【指導参考事項】

油加工紙用「セルローズ糊」の粘度について

北海道農業試験場作物部第2研究室

Ⅰ 試験目的
 育苗資材の油加工紙と障子枠の接着には従来主として「グルー糊」(尿素とカゼインが主成分)が使用されてきた。しかし「グルー糊」は、早春の低温下では糊の樹脂化が完全でなく、接着時ないしは接着後の条件が悪い場合には安定した接着強度が発揮できないことがあり、また耐水性も弱い。一方「グルー糊」にかわる接着剤としては、昭和32粘度から「セルローズ糊」の検討を行ってきたが、油加工紙の接着剤として強度な接着力をもち、使用法(障子貼り)も簡単なものなので、昭和35粘度から「グルー糊」利用者の一部に「セルローズ糊」が使用されるようになった。
 最近「セルローズ糊」の道内に対する供給見通しが立ったことおよび、「グルー糊」との価格差も縮小されたことなどを考慮して、昭和38年度以降は全面的に「セルローズ糊」に切り換えることが適切であると判断されるにいたったので「セルローズ糊」の特性について明らかにする必要性に迫られ、そのうち特に変化の多い粘度について調査し、使用上の参考に供したい。

Ⅱ 試験方法
1. 粘度調査の材料、2メーカーに以来して、1,000~4,000cpsの粘度の糊を調製して供試した。
2. 試験条件  10月27日~31日、気温15℃
3. 粘度の測定  B型回転式粘度計
4. 粘験の測定温度  5℃、10、15、20、25、30の6段階

Ⅲ 試験結果ならびに考察
(1)粘度について
 粘度の側手の結果は第1図に示すごとく、各粘度の材料共いずれも温度によって直線的な変化を示す。すなわち、温度が低い場合には粘度が高く、温度が上昇するにしたがって粘度は低くなる。しかもこの変化の傾向は粘度の低い材料においては少なく、粘度の高い材料は大きい。
 糊の粘度が高すぎる場合は、糊づけにムラができやすく、油加工紙を貼ったときに接着面の糊が十分に展開しにくくまた糊付けカップを押す力を多く要する。
 一方粘度が低すぎる場合は、糊付けカップからの押出しはらくになるが、押出しと同時に糊山が流れて空気にふれる部分ば多くなり、溶剤の揮散を促して表面の被膜形成を早めるため、油加工紙を貼ったときの初期粘着も劣り、接着が不完全になりやすい。

 第1図 温度差による粘度の変化(B型回転粘度計で測定)

 以上の点から、最適の粘度は、2,000cpsにあるとかんがえられるが、またこの糊の使用時期の温度は早春であり10~20℃の範囲内とみれば、温度と粘度の関係からその許容範囲はこれに対して±500cps程度を認めるべきであろう。あうなわち、10℃では2,500cpsをこえず、20℃では1,500cps以下にならぬことが必要であろう。
 しかしこの種接着剤の粘度は、従来の諸研究の結果から、製造(調製)後も硝化綿の種類および溶剤の組成によって粘度の経時変化におよばす影響がことなることが明らかにされているので(第2図参照)、実際的にこの種接着剤の粘度を考える場合は相当安定したとみられる使用時のものでなければならない。

(2)接着力について
 接着強度は糊の粘度や使用時の温度条件により直接影響をうけることはなく、この試験を通じて行った接着試験の結果では、いづれも強度な(油加工紙が完全に接着してむしれる状態)接着力を示した。基本的な接着力は糊の組成となる硝化綿溶剤の種類などによる所が大きいので、製品としてはこれらが適正に配合されていて、接着力の完全なものとして供給されることが重要である。
 以上のことから、油加工紙接着剤としての接着力が完全であることを前提として「セルローズ糊」の適正粘度は、10~20℃の気温で2,000cps±500cpsと考えるのが妥当であろう。

第2図 硝化綿の違いによる粘度の経日変化  

    

(附)セルローズ系糊の特性とその規準および使用上の注意
 1. 主剤として硝化綿を用い、これを適当な配合の有機溶剤で溶解したものである。(硝化綿、溶剤は共に燃焼しやすい物質である。) したがって濡れたものや水気を含んだものには接着しない。
 2. この接着剤は固形の硝化綿を揮発性の溶剤で溶かしたものなので、糊づけしてから長時間放置すると溶剤が揮散して糊の表面から漸時固定して接着性が失われる。糊づけの時間は障子一枚当たり2分間程度で終わるが、接着時のいろいろの条件を考慮して5分程度の可使時間(木枠に糊づけを始めてから油紙を貼り終わるまでの許容時間)が必要である。
 3. 「セルローズ糊」の外見はビニール用の接着剤に類似しているが、ビニールやポリエチレンフィルムには接着性がない。
 4. 接着強度は、油加工紙と木枠が完全に接着して、強制的に剥離しても接着部の油紙がむしれる程の強度であることが望ましい。

