 1.9 75 1210 0.6 1.10 0.11 14 3.8 刈取1週間後
ピクアツプタツチメントで収穫稈水分 49%
粒水分 34%
刈取はウインドアロー
K-32 0.7 1.9 75 1210 1.1 0.80 0.08 14 1.1
K-33 0.7 1.9 75 1210 0.5 12 0.5

  麦類のなかでもエン麦は、稈がしつこくて、刈取、脱穀が容易でない。又粒が不整で選別も比較的うまくゆかず、2番のもどりが、多過ぎて、コンベアが詰る場合が時々ある。刈取の時期を遅らすと穂首が折れて、収量損失が多くなり、倒伏の危険度も増すため、直接刈取を行なわず、ウインドローアーを使う場合は、密植栽培の方がよい。何如なら、畦間が大なる場合は、畦間の凹みに穂が沈んでピクアツプ損失をきたし、又、天候不順の際は、穂発芽を生ずる。密植の場合でもウインドローアーを装着せるトラクターのタイヤ跡に丁度、並置される場合が生ずるから、並置の位置を考えて作業する。なおウインドローアーを使用した際、ピクアツプロスは、2%程度生ずる。
 第3表は、ピクアツプ作業中、フアンの風量及び、穀物篩を変えて、収穫ロスを比較した。
 (イ) ( )風量の強弱は、2番口のロスに影響を与えるが、1番口の混入物が1番影響される。
 (ロ) 穀物篩の目の大きさを変えても(2?of)あまり影響を示さなかった。

 (d) ヒエの収穫とコンバイン性能(第4表)
試験番号 作業
速度
(m/sec)
刈取巾
(m)
供給量
(㎡/sec)
シリン
ダー
コンケ
ーブ
刈残し
(%)
2番口
損失
(%)
3番口
損失
(%)
雑草口
(%)
備考
T-1 0.5 1.8 0.9 1200 6.4 0.7 1.3 0.4 59.0 茎水分 63%
種子  24%
草丈  1.45m
収量  250kg
     10a 
T-2 0.6 1.8 10. 1200 6.4 0.2 1.3 0.7 79.0

 ヒエの場合は、たまたま供合量が多くなりオーバーロードになり勝であつたが、小粒の割には、良好な結果を得た。2番口の損失は、1~2%はどうしてもできる。
 (イ) 小粒の場合は、雑草口より出が、著しく多くなり、袋詰めの際は注意を要する。

 B 作業能率試験
 供試コンバインは2名の補助作業員が袋詰のため機上に乗る、従って運転手と3名で、作業を行う。作業速度は、あまり速すぎると穀粒の選別、精度、収穫ロスが多くなる故、0.8m/sec程度が適当である。
 本機は、自走式であるため、廻地のための枕地を、自身で作ることができる。10アール程度の小区かくでも利用が可能であり、作業効率は相当高く90%近い。作業労働評価に於いて面積当投下労働時間は、1/18で、労働量の減少率は大きい。(第5表参照)

 C 作業経費
 ha当り費用においてコンバイン利用は、慣行法に比較して1/2でよい。但しコンバインの利用が100時間程度であれば費用が同じになる。

 第5表 作業能率試験
   補助
作業人
1
作業
速度
(m/sec)
作業中
(m)
ロスタイム
作業能率
(ha/hr)
作業効率
(%)
労働
(hr/ha)
評価
(tan/hr)
備考
コンバイン作業 2 0.8 1.6.5 0.28 0.42 88 72 0.42 補助作業人は袋詰
慣行作業 刈取 1
脱穀 3



0.01
0.1

100
30
0.02 結束、未乾燥脱穀作業
 (注) 本試験は、小麦で収量ton/haの1haの圃場に於いて行った結果である。作業条件としては、良い方である。作業巾は0.55m畦3本刈取で、1.65mとなり、ロスタイムは、殆んど廻行時間である。収穫袋の供給、搬出は別である。
慣行作業は畑で脱穀機をセットして行った場合である。

第6表 作業経費
   新調
価格
年間
固定費
運定費/時 年間
利用
時間
機械労賃
/
補助労賃
/
会計費用
/
ha当費用 備考
燃潤 労賃
コンバイン 2,500,000 500,000 360 230 300 1,670 180 2,440 (5,820) 補助2人賃金
単価  80円
脱納機
エンジン
刈取
90,000
60,000
18,000
12,000

60

300
300
60
40
3×80
=240
400
4,000 2月間タイプ
3~5馬力
ガソリンエンジン
(100×80)=8,000
(12,000)
カマカリ取
 (注)年間固定費は、新調価の20%とした。年間利用時間は、圃場区劃0.5~1.0ヘクタールとし、現在でも十分利用消化できるものとし300時間とした。