北見地方における苗代管理の改善について

北海道立農業試験場北見支場

苗代管理法に関する試験
ア. 目的  苗代床内温の調節により適確、かつ安易に苗代管理を行い労力の節減を計る
イ. 試験方法  試験年次  昭和35~37年
 試験年次別試験区分
No. 苗代様式 床内温の調節 障子の種類 昭和35年 36年 37年 備考
1 冷床   障子の開閉 ビニール        

* 一定温度以上になった時  ベルの警報

2  〃     〃 油紙   
3  〃 **横框の開閉 ビニール      
4  〃 **  〃 油紙      
5  〃 **横框の自動開閉 ビニール      
6 電熱温床  障子の開閉 油紙   
7  〃    〃 ビニール      
8  〃 **横框の開閉 ビニール
9  〃 ***横框の自動開閉 ビニール   

 備考 (A.B.Cで説明)
  *ベルの警報装置  **横框の開閉装置  ***苗代の自動調節装置

  供試品種 昭和35、36年は農林20号、福雪
         昭和37年は農林20号、ハヤミノリ
  供試面積 昭和35年36年25.9㎡  昭和37年は26.4㎡ 各1区制
  耕種梗概 播種期 4月25日
         床内温の調節はベルの警報により試験区別に示す方法により実施した、その他の管理は標準耕種法による。
 A.ベルの警報装置
   昭和35、36年 サーモスタット(暖房用を改良)(300円 湿度に弱い)
   昭和37年 センスビイ(2,000円 耐湿性)
   

第1図 温度調節警報装置回路結線図

 B.横框の開閉装置

   第2図 横框の開いた状態

   第3図 横框の開閉装置をした冷床の見取図

 C.苗代自動調節装置

   第4図 床内温自動換気制御結線図

   第5図 床内温自動換気機械構造動作図

   第6図 苗代期間における気象図

ウ. 試験経過の概要
 3ヵ年共に播種期は4月25日で苗代期間の天候は昭和35年が低めに36年は高めに37年はほぼ並に経過したが苗の生育は35年においてもほぼ順調であった。
 A)ベルの警報
  昭和35、36年はサーモスタット改良型、37年はセンスビーにより、前半は30℃、後半は25~20℃で鈴鳴するようにした。
 B)横框の開閉
  第2・3図に示すように横框を半分の巾(15cm)にして蝶番で組合せ外開きとした。(下側半分は地中に埋め、上側は外に開くようにした)べるの鈴鳴後人力で開き床内温の低下と共に再び人力で閉めた。なお横框の上下を蝶番で連結する場合、下図のように斜めにつなぎ閉じている時の外気の通風を極力さけるようにした。

 C)苗代の自動調節
  横框の開閉は人力の場合とは反対に蝶番を上につけ外開きになるようにした。開閉の動力としては1/2PPのモーターを3段に原則(20回/分)し操作ロットにより横框板を左右交互に開閉させた。
 昭和35、36年はベルの鈴鳴後モーターに通電し、床内温低下後は電気を切りモーターを止めた。昭和37年はセンスビーより電磁開閉器が動きモーターに自動的に通電される。モーターが回転すると操作ロットにより横框が連続開閉し床内温を調節する。つぎに床内温が低下すると全く同様な方法でセンスビーにより電磁開閉器に働きモーターが自動的に停止し横框が閉じるようにした。なお、温度の測定は点式抵抗温度計、自記地水温度計により測温した。

エ. 試験結果

 第1表 昭和35年旬別 床内温 
No. 区別 最高温(℃) 最低温(℃) 20℃以上継続時間
5月上旬 中旬 下旬
6 電熱温床 障子の開閉 油紙 30.8 27.5 26.0 5.5 8.6 6.8 5.6 5.0 3.6
8   〃 横框の開閉 ビニール 26.2 28.1 26.6 10.9 13.2 11.6 7.3 8.9 6.4
9   〃 横框の自動開閉   〃 26.5 26.2 26.1 12.1 12.5 11.1 9.4 7.1 6.1

 備考 No.6は標準区で障子の取りはづしをしている。
     5月下旬は21~26日の平均

 昭和35年 床内温の5月11日における変化図

   第7図 昭和35年5月11日床内気温

   第8図 昭和.37年5月8日の床内温の変化図

 第2表 昭和36年時期別地表温床内温
No. 区別 4月27日~5月6日の平均 5月7日~5月16日の平均
9時現在 最高 最低 9時現在 最高 最低
2 冷床 障子の開閉 油紙 地表 19.3 30.7 7.6 20.7 30.4 8.3
6 電熱温床   〃  〃  〃 23.2 32.0 11.5 19.8 25.7 7.7
8   〃 横框の開閉 ビニール  〃 23.4 29.3 12.9 18.9 25.1 11.1
9   〃 横框の自動開閉  〃  〃 24.4 31.7 12.5 20.3 26.7 10.3
6   〃 障子の開閉 油紙 床内温 23.7 32.1 8.3 21.3 28.0 7.8
8   〃 横框の開閉 ビニール  〃 23.9 34.1 9.5 21.7 30.0 7.5

 昭和35年 旬別の平均値は横框の開閉区と自動開閉区とでは差は少ないが障子の開閉区(標準)は油紙のため、また障子を取り外したときもあり、特に最低温が低かった、処理による床内温の調節は従来の障子の開閉(スカス)と変わりない効果がみられ第7区に示したとおり高温日においても30℃前後に調節することができた。
 昭和36年 自動開閉区は障子の開閉区(標準)より若干温度高くなるようであるが横框の開閉区(No.8)は若干低目であったが、いづれも標準と大差ない温度調節管理をすることができた。
 昭和37年 第8図の床内温の変化をみると従来の障子の開閉によるものと(No.1)横框の自動開閉(No.5)により調節するものとでは大差ない値を示した。また第9図の横框の開閉区の床内の位置、外、中内部の床内温はおとんど差がみられなかった。
 以上の結果よりみて従来の障子の管理方法に比べると横框の開閉の開閉区(自動開閉区は人力による開閉区と大差ない)は障子の取りはずし作業がないため全期を通じ高目に経過するが換気によって床内温を調節することは障子の開閉(スカス)と横框の開閉(自動を含む)とでは変わりない効果がみられた。

   第9図 昭和37年横框を自動換気した場合の床内温の変化

昭和35年 移植時における調査(5月29日)

 第4表
  農林20号
  試験区別 草丈 苗令 第1鞘高 根長 50本当生重 50本当乾物重
6 電熱温床 障子の開閉 油紙 15.2 3.9 3.8 4.4 11.9 2.4
8   〃 横框の開閉 ビニール 14.1 3.4 3.2 4.0 10.8 2.5
9   〃 横框の自動開閉  〃 14.9 3.6 3.1 3.9 12.0 2.5

  福雪
  試験区別 草丈 苗令 第1鞘高 根長 50本当生重 50本当乾物重
6 電熱温床 障子の開閉 油紙 14.0 3.4 3.4 2.6 7.9 2.0
8   〃 横框の開閉 ビニール 16.9 4.2 2.8 4.7 12.5 2.7
9   〃 横框の自動開閉  〃 16.5 3.9 3.3 3.8 11.2 2.6

昭和36年 移植時における調査(5月25日)

第5表
  農林20号
  試験区別 草丈 苗令 根長 根数 50本当生重 50本当乾物重
6 冷床 障子の開閉 油紙 13.7 3.4 8.9 11.4 2.0
8 電熱温床   〃  〃 14.7 3.4 6.9 5.5 16.0 3.2
9   〃 横框の開閉 ビニール 18.1 3.3 7.7 5.9 21.3 3.6

  福雪
  試験区別 草丈 苗令 根長 根数 50本当生重 50本当乾物重
6 電熱温床 障子の開閉 油紙 15.6 3.5 6.7 6.1 18.0 3.1
8   〃 横框の開閉 ビニール 21.8 3.5 6.2 6.3 26.6 4.3

昭和37年 移植時における調査

 第6表  
No. 試験区別  草丈 苗令 生重 乾重
N20 ハヤミノリ N20 ハヤミノリ N20 ハヤミノリ N20 ハヤミノリ
1 冷床 障子の開閉 ビニール 15.2 13.2 3.1 3.8 6.03 5.72 1.47 1.15
2  〃   〃 油紙 12.6 13.4 2.7 3.8 4.63 5.73 1.00 1.02
3  〃 横框の開閉 ビニール 11.3 14.3 3.1 4.0 4.83 6.85 1.08 1.33
4  〃   〃 油紙 10.9 11.9 2.9 4.0 4.15 5.34 0.90 1.10
5  〃 横框の自動開閉 ビニール 15.8 17.8 3.5 4.2 6.25 7.00 1.30 1.37
7 電熱温床 障子の開閉 ビニール 14.7 16.4 3.3 4.0 7.56 7.82 1.85 1.82
8  〃 横框の開閉 ビニール 19.1 21.6 3.8 4.2 8.53 9.73 1.68 1.80

昭和37年 床内位置による生育差の調査(ハヤミノリ)

 第7表
 No.  草丈 苗令
1 13.3 12.8 13.3 3.7 3.8 4.0
3 11.2 12.7 12.5 13.5 12.0 3.9 4.0 3.8 4.0 39.
5 15.7 16.8 18.1 19.3 17.3 4.0 4.3 4.2 3.9 4.4
  生重 乾重
1 6.09 6.01 6.70 1.13 1.12 1.40
3 5.45 6.20 6.46 6.90 6.09 1.10 1.23 1.29 1.41 1.21
6 6.30 7.35 7.21 8.76 7.00 1.82 1.36 1.40 1.53 1.32

備考

 昭和35年 横框の開閉(No.8)横框の自動開閉(No.9)は灌水時以外は障子を取らなかったのであるが移植時における苗の生育は障子の開閉(No.6)標準区と大差なく第1鞘高乾重においては若干標準区より勝れる傾向にあった。これは標準区の油紙障子に対しビニール障子であったため紫外光線等直慰光線を十分受けるため障子を除去しなくとも軟弱にならなかったためと思われる。
 昭和36年 横框の開閉(No.8)は障子の開閉(No.6標準)に比べ生育の進んだ大きな苗が得られた。これは障子を取りはずさなくともビニール障子のため充分な紫外光線を受け湿度も充分であったためと思われる。
 昭和37年 ビニール障子は油紙より、電熱温床は冷床より、また、横框の開閉区は障子の開閉区より、それぞれ苗は稍大きめであり、稍軟弱の傾向にあった。床内の位置により苗の生育は若干小出来のようであったが横框より10~15cm内部に入るとほとんど生育差は認められなかった。 併し一番外部の苗も移植に適するものであった。
 以上3ヵ年を通じて横框の開閉、あるいは横框を自動開閉する区は従来の管理法に比べ障子を取りはずさないため稍徒長軟弱の傾向の苗にはなるが移植には充分適する苗が得られる。

ベル鈴鳴装置の感度について
 サーモスタット(暖房器の改良)の感度はセンスビーより劣るが後者は、ほぼ適確に床内温を知ることができた。

センスビーによるベル警報時の温度 31℃ 31℃ 30℃ 32℃ 28℃ 31.8℃
同時刻 7:00 9:50 10:10 11:30 14:00 14:28
 横框の開閉  従来の障子の開閉に比べればきわめて簡単に横框の開閉によって床内温を調節できた。
 横框の自動開閉  センスビーに表示した温度どおりに自動的に横框を開閉した。

結論

 1. 苗代床内の換気機構については横框の開閉により、きわめて簡易に床内温を調節できる。
 2. 温度調節器(センスビー)によって安易適確に危険床内温度を知ることができ、それに基づいて苗代管理ができる。
 3. 横框の開閉による換気作業に要する労力はきわめて少ない(従来の障子にもるものに比べ1~2割)
 4. しかし横框の開閉のみでは健苗育成上換気が不十分なので、開閉する面積を広くすること。
 5. センスビー電磁開閉器モーター装置による操作ロットの組合せにより自動的に苗代の横框を開閉させ、床内温を調節できるが経済的には今後検討を要する。

ビニール畑苗代に関する試験

ア.目的 寒冷地帯における安易な苗代方法を確立する。
イ.試験方法

 昭和35年(参考)
No. 苗代種類 播種期 播種量
L/㎡
苗代の追肥時期量
5月10日 5月20日
1 冷水 4月25日 0.42      
2 ビニール枠冷床 4月16日 0.42      
3   〃 0.22      
4   〃 NP20   
5   〃    NP20
6   〃 N20 N20
7 電熱温床 4月12日 0.40      
8   〃 0.22      
9   〃 NP20   
10   〃    NP20
11   〃 N20 N20
 苗代の追肥時期量
   NP20 硫安、過石各20g/㎡
   N20  硫安20g/㎡
 苗代面積及び区制  3.3㎡  2区制
 本田   〃      6.6㎡  4区制
 供試品種        N20
 移植期         5月27日

 昭和36年(参考)
播種量

L/㎡

播種期 苗代種類 No. 播種法 苗代追肥
1 冷水 4月25日 0.38            
2 ビニール枠冷床 4月17日 0.22 N24
3 電熱温床 4月10日 0.16 N24
 供試品種 N20みまさり、新栄、移植期 5月25日
 本田一区面積および区制 10㎡  4区制

 昭和37年
No. 苗代種類 播種期
1 電熱温床 4月10日
2 ビニール枠冷床
3 電熱温床 4月17日
4 ビニール枠冷床
5 冷床
6 電熱温床 4月25日
7 ビニール枠冷床
8 冷床
9 ビニール枠冷床 5月2日
10 冷床
  播種量別  0.38リットル  0.28l/㎡
  二重被覆有無  有  無
  苗代面積および区別  6.6㎡一区制
  供試品種  No.20 ハヤミノリ

    第10図  固定被覆冷床の見取図

ウ.試験経過の概要
 昭和35~36年は健苗養成のためにビニール枠冷床を供試した。したがって35年はビニール枠冷床で健苗を得るために、播種量苗代の追肥時期について検討し、36年は最も有効に健苗を得られる様式についてビニール枠冷床が供試された。
 37年は播種時期毎に苗代の種類を比較し、さらに健苗を検討し、二重被覆の効果も合わせてみた。ビニール枠冷床の床内温の調節はフレームの片側を上げて(交互に上げる)換気するが、フレーム全体を除去して稲苗に直射光線を当てるような管理はしない。その他の耕種管理については北見支場の標準耕種法に基づいて施行した。
エ.試験結果
 ビニール枠冷床の床内温(地温)は冷床の床内温より高く電熱温床より低めに経過している。その床内温の変化傾向は冷床と類似しているが、電熱温床に比べると最高温は電熱温床に接近するが最低温はかなり低くなる。二重被覆の効果も認められ特に温度が低下した時に効果が大きい。

昭和35年試験結果

 第8表 苗代における調査
No. 区別 発芽期 5月26日の調査 (移植時)
苗代種類 播種期 播種量 苗代追肥 草丈 苗令 第1鞘高 根長 根数 茎数 根重 茎葉重
1 冷床 4月25日 0.40   5月7日
2 ビニール枠冷床 4月16日 0.40   4月25日 14.9 3.4 3.2 2.9 10 1 0.8 5.0
3   〃 0.22   13.7 3.4 3.5 2.9 10 2 1.1 5.0
4   〃 0.22    12.5 3.4 3.3 2.3 9 2 0.8 4.5
5   〃 0.22 N.P 15.4 3.4 3.8 3.4 11 2 1.2 5.4
6   〃 0.22 N.P 13.8 3.6 3.4 3.8 12 2 1.0 5.8
7 電熱温床 4月12日   N.P 4月18日 19.0 3.2 4.0 4.3 7 1 0.9 6.6
8   〃     20.8 3.4 3.8 5.0 9 1 0.8 4.7
9   〃   N.P 20.0 3.4 4.2 3.4 9 1 0.9 6.7
10   〃   N.P 17.3 3.6 3.4 6.0 8 1 0.9 6.3
11   〃   N.P 17.4 3.4 3.4 5.6 9 1 0.9 5.5

 第9表 生育及収量調査
No. 出穂期 成熟期 茎数の推移 10a当
玄米重量
同収量割合 千粒重 稔実歩合
7月12日 7月22日 成熟期
1 8月9日 9月29日 16 459.7 98 98 20.8 68.4
2 7日 28日 10.9 17.8 17 496.0 106 106 20.7 74.6
3 6日 28日 12.3 18.9 17 479.0 103 104 20.7 81.2
4 6日 27日 11.5 18.4 17 492.5 105 107 20.6 71.3
5 6日 27日 10.9 17.9 17 491.5 105 109 20.5 69.4
6 5日 28日 11.9 18.6 17 508.5 109 106 20.5 74.9
7 7日 28日 10.0 17.4 17 467.5 (100) (100) 20.6 77.7
8 7日 28日 10.8 17.0 16 459.9 98 (100) 20.7 72.5
9 7日 27日 9.6 16.3 15 460.8 99 (100) 20.7 82.7
10 8日 28日 9.5 16.6 16 451.3 97 (100) 21.0 68.9
11 7日 26日 12.1 18.4 17 480.3 103 (100) 20.6 71.3

昭和36年試験結果

 第10表 苗代における調査(移植時の苗の生育)
No. 苗代様式 品種名 草丈
(cm)
葉数
(枚)
分葉数
(本)
葉子の葉数
(枚)
根長
(cm)
根数
(本)
生重
(g)
乾重
(g)
乾重/生重比
(%)
1 冷床 4月25日

播種 0.38L撤

No.2 14.3 2.6 0 0 4.5 8 18.8 3.1 16.5
みまさり 16.2 3.0 0 0 5.5 6 19.8 3.2 16.2
新栄 12.3 2.9 0 0 4.6 5 15.7 2.9 18.5
2 電熱温床

4月10日 播種

0.16 条播

No.2 16.0 3.9 0 0 8.9 12 28.4 7.8 27.4
みまさり 17.3 4.1 1 1.0 8.6 11 38.1 9.1 23.9
新栄 16.2 4.6 0 0 7.9 11 39.2 8.8 22.5
3 ビニール枠冷床

4月17日 播種

0.23 条播

No.2 16.7 3.9 0.4 0.2 6.4 11 29.8 5.9 19.9
みまさり 20.2 4.0 0.3 0.1 9.5 9 33.4 5.9 17.4
新栄 15.9 4.6 0.3 0.3 8.2 12 30.1 4.9 16.3

(註) 生重乾重は苗100本当りを示す。

 第11表 茎数の推移
No. 品種名 6月20日 6月27日 6月30日 7月4日 7月10日 7月18日 8月2日
1 No.2 5本 11 13 13 21 16 15
みまさり 9 15 18 22 29 25 22
新栄 7 12 14 16 25 21 23
2 No.2 9 15 15 18 21 21 20
みまさり 15 24 22 27 28 27 26
新栄 18 18 16 21 21 20 19
3 No.2 19 24 21 19
みまさり 20 27 23 23
新栄 15 22 19 21

 第12表 生育調査並に生育収量調査
No. 品種名 発芽 出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
結実日数(日) 生育日数(日) 成熟期における 最終葉位 倒伏 倒熱病 a当
玄米重
同収量
比率
玄米千粒重 青米歩合 稔実歩合

(月日)
良整 草丈
(cm)
穂長
(cm)
茎数
(本)
穂数
(本)
1 No.2 4.30 良整 7.28 9.16 50 134 101 16.7 16 16 10.8 57.2 (100) 102 20.4 7.2 76.2
みまさり 4.30 8.1 9.19 45 137 84 15.6 22 21 12.0 55.3 97 99 22.8 6.2 82.4
新栄 5.1 8.3 9.24 52 142 95 14.9 18 18 13.5 57.4 100 98 21.8 7.2 81.2
2 No.2 4.14 7.21 9.10 50 153 91 16.0 16 16 10.1 55.9 98 (100) 20.7 5.6 76.5
みまさり 4.14 7.27 9.16 51 159 80 14.9 22 22 12.0 56.2 98 (100) 22.4 7.7 80.2
新栄 4.14 7.31 9.19 50 162 91 15.0 17 17 12.6 58.7 103 (100) 21.6 6.2 89.4
3 No.2 4.23 7.22 9.11 51 147 94 15.4 18 17 56.7 99 101 20.7 7.2 76.5
みまさり 4.23 7.28 9.16 50 152 83 15.1 22 22 56.2 98 100 22.6 6.6 83.3
新栄 4.23 8.2 9.20 49 156 93 15.1 18 18 57.2 101 98 21.5 8.0 93.3

昭和37年試験結果

 第13表
No 播種期   試験区別 発芽期(月日) 発芽歩合(%)
ビニール二重被覆 無被覆 ビニール
二重被覆
無被覆
条播 散播 条播 散播
1 4月11日 電熱温床 4.13 13 14 14 96 98
2 11日 ビニール枠冷床 4.15 15 17 17 98 97
3 17日 電熱温床 4.19 19 20 20 99 99
4 17日 ビニール枠冷床 4.21 21 22 22 96 99
5 17日 冷床 4.21 21 22 22 96 95
6 25日 電熱温床 4.28 28 28 28 98 99
7 25日 ビニール枠冷床 4.29 29 30 30 97 98
8 25日 冷床 4.29 29 30 30 98 97
9 5月2日 ビニール枠冷床 5.5 5 5 5 97 98
10 2日 冷床 5.5 5 5 5 95 99

第14表
No 播種期   試験区別 5月23日の草丈 同比率
ビニール二重被覆 無被覆 ビニール二重被覆 無被覆
条播 散播 条播 散播 条播 散播 条播 散播
1 4月11日 電熱温床 21.1 23.7 19.9 20.4 132 159 126 143
2 11日 ビニール枠冷床 16.0 14.9 15.7 14.3 100 100 100 100
3 17日 電熱温床 19.7 17.7 16.2 15.3 161 113 131 129
4 17日 ビニール枠冷床 13.8 17.2 13.1 12.0 113 110 92 102
5 17日 冷床 12.2 15.6 12.3 11.8 100 100 100 100
6 25日 電熱温床 15.8 15.5 14.4 17.1 156 142 145 183
7 25日 ビニール枠冷床 14.3 17.3 11.7 14.8 134 159 118 159
8 25日 冷床 10.7 10.9 9.9 9.3 100 100 100 100
9 5月2日 ビニール枠冷床 10.3 13.9 11.2 10.4 90 129 115 95
10 2日 冷床 11.4 10.8 9.7 10.9 100 100 100 100

第15表 5月23日苗令
No 播種期   試験区別 5月23日の草丈 同比率
ビニール二重被覆 無被覆 ビニール二重被覆 無被覆
条播 散播 条播 散播 条播 散播 条播 散播
1 4月11日 電熱温床 5.9 5.2 5.3 5.0 102 90 93 86
2 11日 ビニール枠冷床 5.8 5.8 5.7 5.8 100 100 100 100
3 17日 電熱温床 5.3 5.4 4.8 5.4 113 128 109 117
4 17日 ビニール枠冷床 5.2 5.1 5.0 5.4 111 121 114 117
5 17日 冷床 4.7 4.2 4.4 4.6 100 100 100 100
6 25日 電熱温床 4.6 4.0 4.0 4.0 128 117 114 108
7 25日 ビニール枠冷床 4.2 4.2 4.6 4.1 116 123 131 111
8 25日 冷床 3.6 3.4 3.5 3.7 100 100 100 100
9 5月2日 ビニール枠冷床 4.0 4.0 4.0 4.0 125 121 125 129
10 2日 冷床 3.2 3.3 3.2 3.1 100 100 100 100

第16表 5月23日根数
1 4月11日 電熱温床 22 17 19 14 116 85 105 74
2 11日 ビニール枠冷床 19 20 18 19 100 100 100 100
3 17日 電熱温床 19 23 19 19 146 177 136 150
4 17日 ビニール枠冷床 20 17 14 14 154 131 100 140
5 17日 冷床 13 13 14 10 100 100 100 100
6 25日 電熱温床 14 8 9 11 200 100 150 157
7 25日 ビニール枠冷床 13 11 15 13 186 138 250 186
8 25日 冷床 7 8 6 7 100 100 100 100
9 5月2日 ビニール枠冷床 9 9 10 9 112 129 143 100
10 2日 冷床 8 7 7 9 100 100 100 100

第17表 5月23日乾物重
1 4月11日 電熱温床 4.25 3.55 3.70 2.56 142 130 109 118
2 11日 ビニール枠冷床 2.98 2.73 2.20 2.17 100 100 100 100
3 17日 電熱温床 3.77 3.13 3.18 3.25 172 104 171 179
4 17日 ビニール枠冷床 2.34 2.26 1.90 2.30 173 118 102 127
5 17日 冷床 2.18 1.91 1.86 1.81 100 100 100 100
6 25日 電熱温床 2.15 1.70 1.76 1.85 215 175 207 181
7 25日 ビニール枠冷床 1.62 1.45 1.54 1.75 162 149 180 171
8 25日 冷床 1.00 0.97 0.85 1.02 100 100 100 100
9 5月2日 ビニール枠冷床 1.15 1.12 1.35 1.16 112 108 163 138
10 2日 冷床 1.02 1.03 0.80 0.84 100 100 100 100

昭和35年の苗の生育についてはビニール枠冷床と電熱温床苗とでは、苗令、第1鞘高、長さでは差は認められないが、草丈、根長、茎葉重は電熱温床勝れ、根数はビニール枠の方が多かった、本田においてはビニール枠冷床の初期茎数多く生育の進度も早かった。千粒重、稔実歩合は明瞭な差はみられなかったが、(電熱温床 若干勝れる傾向にあった)収量はわずかビニール枠冷床が勝れる傾向にあった。
 昭和36年の移植時におけるビニール枠冷床の草丈、茎数は、電熱温床の苗と大差ないが冷床苗より勝れ、乾物重は電熱温床より劣り冷床より勝れた。本田においては好天候に恵まれ、処理の影響(苗代の種類)はほとんど認められなかった。生育の進度ではビニール枠冷床は電熱苗とほぼ同出穂であったが冷床より早かった。また収量構成要素、決定要素、また、収量でも苗代間の差はみられなかった。
 昭和37年 ビニール枠冷床の発芽は電熱温床より2日程発芽に長く要し、冷床と同程度であった。ビニール、二重被覆すると1日程発芽が促進されるのでビニール枠冷床の二重被覆は電熱温床に近い発芽状態に近づく、各播種時期全般を通じ、草丈、根数、乾物重は電熱温床最も勝れ、次いでビニール枠冷床で冷床は最も劣った。苗令は電熱温床とビニール枠冷床との間では明瞭な差は認められなかった。
 以上の結果よりみて35.36年は同一栽培条件(同一播種期でない)ではなかったが三ヵ年を総括するとビニール冷床苗は、電熱温床苗より若干小出来のようであるが冷床苗より大苗である。また、ビニール枠冷床で簡易に健苗が得られそうであり、本田においても初期茎数の確保、生育の進度、決定要素の面でも(+)の効果がみられた。

  ビニール枠冷床の経済効果(昭和37年、北見支場で設置した時の実例)

 苗代の経済効果は第18、19、20表の各苗代の資材費について一覧表に示したが初年目においては固、最も安く約1/3の経費であり電に比べると1/3以下であった。2年目になると硬さは全面ビニールを新しく使用するため冷より若干経費は高くなる。併し前年使用したビニールは二重被覆用として使用できる。
 つぎに苗代別の作業の難易については、苗代の準備より播種までの作業、また播種後の管理の面で枠の覆い作業を除く外の作業面は全て、ビニール枠苗代は冷床または電熱温床より作業が安易で作業時間も少ないようであった。

第18表 ビニール枠冷床資材費(33平方m当)
品名 摘要 数量 単価 全額 2年目 備考
枠台 1.5寸×1.5寸×12尺

(1×1×12)

11本
(11)
110円
(66)
1,210
(660)
   細いものでさしつかえない。
止桟 6分×4分×6尺 22本 7 154      
周囲の杭 1寸×1寸×12尺 2本 60 120    1.5寸の長さのもの16本
鉄棒 2分丸のもの6尺 60本 30 1,800      
ビニールフィルム 1.9m巾0.05mmの厚さ 20m 53 1,060 1,060   
アサ糸    100m    100 100   
   100m    100 100   
8分の長さ 100本 0.1kg    10 10   
合計            4,554
(4,004)
1,270   
            34.2%       

第19表 冷床資材費
枠板 8分×10寸×12尺 5枚 450 2,250       横框
 〃 3 450 1,350       縦框
棟木 10×5.5×12 2.5 350 875      
10×4.5×12 2.5 250 625       上 
支柱 3.5寸×3.5寸×12尺 1本 670 670    長さ2尺のもの6本  
1.5寸×1.5寸×12尺 3本 110 330    横框の支え杭1.5尺の長さ
障子    20枚 240 4,800 480 2年目で約1割破損  
ビニール止桟 6分×4分×6尺 100本   7 700 70
ビニール 厚さ 0.5mm     20m   53 1,500 156
8分  400本
3寸  50本
   85 83 9
ゴム輪          100 50
合計          13,343 765
               100%   

第20表 電熱温床資材費
品名 摘要 数量 単価 全額 2年目 備考
フレーム式
(電熱温床設備費)
冷床と同じ        13,343        
熱線 ビニール鉄線 1.6mm 330m 7 (2,310)    ( )は15坪分

引込み用伝線 ビニール線 4mm 30m 131 (2,930)   
工事料金 トランス・引込線工料        (2,000) (2,000)
損料 変圧器開閉器       (190) (190)
スイッチ 60Aカバー附 2個      (760)
雑費            (2,000) (500)
タルキ 1寸×1寸×12尺 3   50 (150) (150)
L釘 熱線止   3   30 (90) (90)
電熱温床設備費合計 (15坪)    (10,370) (3,740)
  〃 (10坪)    6,914 2,494 10坪に換算
(電気料金)
基本料金  
1ヶ月契約   25KW   289 723 723   
電力量料金 夜間のみ30日間使用 900KW 450 4,050 4,050   
合計          25,030 7,267   
            188%     

電熱温床設備費ならびに電気料金は北海道電力会社調査による。

結論

 以上の結果よりみてビニール枠冷床は冷床または電熱温床に比べて
1. 床内温または地温は電熱温床より劣るが、冷床より若干勝れ、温度の経過は冷床に似る
2. 苗の生育は電熱温床より劣るが、冷床より若干勝れるようである。
3. 健苗が得られる。
4. 資材費は初年目においては、特に安価であり、2年以降においても冷床程度の経費である。
5. 苗代の準備作業あるいは苗代管理は極めて安易で特に換気が手軽にできる。

畑苗代におけるDNBPの除草効果について

北海道立農業試験場空知支場 岩崎徹夫

1. 目的
 新除草剤DNBPを畑苗代に使用した場合の除草効果及び水稲の発芽ならびに生育について検討する。

2. 試験方法
 イ  苗代様式  冷床苗代
 ロ  供試品種  シンセツ
 ハ  播種期   4月22日
 ニ  面積及区制  1区2㎡  2区制

3. 試験区別
番号 区別 処理時期 備考
1 無処理区   
2 DNBP 30g 4月23日 播種直後土壌処理
3  〃   50g    〃
4 CAT   4    〃        (比較)
5 DCPA  20 5月4日 生育期雑草処理(比較)

 註  撒布量はアール当り成分量
     撒布水量   〃   4L

4. 試験経過の概要
 播種は4月22日、播種直後処理は翌4月23日に行ったが、両日共好天候に恵まれたがDCPAの生育期処理は5月4日で当日は曇天でときどき小雨があり不順な天候であった。水稲の発芽ならびに稚苗の生育状況は当時の好天候に恵まれきわめて良好であり、また雑草の発生も草種及び量共にやや多く分布状況も比較的均一であった。

5. 試験成績

 第1表 雑草量の調査   (5月23日調査)
番号 区別 ヒエ アカザ
(g)
ナズナ
(g)
エノコログサ(g) タデ
(g)
ツユクサ
(g)
イヌホウズキ(g) その他
(g)
ヒエを除く合計
本数(本) 重量(g) 比率(%) 重量(g) 比率(%)
1 無処理区 60.5 17.46 100.0 7.28 7.55 4.90 6.63 0.30 1.88 2.07 30.61 100.0
2 DNBP 30g 61.0 10.72 61.4 0 1.78 3.20 0 1.33 3.56 1.17 11.04 36.1
3  〃   50g 20.0 3.35 19.2 0 0 0.80 0 5.68 2.08 0.06 8.62 28.2
4 CAT   4 36.5 4.38 25.1 5.43 0 1.66 0.66 3.20 2.53 0.92 14.40 47.0
5 DCPA  20 1.5 0.06 0.3 0 0 0.03 0 0.03 0.06 0.06 0.24 0.8

 撒布量による殺草効果は30g処理区が50g処理区に比べかなり劣りとくにヒエに対しては劣った。50g処理区についての草種別殺草効果について見ると、無処理区に比べヒエに対しては本数、重量共に約20%、アカザ、ナズナ、タデに対してはきわめて高く前記雑草は全く無かった。またエノコログサに阿智しても効果は高かったが、ツユクサ及びイヌホウズキに対しては効果は認められないが、ヒエ以外の全雑草重量では無処理区の約28%を示し30g処理区においても約36%で比較のCAT処理区の47%より共に効果は高い。しかし、DCPAの生育期処理に比べるといずれの処理区もすべての雑草に対して効果は劣った。

 第2表 水稲の発芽及び生育状況  (5月23日調査)
番号 区別 発芽歩合
(%)
草丈
(cm)
第一鞘高
(cm)
葉数
(枚)
茎数
(本)
1 無処理区 96.5 9.9 3.0 3.4 1.4
2 DNBP 30g 92.0 10.1 3.0 3.3 1.2
3  〃   50g 95.5 9.5 2.8 3.5 1.4
4 CAT  4 98.0 10.3 3.1 3.2 1.4
5 DCPA 20 94.0 10.6 3.2 3.4 1.3

 発芽の状況は各区共処理による影響はほとんど認められず調査結果による、発芽歩合も無処理区に比べ大差は無い。発芽後の生育状況についても草丈の伸長及び葉数、茎数の増加も無処理区と差は無く各薬剤共処理によっての水稲の発芽及生育に対する影響は無かった。

6. 結論
 畑苗代に対する除草剤としてDNBPを播種直後に土壌処理した場合の除草効果はかなり高く50g処理(アール当り成分量)では比較に供試したCATよりやや優るものと思われ、水稲の発芽及その後生育に対する影響もない物と思われる。しかし生育期処理で、比較に供試したDCPAの除草効果と比べるとその効果はかなり劣るものと思考される。